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命を助けるお勉強

作者: 雲雀 蓮



本日も晴天なり。

ぼんやりと椅子に座って授業の開始を待つ。

退屈な時間の始まりだ。


もういっそサボろうかなと思いつつ教材を出す。

今日は救急救護というとても言いにくいことを学ぶらしい。

どうせ人工呼吸だとか心臓マッサージだろ?

前にやったことあるよ。



ぎぃぃ、ガタン、バタン。



「はい、こんにちは」



なぜか不要なくらいの音がして開く扉の向こうから先生がやってきた。

のしのし、と先生の足音が無音の教室に響く。

俺以外にも生徒はもちろんいるのだが、誰一人口を開かない。

まるでしゃべったら負けとしたゲームのようだ。

そして誰一人として、先生の方向を見ない。

どこ見てんだ、と思って見渡すと机を見ている。

なんか書いてあんのか?と自分のを見たが、何もない。

単純に白い長机があるだけだ。



「今日は、救急救護だったね。教科書だして」



すでに皆準備していたようで、がさごそと荷物を漁るやつはいなかった。

その代りペラペラとページをめくる音と、机に角をぶつける音がした。

俺の手が滑っただけだが。



先生が教科書を音読するような授業で、余りにも退屈だった。

どうあがいたって俺が黙読した方が早いし。

暇を持て余した俺は、教室内のものを観察することにした。


先生を見てみる。

普通に教科書を見つめてんのかと思いきや目が合った。

俺以外にも視線をやっていたが、皆下を向いていたので合わなかった。


自分以外の生徒は先ほどと同じ体勢で教科書を見つめている。

下に向いている頭を支えている首が結構まがっていた。

辛くないのか、その体勢。

首を真っ直ぐにしていた方が楽じゃないか?



と、暇を持て余らせていると先生の音読が終わった。

そんでビデオを見ようということになった。

実習授業だからな、後でやるんだぞ。

そう言った先生は一緒にビデオを見なかった。

というか、ビデオと言うよりDVDじゃね?

とは誰も突っ込まなかった。












自分の知っている知識だし、つまんないなと思っていた。

だって前やったからな。単位をかけて。

一応真面目に、本気を出して取り組んださ。

もう一回遊べるドン、なんて今更されても結構ですとしか言いようがない。


そう思って冷めた感情でテレビ画面を見つめていた。



が、しかし。

ふとした瞬間に、それは訪れた。



丁度場面としては”人が倒れている”ところ。

救急車を呼べだとか、AEDを持ってこいだとか、助けを求めるシーンだ。




『もしもーし、もしもーし、もしもーし!!』



反応確認ですね、はいはい。

意識があるかどうか三回訊くんだよね。声量替えながらね。



『反応なし』



ちょいまて、なんでさっきよりも無感情な感じなの?

無機質すぎるよ、その言い方。

やばい、ちょっと笑える。

もう少し演技というか、人間的に言おうよ。

それが適正な呼称だとしても、もう少し何とかならないの?



『誰か、誰か来てください!』



あぁ、人を呼ぶのね。

そうだね、救急車呼んだり、AED持ってきてもらわなきゃね。



『そこのあなた、救急車を呼んでください。そこのあなたはAEDを持って戻ってきてください』



・・・・・・?

ちょっと、変だな。

なんか日本語が変と言うか、ああ。

持って「戻ってこい」か。

犬じゃあないんだから、戻ってくるだろう。

だって目の前に人が倒れてるんだぞ?

それなのにふざけて「はい、持った」って言ってそのまま戻して、戻ってこないやつがあるか?

いやないだろう。


これはひどい、俺らを笑わせに来ているだろう。


そう思って周りを見る。

流石に後ろは見れなかったが、誰一人くすりともしない。

なぜだ、そんなにも真面目に取り組んでいるのか?






単純に俺だけ退屈しているだけか。

他の皆は退屈だけど、他のこと考えるほど退屈じゃあないんだ。

どうせ今日の晩御飯とか、これからの予定とか、そう言う事ばっかり考えてるんだろうな。



くだらないことばっかり考えている俺には到底考え付かないようなことを。

俺に取っちゃ他人のことなんで、別にどうでもいいけどさ。










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