表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/39

エピローグ

最終回、これにて完結~~~~~!!!

ありがとうございました♪


続編「星杜学園1年 波原小春 170㎝64㎏ チョコレート事件勃発!?」連載中です^^

 私が目を覚ましたのは、これまで修行してきた生徒会室のソファの上だった。

「あ……れ?」

 心配そうな顔が、私の顔をのぞいている。

「あ、小春ちゃんが目を覚ましたよぅ!」

 みなの顔がいっせいに明るくなる。

 辺りを見回すと、麻莉子に友哉、桐生に、早見坂、藍原さん……そして陣の顔が見えた。陣の顔が見えた途端に、反射的に私は身を起して叫ぶ。

「なんで陣がここに!? 龍底に私の願いは届かなかったの??」

(え? じゃあ、麻莉子はなんでここに……?)

 なにがどうなったか分からずにとまどいを隠せないでいる私に、麻莉子がぎゅっと飛びついてきた。

「まっ、麻莉子!?」

「小春ちゃあん、ごめんねぇ。こんなに小春ちゃんを追い詰めることになるなんて、麻莉子、思ってもみなかったのぅ」

「どういうこと? クローン人間はまだ存在してるの?」

 そんな私たちのやりとりに、友哉が加わってくる。

「小春さん、騙してたみたいで、ごめんなさい。実はですね、これまでの事って、星杜の伝統のヒトツとして動いてきてたんです」

「これまでの事? 伝統? 友哉、いったい……何を言ってるの?」

 友哉がすまなそうに、でも楽しそうに笑って私の顔を見ている。

 

 そして、そんな私の質問に答えたのは、早見坂だった。

「小春くん、本当に申し訳なかった。伝統行事……と呼ぶのが正確かどうかは置いておくが、我が星杜学園では、毎年、学園全体で1年かけて映画を撮っているんだ」

「学園全体で……1年かけて……映画を撮る……?」

 麻莉子は身体をはなすと、クリクリとした、いたずらっぽい目で私を見つめながら

「主演女優は、波原小春!」

そう言って私を指さし、続いて自分に向けて指をさすと

「そして助演女優は、この久遠麻莉子ぉっ!」

と、言い放った。

「しゅ……えんじょゆう?」


 理解が追いつかない私に、今度は藍原さんが、とびっきりな優しい表情で話しかけてくる。

「波原さん、本当にごめんなさいね。今年は、入学する生徒さんに、役者さんが揃っていたものだから、私までついつい悪ノリしちゃったわ。台本はもちろんあるのよ。でも、波原さんには言わない方が、良い作品になるだろうって桐生くんが言うものだから……。それに、他のみんなも賛成してくれた事もあって」

 そんな言い訳をしながら、藍原さんは舌をペロリと出した。こういう藍原さんは始めて見たけれど、これはこれで茶目っ気たっぷりな感じで、別の意味でそそるかもしれない。

 などど思ったりする余裕は、本当は私にはないのだ。

 けれど、それにしたって。

「みんな、って、みんなって言いますけど、それっていったい誰ですかっ!? 何人以上で、みんな、なんですかっ!?」

 私の口調が荒くなったとしても、それは私のせいではないはずだ。

「本当に……ごめんなさい。辛かったでしょ」

 藍原さんが、少しだけ神妙な表情になった。

「藍原さんっ! あたし……確かに辛かったですけど、そうですとも、辛かろうはずなんです!」

 日本語の正しい使い方を忘れそうになっている。

「いっ、いったい、どこからが作り話で、どこまでが本当なんですかっ!?」

 今の気持ちを、どう表現したらいいのだろう。今日までギリギリの精神状態で生きてきたと言ったとしても、そんな私を笑う事なんて誰にもできないんじゃないだろうか。いや、実際、ギリギリの精神状態だったのだ。


「詳しい事を聞きたいおまえの気持ちは、よく分かるがな、小春。今、ここでその話をしていたら、次の予定が滞ってしまう。それはまた日を改めて別の機会に、ということで勘弁してくれないか」

 今度は桐生だった。

「う……でも……そんな事言われても、このままじゃワケわかんないままだし……」

「小春、本当に悪かった」

 桐生の瞳に、冷たさは感じられない。

「でも、桐生、これだけは教えてほしい」

「なんだ?」

「あたしは……あたしが桐生家の人間だっていうのは?」

「いや、それはないな」

 桐生が、珍しくいたずらっぽい表情で笑った。

「じゃ、あたしがクローン人間だっていうのは…?」

「ありえないんじゃないか?」

「じゃ、じゃあ……桐生が、わざわざ星杜学園から私の中学校に転入してきて、本当は年上だったってハナシは?」

「そんなワケあるか。俺は、正真正銘おまえと同じ年齢だ」

(こいつはっ!!)


