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エクストリームガールズ!!  作者: 井村六郎
春期始動編
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第一話 始業式!! 美人な先生がやってきた!!

わたくし井村六郎めが、初のギャグ小説に挑戦致します。ただしこの作品、かなりバイオレンス。過激でカオスです。注意はするつもりですが、グロ描写もあるかもしれません。


では、以上の点を踏まえた上で、どうぞ!

 ここは笑特小学校。ちょっと変わった名前の小学校なので、よく笑特小と呼ばれています。




 季節は春で今日は新学期。一年も二年も三年も四年も五年も六年も、みーんなウキウキの新学期。それなのに、おやおや? 六年一組の教室に、一人だけぼんやりしてる女の子がいますよ?




 この子の名前は高崎愛奈。一応、この物語の主人公。


「どうしたの愛奈? 顔が死んでるけど」


 今ひどいことを言って話し掛けたのは愛奈ちゃんの友達、松下勇子ちゃん。ゆうこじゃないよ?いさこって読むよ?


「なんだ、いさちんかぁ~」


「なんだって何よなんだって。で? どうしたの?」


「別にぃ~?ただ、もう六年生なんだと思うとさぁ~……」


「……それの何が問題なのよ?」


「だぁってぇ~、もう六年生だよ? 今年は小学生でいられる最後の年なんだよ? これが憂鬱にならずにいられますかっての」


 どうやら、もう来年の心配をしている様子。まぁ気持ちはわからないこともないんですけどね。


「進路の心配? あんたにしては真面目な事考えてんのね」


「あんたにしてはは余計だよ。いや、進路のこと考えてるわけでもないんだけどね?」


「じゃあなに?」


「……面白い事起きないかな~って」


「……ああ……」


 勇子ちゃんは、愛奈ちゃんが何を言おうとしてるかわかったようです。つまるところ、愛奈ちゃんは退屈してるんですね。六年生ですから、この学校とも今年でお別れなわけです。だから、六年生として相応しい、楽しい思い出が作りたい。そんな楽しい出来事が起きてほしい。そう言いたいわけです。


「なのになぁ~んにも起きやしない!! 退屈退屈退屈!! 退屈なことばっかり!!」


「まだ四月よ? そんなすぐ面白い事なんて起きるわけないじゃない」


「勇子の言う通り」


 今二人の会話に割り込んだのは、二人の友達の要友香ちゃんです。ロングの黒髪に眼鏡がチャームポイントですよ。え? 私は眼鏡っ娘が大好きですが、何か?


「今本読んでるのわからない? ちょっと静かにして」


 友香ちゃんは本が好きです。落ち着いて読みたいので、注意しました。


「友香は? 友香ともっと一緒にいればいいんじゃない? ほら、この子超能力者だし」


 勇子ちゃんは友香ちゃんのことを話しました。勇子ちゃんの言う通り、友香ちゃんは超能力者なのです。物心付いた時から既に使えたようで、両親はもちろん、クラスメイト達も全員そのことを知っていますよ。


「友香はダメダメ。だって友香ってネクラじゃん! それに念力しか使えない脳筋エスパーだし! そんなのと一緒にいたらこっちまでネクぼろはぁぁぁ!!!!」


 愛奈ちゃんは最後まで言う前に、後ろの壁に向かって吹き飛び、顔面を強打しました。


「こっちから願い下げ」


 友香ちゃんは本から一切視線をそらさず、べちゃりと床に落ちた愛奈ちゃんに言います。


「あんた……友香はその事気にしてるって知ってるでしょ……」


 勇子ちゃんは特に愛奈ちゃんを助けに行くとかせず、ただ呆れました。友香ちゃんは今無惨な姿になった愛奈ちゃんが言っていた通り、念力しか使えません。本人はその事をとても気にしていて、馬鹿にされたりネタにされたりすると、こんな感じで相手に念力で報復するんです。まぁ、主な被害者は愛奈ちゃんですけど、やる方が悪いんで自業自得ですね。


「ねぇ勇子」


「な、何?」


 相変わらず本を読みながら、友香ちゃんは勇子ちゃんに話し掛けます。勇子ちゃんは突然話し掛けられたからか、ちょっと驚いてますね。友香ちゃんは尋ねました。


「……さっき愛奈が言った通り、私は念力しか使えないけど、念力しか使えない超能力者は、果たして超能力者と言えるのかしら?」


「いや、常人には念力すら使えないから」


 十分超能力者だと思いますよ?


