レニィ
雪との別行動を決めた翌日、未軌は朝日が昇る前に目を覚ました。
隣のベッドを見ると既に雪の姿はなく布団が綺麗に畳まれていた。
未軌は先に行ったのか、とだけ思うと朝食は摂らずに宿を出てギルドへ向かった。
まだ暗いせいか通りには人影もなく偶に路地裏から怒鳴り声や犬の鳴き声が聞こえるだけだ。
ギルドが見えてきたところで路地裏から見覚えのあるマントを身に纏った人物が飛び出てきた。
それを追うように路地裏から4人の男が出てくる。
「テメェ!金を返しやがれ!」
「コレは君達のお金じゃないだろ?」
「何言ってやがる、それは俺らのもんだ!」
「違うね、僕は君達が教会の募金箱からコレを盗るところを見ていたんた!」
「チッ、オメェ等!此奴を殺して金を取り返すぞ!」
「「「おうッ!」」」
リーダーらしき男が腰の剣を抜くと他の男達もそれに続いた。
未軌は面倒に巻き込まれるのは御免なので直ぐに陰に隠れていた。
男達はマント・・・レニィに切り掛かるがそれを簡単に避けると男達の顎に拳を掠らせ意識を奪う。
あっという間に男達ら意識を刈り取られ倒れていく。
レニィは一息吐くと男の懐から金属音のする袋を取り出した。
しかし、男達の1人が完全に意識を失っていなかったのか静かに立ちレニィを斬りつける。
「ッ!?」
レニィは背中を大きな袈裟斬りを受け一気に形成逆転した。
「テメェ・・・舐めやがって」
レニィは痛みの余り転げ回りフードが取れる。
「へっ!女だったのか。オメェ等いつまで寝てんだ!」
男は仲間を蹴飛ばし起こす。
男の仲間は呻きながら立ち上がるが、レニィを見て女だとわかると下衆な笑みを浮かべた。
「おい、殺すのは辞めだ。此奴を持って帰るぞ」
「へへっ、そうだな」
男達はレニィを抱えると路地裏には入りその姿は闇に溶けていった。
未軌は陰から出るとギルドに向かおうとしたがある事を思い出した。
(そういえばあの男達金を持っていたな・・・)
未軌はギルドに向かう足を路地裏へと伸ばした。
男達を着けて行くと外から見ただけだとボロボロなだけな3階建程の高さがある木造の建物の中へ入っていった。
未軌は壁をよじ登り屋根に上がると窓から中の様子を見た。
男達は机の上に金を出し、山分けをしていた。
離れた床には縄で結ばれたレニィが横たわっていた。
未軌は一旦屋根から下り、ドアを強くノックする。
ドンドンッ!
そして素早く屋根へと登り、再び中を覗くと丁度2人の男が扉から出ていった。
暫くして下のドアが開くと共に未軌は窓を破り中へ入った。
「誰だ!」
未軌は声を出さず素早く男達に近ずく。
男達は腰の剣を抜くが既に手の中に剣はなく驚く間も無く未軌に斬られる。
流石に一撃とまではいかず、順にトドメを刺していく。
未軌の相手をしていた男達の声を聞き、下に降りた男達が階段を駆け上がる音が聞こえ未軌は扉の裏に隠れる。
阻止て勢いよく男達が入ってくると共に片方の男の背中を袈裟斬りにする。
「グワァッ!」
「なんだ!テ、テメェ!ここで何してやがる!」
「お前が知る必要はない」
上がってきた男も腰の剣を抜こうとするが既に剣は腰に無く未軌の手の中にあった。
未軌は奪うとともに男を斬りつける。
もう一人の男はそれを見て逃げたそうとするが足が前に進まない。
ゴドッ
未軌が振り返ると扉の前には一人で逃げようとした男が倒れていた。
男の足は股関節から先が無かった。
「ひ、ひぃ。助けてくれ!ガフッ」
未軌は止まること無く剣の握られた腕を振り下ろした。
未軌は男達が死んだ事を確認すると机の上にある金を袋に入れ窓へ向かった。
「ま、待ってくれ!」
「・・・なんだ」
未軌はゆっくりと振り返ると床に横たわったレニィを見る。
「すまないが手を貸してもらえないだろうか」
「・・・これからは俺に絡まないと約束するか?」
