1.異世界
書け次第投稿していくのでたまに矛盾とかあると思いますがその都度直していきたいと思います
「……ぇ、……ねえってば!」
気が付くとそんな声が聞こえる。
軽く目を開けると一気に光が入ってきたせいか、一瞬あたりが真っ白に見える。
「気が付いた??」
そう尋ねてくる人は修道服を着た、まだ若い女性だった。
20代前半に見えることから、おそらく年下だろう、と考えているとさらに声がかけられる。
「えっと、お母さんは?」
お母さん?
そんなことを気にしてどうするのだろうか。
というか、これでも勇者をやっていたので顔は知られているはずだ。
…と、考えていたところで意識を失う前のことを思い出す。
人生をやり直せる、そんな魔法を使った気がする。
「…わからない」
とりあえず何も返事しないというのもおかしいので返事をする。
そして返事をしたところでさらなる違和感に気が付く。
自分の声が高い。
自分の体を見ると案の定、体が小さくなっている。
つまりは若返り。
もちろんそんな魔法は聞いたことはなかった。
効果をよく考えず使ったのは自分なのだが、それでも驚くのは仕方ないことだと思う。
「そっか……」
そんなふうに自分の中で考えていると女性は少し悲しそうな顔をしてそう言う。
捨てられた子供だと思ったのだろうか、それとも記憶喪失の子供だと思ったのだろうか。
「なら、とりあえず教会においで」
俺を怖がらせないためなのだろう。女性はにっこりと優しい笑顔を作って俺にそう言った。
現状が理解できていない以上、俺は情報収集をするしかないのだ。
「うん、わかった」
俺ははありがたく女性の申し出を受けることにした。
教会に向かう途中にある店に売られているもの、通貨、土地などの固有名詞、建物のつくり、会話の内容から判断するに、ここはどうやら俺がいた世界では無いようだった。
元々自分がいた世界は世界地図が完成していたし、そこまで広いわけでもなかったために、こんな場所があれば知らないほうがおかしかった。
昔見たことがある食べ物でも呼ばれ方が違ったりもした。
以上の事から自分がいた世界ではないと判断したのだ。
「ここが教会だよ」
そんなことを考えている間にどうやら教会に着いたらしい。
教会は俺が知っている者と比べると随分と立派なものだった。
木造ではなく石造で広さも1000人以上は軽く入れるくらいに見える。
神に選ばれた勇者よ、我らが奪われた土地を魔族から取り返してくれ。
ふと、どこかの国や教会で嫌と言うほど言われたその言葉を思い出した。
実際には奪われたなどいない、元々魔族の物だった土地。
取り返すも何もない、ただの略奪だ。
そしてそれに気が付いた時にはもう戻れないところまで来ていたのだ。
「とりあえず、中で休もうか」
女性に中に誘導されそれに従う。
外観同様内装もきれいで、これが普通なら俺が知っている世界よりかなり生活レベルが高そうだ。
「私は一応ここの牧師をやっているリチェル・ハイラルト。ここの教会の名前がハイラルト教会っていって、私は元孤児でここの教会で育てられたんだ。最近だと捨て子とかめったにいなくて私みたいな子に会ったのは私が牧師になってから初めてなんだけどね。…っていきなり捨て子扱いとか失礼だよね、ごめんね?あ、ここに座って」
そこまで説明して、お互いに立っていることに気づいたリチェルは少し慌てた様子で近くにある椅子を持ってきてくれたので、お礼を言ってその椅子に座る。
その顔に少し申し訳なさが感じられるのはおそらく捨て子扱いしたことに関してだろう。
実際、今の自分は捨て子扱いになるのか、と考えると違う気しかしないので、申し訳なさそうな顔をされるとこっちが申し訳なくなる。
そう考えた俺はとりあえずどうすれば今の状況に違和感がない返答ができるか、少し考えた後、落ち着いて口を開くことにする。
この世界のことを知らなくてもおかしくない、年相応の、できれば居場所も確保できる言葉…。
「…ごめんなさい、僕、お姉さんに声をかけられる前のこと、憶えてないんです……」
口に出した後で、急激に恥ずかしさがこみ上げる。
僕なんて言葉を久々に使ったこともそうだが、自分(元の世界)より明らかに年下の子をお姉さん扱いと言うのもそうだ。
仕方がないこととはいえ、恥ずかしさでリチェルの顔を見れない。
「ううん、謝らなくて大丈夫だよ。一番つらいのはあなただもの。名前は憶えてる?」
顔を上げるとリチェルと目が合い、さらに恥ずかしくなるので、何かほかに方法はなかったのだろうかと考えながら少し俯いていると、そう声がかけられる。
名前…。
ふと俺の頭に浮かんだのはグレイ・ネイタスだ。
ただのグレイじゃなくてネイタスまで浮かぶということに少し複雑な思いを抱きながら、元の世界での魔王との最後の会話を思い出す。
俺が死んで、死後アイツにあったらあの時の文句を言ってやる。
そして文句として浮かんだのが仲間を殺されたことではなく、勝手に結婚扱いにされたことだった。