「そう」


 表情も声色も変わりませんが、どうやら機嫌を直してくれた様子。


「いつまでそうしてるつもり? そろそろ朝礼が始まるから、さっさと起きなさい」


 愛奈ちゃんに言う勇子ちゃん。ひどいですねぇ。


「……はい」


 起き上がって自分の席に戻った愛奈ちゃん。君は不死身ですか?





 ◇◇◇






(あー……)


 始業式が終わって席に戻った愛奈ちゃん、ボ~っとしてます。ボ~っとしながら、昨日寝る前に見たドラマのことを思い出してますね。六年生とはいえ愛奈ちゃんはまだ子供なので、テレビドラマの面白さなんてほとんどわかりません。ただ、大まかな内容くらいはわかります。よくある恋愛ドラマで、ちょうど主人公とヒロインが告白する回でした。結果はオーケー。二人は恋人同士になったというわけです。リア充爆発しろ。


(そういえば、恋をすると世界が変わるって、よく言うよね)


 愛奈ちゃん、何やら古臭い言葉を思い出してます。


(恋かぁ……)


 どうやら恋愛に興味がある様子。でも愛奈ちゃんはまだ六年生ですからね、早いと思いますよ?



 その時です。教室のドアがガラッと開いて、誰か入ってきました。大人の女の人です。上は白いブラウスを着て、下は太もも辺りまでの長さの黒いタイトスカート。そして、その人は名乗りました。


「今日から新しくこのクラスの担任になる、姫川浩美です。皆さん、よろしくお願いします。」


(へぇ、新しい先生かぁ……)


 勇子ちゃんは思いました。この時期に新しい先生が入ってくるのは、別に珍しい事ではありません。でも、ちょっとわくわくしますよね。


「では今から始業式が始まりますので、体育館に行きましょう。廊下に並んで下さい」


 六年一組の新しい担任の先生、姫川先生は少し話すと、始業式の為に生徒達の誘導を始めました。


「さて、じゃあ私も行きましょうか」


 席を立つ勇子ちゃん。と、勇子ちゃんは気付きます。愛奈ちゃんが自分の席に座ったまま、全然動こうとしません。


「何してんのよ愛奈? 早くしないと」


「いさちん」


 早く廊下に並ぶように勇子ちゃんが促すと、突然愛奈ちゃんが勇子ちゃんの言葉を遮りました。


「な、何……?」


 何だか声の感じが、さっきまでと違います。勇子ちゃんは思わず一歩引きました。

 愛奈ちゃんは構わずに続けます。


「恋をすると世界が変わるって、本当の事だったのね!!」


「……はあ?」


 何の事かわからない愛奈ちゃん。その答えは、今はまだ誰にもわかりませんでした。答えは今回の話の終盤でわかります。





 ◇◇◇





 早く答えが知りたい人がいると思われるので、始業式のシーンはカットです。ただ、一つだけお教えしておきましょう。

 愛奈ちゃんは始業式の最中、ずっと姫川先生を、うっとりした目で見ていました。校長先生のスピーチも完全に耳に入っておらず、ただただ姫川先生を見る事にだけ集中していました。



 始業式が終わり、学活の時間です。姫川先生がプリントを配って、軽く内容を語り、学校のこれからの行事については終わりました。


「明日から普通の授業ですが、私はこの学校に転任してきたばかりで、まだ皆さんの事を知りません。当然皆さんも、私の事をよく知らないと思います。なので、今からチャイムが鳴るまで、自己紹介タイムをします! まずは皆さんの名前を教えて下さい」