「あぁ、約束するよ」
レニィがそう言うと未軌はレニィの体を縛っていた縄を切った。
切り終わると未軌は窓から出て行こうとする。
「あ、あの!」
「・・・」
未軌が無言で振り返ると床に座り込んだレニィが恥ずかしそうに頭を掻いていた。
「誘拐されるなんて初めてで、その・・・」
「足が竦んだと」
「すまない」
未軌は少し考えるとレニィに歩み寄った。
「俺がここにいた事を忘れろ、いいな」
「分かった」
未軌は返事を聞くとレニィを背負った。
(本当は記憶を奪いたいところだが、まだリスクが高いな)
未軌は自分のスキルレベルから人の記憶や考えを奪うにはリスクが高いと判断し先の約束で手を引いた。
未軌はレニィを背負ったままギルドへ向かう。
勿論大通りでは人目を引くので路地裏を通っていく。
暫くしてギルドの裏に着くと未軌はレニィを地面に降ろし言った。
「裏から入れば直ぐにギルドの職員がいる。それと最後に言うが、お前は俺のことを見てないし知りもしない。分かったな」
「あぁ、約束する」
未軌は無言でその場を離れ、その背中を見えなくなるまでレニィは見つめていた。
sideレニィ
昨日、変わった少年と少女を見た。
私が丁度ギルドへ戻って来ると中で少年が新人いびりをよくしているガウルに絡まれている所だった。
少年は力に自信があるようには見えなかった。しかし、床に跪いて苦しんでいたのはガウルの方だった。
ガウルは自慢の大斧を少年に振りかざし、それを見て私は止めに入った。
がウルの方は驚くが、私に気付くと助けを求め始めるが、当然悪いのは新人いびりして返り討ちにあったガウルの方だろう、そう結論付け放っておく。
そんな事を考えていると少年ら何時の間にカウンターへ向かっていた。
直ぐに少年に声をかけるが無視をされる。
少しムッとなり肩を掴むと嫌そうに私に注意してきた。
私が理由を言うと、次は声を落とせと言い、加えて屁理屈も言ってくるので言い返したら、逆に言い負かされてしまっまた。
顔は私の正体がバレてしまうので見せられないと言うと隣にいた少女が突然私の本名を少年に告げた。
元々知っていたのかと構えたが少年は興味無さげにカウンターへ向かい少女もそれについて行った。
私は少年が何を考えているのか分からず暫く観察することにした。
彼等は依頼を受けると特に寄り道もせず目的地の林に着き依頼をこなし、終わると街へ戻って行った。
途中ゴブリンと遭遇していたが、少年が頭に手を置くだけで倒していた。
何か魔法でも使ったのだろうか。
少年達がギルドに戻り続いて私もギルドへ入り少年に声をかける。
しかし、彼等は聞こえてないかなようにカウンターへ向かう。
私は少年の肩を掴み制止を呼び掛けようとしたが肩を掴むはずだった手から私の肩までか無くなっていた、驚く暇もなく少年が私に何かを投げた。
私がそれを自分の腕だと認識した時には既に腕は元に戻っていた。
何が起きたかわからずいたが直ぐに少年に迫る。
しかし、次は少年でなく少女が前に出た。
少女は私のフルネームと共にお嬢さんと呼んでいた。
こちらの身分は分かっていたのだろう悪いがタダで帰すわけには行かなくなった。
私が剣を抜き突くとほぼ同時に少女も手刀を放った。
こちらの方が微かに速いと思った時には両手を床に付け跪いていた。
そして何が起きたかを考えるより先に体が震え頭の中が黒一色になった。
目に映る全てに色がなくなり一つの感情が心を塗り潰した。
『絶望』
それだけだった。
この時だろう、私がミズモト ミキと言うと少年に敵わないと初めて感じたのは・・・
かなり更新が遅くなりました、不定期で遅くなることもありますが、これからも読んでもらえれば幸いです。
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