「それじゃ陣……陣先輩は!?」

 ここで始めて、陣が申し訳なさそうに口を開く。

「波原さん、これまで騙してきてごめんね。あと……最後に嫌な思いまでさせちゃったし。でも本当の僕は、いたって気の良い人間さ」

「陣先輩も、映画のストーリーを演じていただけなんですか?」

「うん、そうだよ。僕さ、波原さんや桐生くんのように、ちょっとだけ気を操れる人だったからさ。あ、ひとこと言っておくけど、寮祭の時に力を発動させて波原さんの足を引き止めたのは、僕じゃなくて桐生君だけどね」

 へなへなへな、と。本当にそんな音が自分の中でしたような気がした。

「責任者、ここへ出てこいーーーーーーーーーーーーーーっ!!! ぶん殴ってやる!!!」

 私は、もうめちゃめちゃ暴れだしたい気分だった。

「映画だ、お芝居だなんて……波原小春を、いったいなんだと思ってんだーーーーーーっ!! はぁはぁはぁ」

 

「小春ちゃぁぁ~ん」

「小春さん~」

「波原さーん」

「小春くん」

 みなが私の名前を呼ぶ。

「まぁまぁ小春。そんな怖い顔するな」

「桐生ね、あんた、いけしゃあしゃあとそんなふうに言うけどね。あたしが今までどんだけ……」

 と、突然に桐生が、私の唇に人差し指をあてて言葉をさえぎる。

「小春。今から、早見坂と藍原のダイフクロースが、大福もちを配って回るメインイベントが始まるところだ」

 桐生の言葉に、まだ創立記念前夜祭が続いていることに気付く。

(ダイフクロース……)

 そういえば、そんな提案をしたような記憶も蘇ってくる。もう遠い昔の話のように思えたが。


「波原さんのアイディアのせいで、私は、最初で最後の着ぐるみスタイルになるんですもの、今回の事は、おあいこってことで許してもらえない?」

(藍原さん、おあいこって……そんな)

「小春くん、その後は、いよいよミスター&ミス星杜の発表になるぞ。今年は、意表をつくような結果が出そうな勢いだ」

(そんなこと、私にとってはどうでも……)

「うんうん、だってねぇ~、小春ちゃんの一挙手一投足が、4月にキャストが発表された時からずーーーーーっと全校生徒の注目の的だったからさぁ~。小春ちゃんの正義感、男らしさっぷりが、称賛されまくっちゃってるのぅ。うんうん、小春ちゃんがミス星杜に選ばれるのも夢じゃないかもよぉ~」

(一挙手一投足?)

「でっでも、ぼくは、小春さんがミス星杜になるのは、なんとなくイヤだっていうか、遠くなっちゃうような気がするっていうか……」

「またまた友哉くんは、こんな時にまでぇ~」

 生徒会室にどっと笑いが起こった。


「なにせ今回は、小春くんの出方しだいでは、正反対のラストになる可能性もあったからな。途中途中で細々とした修正はしたものの、最後の場面では、さすがは小春くんだった。こちらで描いていた通りの結末を導いてくれた事に感謝する。本当に圧巻のラストとなった」

「他のみなさんとは、だいたいの流れは打ち合わせてあったけれど、波原さんの出方しだいで、どう転ぶか未知だったものねぇ」

(そんな……会長……藍原さん……)

 褒めてもらったのかどうか、いまいち微妙な気はする。

「いいえ、だからそんな心配はないと、最初から僕が言ったでしょう? 小春の頭の構造は単純なんだから、ちゃんと筋書き通りに運ぶことになってたんですよ」

 藍原さんに対する、桐生の言葉使いが少し丁寧になっているのに気付いた。

(そっか。桐生が3年生っていうのは映画の中での設定なんだ)


「残る編集作業が終われば、今年の星杜映画も完成ですね。過去の映画の中でも最高傑作になるんじゃないでしょうか?」

 最後にそう話すのは陣先輩だった。

「小春ちゃ~ん、この映画ね、3年生の追い出しコンパでお披露目になるんだよぅ~。すっごく楽しみだねぇ~」

「ぼくが映画に出てるなんて、今でも信じられませんよ」


(もう、みんな好き勝手なこと言ってる)

 でも、なんだろう。

 この笑えてきそうな感じ。


 

 その時、実行委員の一人が生徒会室に顔を出して、声をかけてきた。

「会長、副会長。そろそろ準備をお願いします」

「さて、と。小春くんの意識も戻ったことだし、琴音。我々はダイフクロースに着替えるとしようか」

「はい、会長」

(会長……か)