 笑顔で言う姫川先生。笑った顔がとても可愛らしく、まるで名前の通り、本当にお姫様みたいです。

 それはさておき、自己紹介タイムは定番ですよね。とても大切です。まずは名前の把握という事で、教室の前の入り口に近い人から、順番に名乗っていきます。

 全員の名前を聞き終わったところで、次は姫川先生の自己紹介です。本当は趣味や自己PRなども聞きたいところですが、このクラスの人数は四十人。残り時間も少ないので、姫川先生一人分の自己紹介で限界なのです。


「皆さんとは、これから一年間、ゆっくり時間を掛けて仲良くなっていきたいと思います。では、何か質問はありますか? 何でも聞いていいですよ」


「はい!!」


 姫川先生がそう言うと、愛奈ちゃんが目を光らせ、隣の勇子ちゃんがびっくりするくらいの勢いで手を挙げました。


「元気がいいですね! じゃあ高崎さん!」


「ノンノン。あたしの事は、愛奈って呼んで下さい。あたしも先生の事、浩美先生って呼びますから!」


「えっ!? あ、ああ、はい。じゃあ、愛奈さん」


 愛奈ちゃんの接し方に、浩美先生はちょっと驚いていますが、気を取り直して愛奈ちゃんを指名します。


「浩美先生は何歳ですか?」


 下の名前で呼んでもらった事に、にんまりと笑ってから、愛奈ちゃんは浩美先生に質問します。


「二十二歳です」


「……うん。やっぱり若いね……」


「?」


 愛奈ちゃんの呟きが少し気になりましたが、愛奈ちゃんの質問は終わりです。


「他に何か質問がある人はいますか?」


「はい!!」


「!?」


 また愛奈ちゃんが挙手しました。心なしか、先程よりも挙手の勢いと声の大きさが上がっているような気がします。今挙手しようとしていた子が驚いて手を下ろしました。


「ま、愛奈さん」


「浩美先生は、付き合ってる人はいますか?」


「えっ!? えーっと……」


 予想しなかった質問に、浩美先生はかなり戸惑っています。ですが、最初に何でも聞いていいと言っています。嘘つきな大人だと思われてはいけないと思ったので、正直に答える事にしました。


「い、いません。独身です」


「……望みあり、か……」


「?」


 また何か呟きました。浩美先生は戸惑いながら、ちらりと思わず時計を見ます。学活の時間はもうほとんど終わりかけで、あと一人誰か質問したら、それで最後になるというところでした。


「じゃ、じゃあ、次の質問で最後にします。誰か」


「ハ゛イ゛ッッッ!!!!」


「ふえっ!?」


 また愛奈ちゃんです。今まで以上の気迫で挙手したので、浩美の口から変な声が出ました。


「ま、愛奈さん……」


 本当は他の生徒の質問に答えるべきなのですが、愛奈ちゃんからすごい気迫が漂ってきて、怯えながらも思わず指名してしまいました。クラスの全員にそれが伝わっているのか、異を唱える子は誰もいません。



 指名された愛奈ちゃんは、最後の質問をしました。



「浩美先生は、お付き合いするなら、強い人がいいですか?」



 愛奈ちゃんの最後の質問は、浩美先生の好みの問題でした。


「え、えっと……うーん……」


 すぐに答えられる質問ではなく、少し考える浩美先生。やがて、浩美先生は答えました。


「そ、そうですね。強い人に守ってもらえると、先生は嬉しいです」


 今度は、愛奈ちゃんは呟きません。とても真剣な顔で、まっすぐに浩美先生の目を見ています。浩美先生は、なんだかその表情にドキドキしてしまって、顔が少し赤くなってました。


