大漁旗
遠くから船が来るのを、今か今かと待ち構えている。
無線では、かなり大量だと言う話だ。
喫水線ぎりぎりまで魚が取れたという。
「まだかなぁ」
俺はそう言って水平線へ目を凝らす。
まだ若いからという理由で、船に乗せてもらえなかった俺は、漁港で親父たちを待つしかない。
でも、きっといつも通りの良い顔で、兄たちと一緒に帰ってくるだろう。
「きたっ」
水平線、やっと穂先が見えてくるような感じのところから、俺は雰囲気で船が分かった。
ここから漁港はさらに忙しさを増す。
1時間ほどで、船はみんな漁港へと帰ってきた。
「お帰り」
大漁旗が、誇らしげに、風にあおられつつ、その存在を主張していた。
「おう、ただいま」
かごを次々と俺に渡してくる親父たちの顔は、どこか誇らしげだった。