 藍原さんが、早見坂の事を『恭一さん』と呼んだ声が、私の耳に残っている。結構呼び慣れていたようにも感じたけれど、それは私の勘ぐり過ぎなのだろうか。

 やがて2人は、呼びに来た生徒と一緒に生徒会室を出て行くと、それに続くように、陣先輩も生徒会室を出ていった。


「それじゃ中庭に行こうかぁ、小春ちゃん!」

「行きましょう、小春さん!」

 麻莉子と友哉の声が耳に優しい。

 2人を失ったと感じたあの時の辛さを思えば、もうこの2人には何でもしてあげたいと心から思える。そして、何でもできるような気さえしてくる。

「うん、行こう。麻莉子! 友哉!」

 一足先に、2人の楽しげな背中が生徒会室から出ていった。


「桐生、行こう」

「あぁ、行くか」

 生徒会室に残っているのは、これで桐生と私だけになった。

「それと。あんたからは、後でゆっくり話を聞かせて貰うからね」

 桐生が肩をすくめた。

「分かった。小春、お手柔らかに頼むぞ」

「さぁ? そこの保証はできないけどね」

 桐生と顔を見合わせた私はくすっと笑う。

 

 と、中庭から歓声があがりだした。

「どうやら、2人のダイフクロースが登場したようだな」

「そうみたいだね」

 黄色い悲鳴も飛び交っている。ダイフクロースの着ぐるみを着ている生徒が、早見坂と藍原さんである事が明かされたのだろう。

「あの2人に着ぐるみを着せるなんて、小春もたいしたもんだな」

「ふふっ」

 

 なんだか、心の中が急にわくわくしてくる。


「それと桐生。最期にもうひとつだけ聞いておくわ」

「なんだ?」

「あんたとの婚約話って、もちろん映画の中での話だよね?」

「あぁ、そうだな。でも、まぁ俺はどっちでも構わない」

 そう答える桐生に

「どっちでも構わないって。なによ、その適当な受け答えは?」

いつもの調子に戻って、私も軽くくってかかる。

 

 ふと、桐生が。

 桐生が、私をあまりにも優しい瞳で見つめているのに気がついて、急に居心地が悪くなってしまう。

「きっ、桐生? なに? そんなふうに見られたら、調子狂うじゃん」

 

 それから。

 私は、近付いてきた桐生が両腕をそっとまわして抱きしめてくるのを、スローモーションの映像を見ているように眺める事になった。

 動くことも出来ずに、その場で立ちつくす私の目の前には、桐生の肩がある。

 桐生に抱きすくめられた事は何度かあったが、でも、そういう時は、たいてい後ろからの羽交い締めに近い状況だった。こんなふうに正面から優しく桐生に抱きしめられるなんて、今までは無かった……はず。

 それが、いったいどれくらいの時間だったのか。

 短かったのか、長かったのかさえも私には分からない。


「桐生……これは映画の続きなのかな?」

 私が発した言葉は、はたして空気の読めない言葉だったろうか。

 だがしかし、桐生は、私の問い掛けには答えなかった。桐生は、背中にまわした腕をほどくと、今度は静かに私の肩を抱き寄せた。

 次の瞬間、ほんの一瞬だけだったが、自分のおでこに桐生の唇が確かに触れたように感じて、私はめんくらう。

「え……?」

 けれど、私が何かを聞く前に、すでに桐生は私から離れていた。

 そして桐生は、とてもとても穏やかな瞳で私を見つめている。私の気持ちも、こんな事があったにもかかわらず、不思議と穏やかでいる。

 桐生が手を差し伸べてきた。

 桐生の横で、穏やかな気持ちを感じるとか、こうして手を差し伸べられたりとか。

(今までにも同じような経験をした事がある……?)

 奇妙な既視感があった。

 

「行くぞ、小春」

 桐生の声で、私の感覚が一気に現実に引き戻される。

 差し出された桐生の手と、穏やかな桐生の顔を見比べて、私は大きくひとつ息を吸い込んだ。

 これまでのいろいろな情景が、私の中に浮かんでは消えていく。

「行こう、桐生!」

 2人で勢いよく生徒会室を飛び出した。

 



 星杜学園1年 波原小春。

 168㎝……いや、入学してから2㎝伸びたので、ただいま、170㎝の60㎏。

 

 私の楽しい星杜学園生活は、最高の仲間たちとこれからも続いていく!


                           (完)

  

番外編「星杜学園を救う者、その名は波原小春! ~クローン人間は誰だ!?~」完結           続 編「星杜学園1年 波原小春 170㎝64㎏ チョコレート事件勃発!?」ただ今、連載中です^^ 

この小説は、これにて完結です!

これまで読んで下さった方に、本当に感謝の気持ちでいっぱいでいます。小春たちが星杜学園を卒業するまでは書く予定でおりますので、機会がありましたら、またよろしくお願いします。


※番外編 完結しました!

※続編のチョコレート事件勃発!? は、ただ今連載中です!^^


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