「……わかりました。ありがとうございます」


 納得のいく答えが聞けたのか、愛奈ちゃんは礼儀正しく頭を下げ、着席しました。

 そこで、同時にチャイムが鳴ります。


「……あっ。では、今日はここまでです」


 今日の日程全てが終わり、帰りのホームルームをやって、六年生の初日が終わりました。


「ねぇ愛奈。さっきのあれ、どういう事なの?」


 勇子ちゃんは、なぜ愛奈ちゃんがあんな質問を、矢継ぎ早にしたのか尋ねます。


「ごめんいさちん。あたし今から、急いでやらなきゃいけない事が出来たから、早く帰りたいの。じゃ、また明日!」


「あっ! 愛奈!」


 しかし愛奈ちゃんはそれに答えず、ダッシュで帰ってしまいました。


「……気にしないでいいと思う。たぶん、悪い事じゃないから」


 友香ちゃんが、軽く勇子ちゃんの肩を叩きました。





 ◇◇◇





 実は愛奈ちゃんの家は、高崎流気孔術という武術の家系です。だから家には、道場があります。

 家に帰ってきた愛奈ちゃんは、明日持っていくものの準備をすると、胴着に着替えて道場に行きました。


「待っててね、浩美先生」


 愛奈ちゃんはそう呟くと、腕立て伏せを始めます。

 一秒に五回の速度で。

 あり得ない速度をキープし、腕立て伏せを続ける愛奈ちゃん。一時間ほど腕立て伏せすると、今度は腹筋をまた一秒に五回の速度で一時間始めました。

 そうです。愛奈ちゃんは、特訓をしているのです。


(浩美先生!! 浩美先生!! 浩美先生!!)


 心の中は浩美先生の事で一杯。


「浩美先生ぇぇぇぇぇ!!!」


 遂に叫びました。特訓しながら叫びました。怖いです。


「うふ、うふふふ!!」


 今度は笑いました。めちゃくちゃ怖いです。





 ◇◇◇





「うーむ……」


 愛奈ちゃんの家の居間で、愛奈ちゃんのおじいちゃん、高崎亮二さんが、何やら唸っています。


「お父さん、どうしたんですか?」


 今話し掛けたのは愛奈ちゃんのお母さん、梨花さんです。


「お前、愛奈が道場に入っていくのを見たか?」


「ええ、見ましたよ。一人で修行するから、誰も入れないようにって言われましたけど」


「……実はな、さっきこっそり様子を見てきたんだ。すると、どうにもおかしい。突然『浩美先生!!』と叫んだり、何の脈絡もなく笑い出したり……」


 亮二さんは気孔術の師範なので、孫がやる気を出してくれたのはとても嬉しい事なのですが、こんな事をされるとさすがに不気味です。


「まぁ任せてみましょうよ。せっかくあの子が夢中になってるんですから」


 話に割り込んできたのは、愛奈ちゃんのお父さんの慎太郎さんです。愛奈ちゃんは結構周囲への関心が薄くて、趣味なんかも皆無だったので、何か一つでも夢中になれる事があるなら、それは喜ばしい事だと思っています。


「う、うむ……」


 確かにその通りだと思った亮二さんは、慎太郎さんが言うように、全て愛奈ちゃんに任せてみる事にしました。





 ◇◇◇





 翌日。


「おはよ~……」


 愛奈ちゃんが登校してきました。


「ど、どうしたの愛奈!? すごいクマが出来てるわよ!?」


 先に来ていた勇子ちゃんは、目の下に深いクマが出来て、顔がやつれきっているという、昨日から様子ががらりと変わり果てている愛奈ちゃんの姿に驚きました。


「えへへ~……腕立て腹筋背筋その他諸々五万回に、町内ランニング十周やったら疲れちゃって~……」


「何やってんのよあんた!? もしかして寝てないんじゃないの?」


「やだなぁ、ちゃんと寝たよ~。二時間くらい」


「寝不足よ!! 死ぬわよあんた!!」


 トレーニングのやりすぎです。


「皆さんおはようございます!」


 と、そこに浩美先生が、朝のホームルームに来ました。


「はい!! おはようございます!!」


 先生の姿を見た瞬間に、愛奈ちゃんのクマが消え去り、顔つきも回復して、昨日と全く同じになりました。


「どうなってんのよ、あんた……」


「超能力者よりすごいと思う」


 勇子ちゃんは愛奈ちゃんの姿に畏怖を覚え、友香ちゃんはぼそりと呟きました。





 ◇◇◇





 次の日は土日休みです。しかし、愛奈ちゃんは昨日帰ってからずっと修行に励み、この土日も勇子ちゃん達とは遊ばず、ひたすら修行を続けました。



 日曜日の深夜。時計の針は零時を回り、もう月曜日です。愛奈ちゃんは、道場の真ん中に倒れていました。彼女はまだ、小学六年生になったばかりです。いくら頑張っても、限界はあります。無理が祟って疲れ果て、死んだように眠っていました。



