表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/39

終 章  12月(5)

ここから、いよいよ本格的にクライマックスに突入することとなり、この物語の終わりも近付いてきました。

誰が味方で、誰が敵なのか。

何が本当で、何がウソなのか。

是非あなたの目で確かめて下さい!^^

 ピキィィィィィ……ン。

 私の頭のてっぺんからつま先まで、電流のようなものが走った。

 と同時に、私の目の前にいる生徒たちの動きが止まる。虚ろに開かれた目の焦点が、誰もかれも合っていない。目の前で話していた小林からも表情が失せ、何を見ているのか視線の先がわからないまま硬直していた。

(とうとう……!)

 本当に私は、パニックに陥る寸前だった。

 その時、どこからか私の名前を呼ぶ声が頭の中に響いてきて、私は我に返る。


『小春くんっ!!』

 

 その声の持ち主が早見坂だと知った私は、静かに目を閉じる。それから何度か大きく深呼吸を繰り返すと、修業の要領で少しずつ精神を集中させていった。

(中庭――か)

 私は、そう感じ取るや否や、中庭を目指して走り出す。早鐘のように心臓が鼓動し、全身からはじっとりと汗が噴き出す。途中、廊下ですれ違う生徒たちも皆、動きが止まっていて、まるでマネキン人形のようだ。


 私の目に、中庭に立つ数人の影が確認できた。そこには、やはり早見坂がいた。そして藍原さんの姿も見える。2人は他の生徒たちとは違って、少し動いているようにも見えるが、でも何がなんだか分からないという感じで、その場に立ちつくしているようでもあった。


 中庭に飛び込む。

「会長っっっ!!」

 早見坂の視線が私をとらえると、明らかにほっとした表情をみせた。

「あぁ、小春くん!」

 続いて、藍原さんの声。

「波原さんっ!」

 2人に掛け寄ろうとした私は、少し離れた所にたたずんでいる、別の4人の姿をとらえた。


(……え?)


 早見坂や藍原さんに駆け寄ろうとしていた私の足が急に止まる。

 なんと中庭には、早見坂や藍原さんのほかに、林さんと鈴木さん、友哉と麻莉子の4人までもが、生気のない虚ろな眼差しで力なく立っていたのだった。

「なんでっ!? 麻莉子っ!? 友哉っ!?」

 いくら呼び掛けても、反応はない。

「会長、いったい何があったんですっ!?」

 早見坂の方に向き直って問いかける。早見坂を責めるかのように、口調がきつくなるのが自分でも分かった。

「それが私にもよくわからないんだ。今朝、登校してきたところまでは覚えているんだが、気がついた時には……。聞くと、琴音もそうだと言う」

「それじゃこの4人は?」

「わからない。私が気がついた時には、4人とも既にここにいたんだ」


(どうしてこの4人が……)

 

 胸の中に、いいようのない不安がどんどん広がるのを感じる。

「会長。残念ながら、学園の生徒たちはみな、既にこの4人のような状態です」

「とうとう龍底の……龍底の影響が出始めた、ということなのか?」

 だが、そんな早見坂の質問に答えたのは、私ではなかった。


「そろそろ時が満ちるな」

 

 聞き覚えのある声に振り向いた私は、桐生の姿をそこに見つける。


(桐生! 間に合ってくれたんだ!)


 安堵感で、全身から力が抜けそうになった。

「桐生! 今までいったいどこに!?」

 桐生に駆け寄ると、私はその腕を掴む。

「事故にあったって、入院したって……全然連絡もとれないし、ホントに心配してたし……それに、とうとうこんな状況になって、もうどうしていいのか、あたし……」

 言いたい事や聞きたい事が山のようにあった。でも、今はそんな話をしている場合じゃない。

 と。

 次の瞬間、腕を掴んでいた私の手を、桐生はうるさそうにはねのけた。

「え?」

 見上げた桐生の表情が、いつにもまして冷たい。

「桐生……?」

 私が戸惑いを隠せないでいるところへ、早見坂が近付いてくる。

「誠也、せめて連絡の1本くらい寄越せ。この大事な時に、どれだけ心配してたと思うんだ」

 早見坂も、桐生の登場で心強くなったのだろう。いつもの強気が多少、戻ったように思えた。

 だが、そんな早見坂の言葉を聞いた桐生が、一瞬鼻で笑う。

「心配だって?」

 桐生の低い声が、不気味に響いた。

(桐生?)

「連絡? なぜ俺が、おまえなんかに?」

 そのあまりにも冷たい声に、ぞっとなる。薄く含み笑いをした桐生が、言葉を続ける。

「恭一、ひとつ、良い事を教えてやろう」

 桐生の目に怪しい光が宿るのが見えた。

「早見坂家では知らなかったようだがな。クローン人間の生成実験なんて、とっくの昔に完成してたんだよ!」

「なんだって!!?」

 早見坂の顔は蒼白だった。


(あぁ。桐生は……結局は桐生家の人間ってことなんだ)

 

 驚愕した早見坂が、憔悴していくのが、はたで見ていてもはっきりと分かった。

「誠也、それは本当の事なのか? 本当なら、なぜ今まで黙っていた? おまえは私を騙していたのか!?」

「そうだな。騙すつもりはなかったが、隠していた事にはなるのかな」

 そう言って桐生がくっくっと笑う。

「そういうわけで、恭一。クローン人間の生成実験阻止なんて考えはまったくもって無駄だぞ。ついでに言うと、クローン人間は既に学園内に存在している」

 桐生の言葉を聞いた早見坂の顔が、今度は怒りで次第に赤くなっていく。

「すでに……学園内にクローン人間だと!? そんな重要なことをおまえは……」

「すまんが、俺は、桐生家の人間なんでね」

「そんな事、分かってる。おまえが桐生家の人間だって事は、最初から承知の上だ。承知の上で、私はここまでおまえと一緒にきたつもりだった」

「ほんと、おめでたいヤツだよ」


(違う! あの時の桐生は!)

 私は、反射的に叫んでいた。

「ウソだ! 桐生は、そんな人間じゃない! 桐生はあの時、確かに私に言った。自分は桐生家の人間だけど、クローン人間に関しては、会長と同じ考え方だと思って構わないって!」

 瞬間桐生の顔が揺らいだようにも見えたが、すぐに元の冷たい表情に戻る。

「波原。この世の中では、その時々に応じて真実なんて変わるんだよ」

 桐生が、吐き捨てるように言う。


(そんな! 変わる真実だなんて!)

 

 少し冷静さを取り戻したように見える早見坂が、静かに口を開く。

「誠也、教えてくれ。おまえはクローン人間がこの学園内にいる事を、いつ頃から知っていたんだ?」

「恭一が、テストで首位を明け渡した時だよ」

 早見坂が、その事実をようやく受け留めたようだった。

「それじゃまさか、クローン人間っていうのは……」

 

 やっと気付いたのかとでもいうように、桐生が目の奥で嘲笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