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探索開始と不安の始まり

森の探索には若葉も行くらしく、とても不安だった。

それでも若葉が大丈夫だと言うので、僕は我慢し若葉を見送る事にした。

探索組は合計12人で殆どが戦闘系のスキルを持っている。

例外として回復系の若葉や、解析者というスキルを持つ生徒もいる。

探索組は日が暮れる頃には帰るという計画で出発して行った。


「水本君。また食料を集めましょう?」

「そうだね、小川さんが居てくれると助かるよ」

「そう。」

未軌は雪と共に再び森での狩りへ出掛けた。

森は日が隠れているとは言え蒸し暑く、既に二人ともブレザーは脱いでいた。

未軌は、雪の白いワイシャツと艶のある白髪(・・)に加えて暑さで上気した顔に少し見惚れていた。


「小川さん!このキノコは初めて見るけど平気かな?」

未軌は白がベースとなったピンク色の斑点模様のキノコを指差し言った。


「・・・そのキノコはトケツ茸と言って血行を物凄く良くする物よ」

「血行を良くするってことは良いキノコなのか!」

「良いのかは知らないけど説明には血液を最小まで分解して全身から血が吹き出るそうよ。」

未軌はキノコに伸ばしていた手を止め、青い顔をしながら雪を見た。


「そ、そんなにやばいキノコなら言ってよ!」

「私はちゃんと吐血茸(トケツダケ)と言ったわよ。」

「さっきと字が違う気が・・・」

「さ。次行きましょう。」

「待ってよ」

さっさと歩いていく雪に慌てて付いていく未軌だった。


〜side探索組〜


ザシュッ

須藤は目の前にいた紅狼(こうろう)を真っ二つにした。


「へっ!ここらのモンスターなんて雑魚雑魚!」

「須藤君、油断は禁物だよ」

「へいへい、こんな雑魚にビビってんじゃねぇよ」

「はぁ〜」

探索開始から2時間、順調に進み出てくる魔物は須藤達にとって物足りないレベルだった。


「俺はもうLV(レベル)35だぜ、若葉!お前は?」

須藤が呼ぶと若葉は笑顔で答える。


「私はまだ28だよ、裕也は早いね」

「まぁ、俺は最強だからな」

「そうだね、私は回復を頑張るよ」

「あぁ、俺だけの傷を癒せよ?」

「うん」

「そういえば若葉、お前、ゴミ本の傷を治してただろ」

「あれは・・・皆んなの目の前だったから印象悪くなるし」

「確かにな、お前はクラスでは清楚系で通ってるからな、ヒヒッ」

「も〜、通ってるって何よ!私は清楚なの!」

「そうだな。で、いつあのゴミは捨てる?」

須藤が尋ねると、若葉はうーんと考える素振りを見せる。


「さっき見つけた『底無しの穴』なんてどう?」

「あのクソメガネの使えねぇ解析のやつか」

クソメガネと呼ばれたのはクラスで解析者のスキルを持つ青木健司だ。

彼の解析者というスキルは解析したい対象をMPの量に比例して詳しく解析するという物だ。

その解析で出た結果が、


ーーーーーーーーーーーーーーー

底無しの穴

・名前の通り底のない穴。

ーーーーーーーーーーーーーーー

という何とも簡単なものだった。


普通なら成分や何故出来たか、いつ出来たかという説明も出るのだが、この穴に関してはこれ以上の解析が出来なかったのだ。


「そうだな、じゃあ若葉。お前があのゴミをあの穴に落とせ」

「えー、あんなゴミに触りたくないよー」

「その後可愛がってやるからよ」

「本当?!じゃあ頑張る!」

未軌が聞いていたらショックで気絶しそうな会話を笑顔でする若葉と須藤。

それを聞いて俯く神崎以外の生徒、その探索組が帰ってきたのは計画通り夕方だった。


〜side未軌〜


森では食用のキノコや山菜が結構取れ、途中で現れたホーンラビットや紅熊(あかぐま)では、ホーンラビットは未軌倒し、紅熊は雪が瞬殺した。

未軌が見た限りでは雪が紅熊の懐へ一瞬で潜り込んど所までしか目で終えず、気付いた時には雪が紅熊の背後にいて紅熊は数秒後にドシンッ、と倒れた所だった。


未軌が改めてスキルを聞くが、教えてくれず、有耶無耶にされた。

紅熊は雪と2人で解体し、持って帰れる分だけ持って帰り後は雪のスキルなのか、手から出た炎で炭となった。


2人が帰る頃には日が暮れはじめ、ロッジには探索組も帰って来ていた。


「小川さん、僕ちょっと・・・」

「どうせ佐々木さんの所へ行くんでしょう?」

「ごめん」

「なんで謝るの?」

「小川さんは余り若葉の事が好きじゃないだろうから」

「まあ。好きではないわね。」

「うん・・・」

「いいから行きなさい。」

「うん、また後でね!」

後に残ったのは小走りで若葉の所へ向かう未軌の背中を静かに見ている雪だけだった。

「若葉、お帰り!」

「未軌君!ただいま、怪我はない?」

「それは僕よセリフだよ。僕は平気、若葉も怪我は無い?」

「この通り平気だよ」

若葉はクルリと1回転すると未軌に言った。

未軌が若葉を夕食に誘おうとしたと共に隣から声がした。


「若葉〜、一緒に飯食おうぜ〜」

それはニヤニヤと笑みを浮かべた須藤だった。


「うん。ゴメンね未軌君、私今日は探索で須藤に夕食誘われてて。もう行くね。」

「え、あ、うん」

未軌は黙って若葉を見送る事しかできなかった。


未軌はそのまま無言で器を受け取り、1人で夕食を食べようとした。

すると隣に今日一日一緒に居た雪がやって来た。


「水本君。私の言った事信じた?」

「あの事?なんで?」

「だってあっちの世界で君の前’’では”散々苦手だって言ってた須藤と夕食を摂るのよ?」

「それは探索の時に誘われたからで・・・」

「本当にそう思ってる?」

「・・・」

(確かに若葉はあっちの世界では須藤をかなり苦手だって言ってた。けど、優しい若葉だから苦手な須藤に夕食を誘われても受けてあげてるんだ)


「水本君。聞いてる?」

「うん、大丈夫。僕は若葉を信じてるから」

「・・・そう。」

雪はそれだけ言うとさっさと何処かへ行ってしまった。

未軌は夕食を貰うとロッジの強化のために切り倒された木の切り株に腰を掛け、ゆっくり食べた。

〜夜〜

未軌は昨日同様眠れず星を眺めていた。

するとロッジの裏から男の声と女の声が聞こえた。

未軌は壁腰に少し覗くと、其処では声からして須藤らしき男と、誰かは分からないが息を切らしながら猥がましい声を上げる女がいた。

未軌は顔を赤くして直ぐに戻ろうとした。

その時、一瞬月明かりに照らされて見えた女の髪の色は艶のある白髪(・・)だった事を、未軌は一晩中忘れようとしていた。







最後まで読んでいただきありがとうございます。

アドバイスやここが変じゃ無い?という所があればコメントやメッセージで指摘していただけると助かります。

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