 愛奈ちゃんは夢を見ていました。夢の中でもずっと、ずっとずっと修行をしていました。


(苦しい)


 ここは夢の中なのに、愛奈ちゃんは苦しみを感じていました。それなのに、愛奈ちゃんは修行をやめません。


(こんなに苦しいのに、どうしてあたしは修行してるんだろう)


 自分でもなぜ、こんなに修行を続けているのか、わかりません。わからない。わからないけど、とにかく修行せずにはいられない。なので修行を続けています。


(……浩美先生)


 不意に、浩美先生の姿が思い浮かびました。その瞬間に、愛奈ちゃんは自分がなぜ修行を続けているのか、思い出しました。


(そうだ。あたしは先生を……!!)


 それに気付いた時、愛奈ちゃんは目を覚ましました。





 ◇◇◇





 月曜日。


「おはよう二人とも」


 勇子ちゃんと友香ちゃんは教室に向かう途中、後ろから愛奈ちゃんに声を掛けられました。


「あ、お、おはよう……」


「おはよう」


 友香ちゃんは普通に挨拶しましたが、勇子ちゃんは少し引いてます。

 というのも、愛奈ちゃんの雰囲気が、いつもと違って見えたからです。なんというか、目に見えないオーラのようなものが愛奈ちゃんの全身から溢れている気がして、それに圧倒されたのです。


「あっ! 皆さんおはようございます!」


 そこへ、少し早いですが、浩美先生が来ました。三人は浩美先生に挨拶しようとしました。



 ですが、その時教室から、三人の男子生徒が飛び出してきました。



 男子達は愛奈ちゃん達のそばを駆け抜け、浩美先生のところへ。そしてそのままの勢いで、浩美先生のタイトスカートをめくったのです。



「きゃあっ!?」


 浩美先生はスカートを押さえて、その場にしゃがみ込んでしまいました。


「黒だ!! 浩美先生のパンツは黒だぜ!!」


「やったやった―!!」


「江口ギャング団、作戦大成功―!!」


 男子達は勝ち誇っています。


「江口!! あいつら……!!」


 勇子ちゃんは男子達を見て、顔をしかめました。

 江口克彦、元田甚吉、亀梨半助の悪ガキ三人組です。彼らはリーダーの江口くんを筆頭に江口ギャング団というグループを作り、毎日悪事を働いています。まぁさっきのスカートめくりやら、紙を丸めて投げつけるやら、しょうもない悪事ばかりですが、勇子ちゃんは彼らが何かをする度に怒っています。

 今回も怒りに行こうとした時でした。愛奈ちゃんから感じられるオーラが、突然肌を針で突き刺すような、鋭い気配に変わったので、思わず勇子ちゃんは足を止めて、愛奈ちゃんを見ました。

 怒っています。愛奈ちゃんがすご―く怒っています。勇子ちゃんの怒りが豆粒に見えるような、ものすごい怒り顔をしています。


「お前ら……このドグサレド畜生ドクソ外道どもがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 愛奈ちゃんが叫びます。っていうか何て言ってるかわかりません。次の瞬間、愛奈ちゃんの姿が消えました。


「マチン!!!」


 と思った時には、甚吉くんの背後に現れており、愛奈ちゃんは甚吉くんを蹴り飛ばしました。甚吉くんは勇子ちゃんと友香ちゃんの隣を飛んでいき、その先にある壁を突き破って、五キロほど吹き飛ばされました。