客観的に見ると攻め込んだのは俺達で、俺達のうち、誰かが死ぬのも仕方がないことだった。
だが、仕方がないと言われた納得のできることではない。
今だってそれを思い出せば行き場のないイラつきが生まれてくるが、それよりもあの魔王に伝えたい文句と言うのは結婚扱いにされたことなのだ。
俺が薄情なのか、魔王のインパクトが強すぎるのか、はたまたその両方なのか。
「グレイ…です」
結果的に俺が名乗ったのはただのグレイだった。
「グレイ君ね。名前は憶えてるみたいでよかった。他に覚えてることはある?」
言葉は通じるし、途中の店で見た文字も読めることからそのあたりは心配なかった。
というか、会話が成立してる時点でリチェルもそれは分かっているだろう。
識字率の方は分からないが、そこは何とか誤魔化せそうだ。
だが、この世界の常識がわからない。
「ほとんど何も…」
変に知ったふりをして後から違いが判るより、先にいろいろ教えてもらった方がいいと判断した俺はこう返した。
「そっか…。うん、じゃあグレイ君は私と一緒にここに住むといいよ。私が知っていることなら一般常識から魔法まで何でも教えちゃうからね!…だから、グレイ君は何も気にしないで子供らしく成長しなさい」
そう言ってリチェルは胸を張って誇らしげに笑う。
「いいの?」
こうなることを望んだ返答をしたのは自分だが、あまりのリチェルの決断のはやさに驚き、本心からその言葉が出る。
「今訳あってこの教会には私しかいないんだ。ほら、一人って寂しいし。それに自分がしてもらったことは他の人にもしてあげたいの。ここで拾ってもらって育ててもらった私が今度はグレイ君を育てる。そういうの少し憧れてたしね。…あ、グレイ君は好きなように育っていいからね?」
これを本心から言ってるとしたら、今までの行動も含めて考えるに、リチェルは底抜けのいい人なのだろう。
俺が知っている虎児は、自分を捨てた親を怨み、自分を認めない世界を怨み、そんなことしか考えられない自分自身を怨む、そんな人と辛いことを考えないように、思考を放棄した人が大半を占めていた。
もちろんリチェルのような人もいたが、それも少数だった。
「ありがとう」
「どういたしまして。お礼を言える子は良い子に育つよ」
そう言って笑うリチェルはどうやら褒めて伸ばす方針らしい。
ただお礼を言っただけで褒められて恥ずかしい気もしたが、本当に久しぶりに褒められた事自体は、悪い気はせず、むしろ少しうれしかった。
◇
リチェルと自己紹介をしてしばらくして、俺はまずステータスを見れるという水晶に触れた。
俺がいた世界にはなかったものでいくつかの値が数値として見れるらしい。
まずリチェルのステータスを見せてもらったところ
Name:リチェル・ハイラルト
Age:21
Species:人種
Magic Point:412/412
Specialty:水・聖
といった表示が出てきた。
名前は本人が表示させたいと思ったものが表示されるらしく、身分証明などでは使えないらしい。また年齢は本人の年齢だ。
種族は獣人種や精霊種、巨人種などもあるらしい。
MPは魔法を使うのに必要なもので魔法を使うと減ったりするらしく、これは努力によって最大値が増えるようだ。
その次は本人の得意属性らしく、完全に生まれつきで決まっているらしい。
ついでにこの世界での魔法の属性を聞いたところ、基本属性と特殊属性があるらしい。
基本属性は風・水・地・火の4つらしく、特殊属性の方は上げたらきりがない、とリチェルは言っていた。
魔法の属性について世間に広まっているものは俺が知っている者と大差なかった。
俺の世界では特殊属性の魔法のことを固有魔法と言っていて、特に使えるのが一人だからというわけではなかったのだが、なぜかそう呼ばれていた。
「思ったより詳しく出ないんだね」
リチェルのステータスを見て俺はそう言った。
正直、力とかそういうのも出ると思っていたのだ。
「数値で表すのはこのあたりが限界っていうのを聞いたことがあるよ。なんでも、他のものは条件によって変わったりするから数値にしても意味ないんだって。…ってこんなこといってもわかんないかな」
実際には理解できているのだが、変に何でも分かるほうが怪しいので適当なところで首をかしげておく。
魔法のことは余り違いはなさそうに思えるがあると怖いので一応調べられたらあとで調べようと決めた。
「さ、次はグレイ君の番だよ」
そうリチェルに言われ、水晶の方へ移動し、水晶に触れる。
「さっき私がやったみたいにステータスオープンっていえば表示されるから」
リチェルに軽く説明され、初めての体験に少し緊張しながらも言われた通りにする。
「ステータスオープン」
一瞬水晶が光った後、目の前に俺のステータスが表示された。
変なところで切ってすいません
英語やカタカナ、漢字が混じってますが、スルーしていただけるとありがたいです
予定としては幼少編4.5話やった後、タグにある通り学園に移りたいと思います。
おそらく次はほぼ説明になると思います