「……えっ!?」


 遅れて勇子ちゃんが振り向きます。


「ポキュア!!!」


 ですが、愛奈ちゃんの攻撃はまだ終わりません。今度は半助くんを蹴り飛ばし、半助くんは壁をぶち抜いて十キロほど飛んでいきました。


「な、な!?」


 何が起こったのかわからず、江口くんは困惑しています。それに構わず、愛奈ちゃんは両手を腰溜めに構えました。

 両手の中に、真っ赤な光が集まっていきます。



 そして、



「高崎流気孔術奥義!!! 紅蓮情激波――――――!!!!!」



 両手を前に向けて、その光を解き放ちました。


「クリムゾーーーン!!!」


 江口くんはその光に呑まれ、吹き飛ばされました。


「あ、あ……」


 目の前で起こった事が信じられず、浩美先生は震えています。そこに、勇子ちゃん達が駆け寄ってきました。


「ちょっと愛奈!? 今の何なの!? 手からビームみたいなものが……」


「なんか出せるようになったの」


「なんかって……!!」


「確かにそれだと説得力ないよね~。んーっと……」


 さすがになんかでビームが出せるようになったというのはおかしいと思ったのか、愛奈ちゃんは真剣な理由を話し始めました。


「浩美先生の好みな人になりたいって思ったからかな」


「えっ? 私の?」


「うん。だって浩美先生、強い人が好きって言ってたから」


「……あ……」


 愛奈ちゃんは浩美先生に恋をしました。同性だとか歳が離れすぎているとか、そういう事に関係なく、恋愛的に好きになりました。

 この前あんな質問をしたのはそのせいです。浩美先生に付き合っている人がいれば、素直に諦めようと思っていました。ですがいないと聞いた事により、どんな人と付き合いたいか気になったのです。

 だから強くなろうと修行を始めました。常軌を逸した内容の修行でしたが、強くなろうと彼女なりに頑張ったんです。


「この四日間頑張ったんだけど、段々苦しくなってきて、何で自分がこんな事してるのかわからなくなっちゃった。でも浩美先生の事を考えるとね、浩美先生が好きになってくれるような、すごく強い人になろうって思ったの。そしたらさっきのが出せるようになっちゃった!」


 今愛奈ちゃんが出したのは、気の塊です。高崎流気孔術は、体内の気を操って身体能力を高め、気の流れに沿って動く武術なのですが、愛奈ちゃんは浩美先生への想いで、精神力を気に変える技術を身に付けました。気孔術を修得していたおかげで、気を操る技術を既に身に付けていたので、さっきのビームが出せるようになったんですね。

 ちなみに、前者の技術を身に付けているのは愛奈ちゃんだけです。亮二さんでさえ、そんな技術が存在する事自体知りません。だからあの技は、愛奈ちゃんだけのオリジナル奥義です。


「どう浩美先生? あたし強くなったでしょ?」


「は、はい。そうですね。すごく強いと思います」


「でしょでしょ!?」


 強くなったとしか言い様がないですね。愛奈ちゃん、喜んでます。


「これからはあたしが、浩美先生の彼女になるね! これからよろしく!」


 愛奈ちゃんは強いと言ってもらえたのが嬉しくて、まだしゃがみ込んでいる浩美先生に手を伸ばしました。


(どうしましょう……)


 自分に同性の、それもこんなに年下の彼女が出来るなんて思っていなかった浩美先生は戸惑いましたが、愛奈ちゃんの気持ちを無下にする事も出来ず、


「……はい、よろしくお願いします」


 その手を取って立ち上がりました。


「高崎ぃぃぃぃ!!」


 そこに向かってくる江口くん。ぼろぼろだけど生きてます。遠くに飛ばされたはずなのにすぐに戻ってきました。すごいですね。


「まだ生きてやがったかこの汚物がーーーーー!!!!」


「クリムゾンツー!!!!」


 愛奈ちゃんは浩美先生から手を離し、再び江口くんに紅蓮情激波を放ち、吹き飛ばしました。


「大丈夫だよ先生!! あんなのが何匹来たって、あたしが全部やっつけちゃうから!!」


「は、はい……」


(この子怖い!!)


 屈託のない笑みを見せる愛奈ちゃん。浩美先生はその笑顔がすごく怖くて、勇子ちゃんと一緒に震えていました。友香ちゃんは無表情でした。



 ちなみに甚吉くんと半助くんは、何とか生きてました。




いかがでしたか?ですが、私のギャグはまだまだこれからです。皆さんを必ず笑わせてみせますので、お楽しみに!

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