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第7章  10月(2) 

そろそろアヤシイ人物が登場し始めます^^

小春は、どうなっていくのでしょうか?

☆☆☆

 星杜学園は、その日――12月24日に向かって進んでいる。

 最近は、麻莉子どころか友哉の様子もどこかおかしくて、一緒にいても、気持ちココにあらずという感が丸出しなのだ。本人たちに聞いたところで、ろくな返答も返ってこないし、これはこのまま仲良し3人組も解散なのかなぁなどと思ったりして、そう思う事が意外と寂しいと思っている自分を発見する。


(小林も麻莉子も友哉も)


「なんだかなぁ。私の周りから一人ずつ大事な人たちがいなくなっちゃうって感じ」

 私はそんなことをつぶやきながら、今も生徒会室へ向かっている途中だ。今日は大事な話があるからと、早見坂から直々に言い渡されている。

 大事な話。そう、その時はもう近いのだ。


「波原小春、入りまーす」

 そういって生徒会室の扉を開ける。いつものように、私以外の3人は揃っていた。

「波原さん、お疲れさま」

 一番に優しい声を掛けてくれたのは藍原さんだ。

「小春くん。申し訳ないが、少し前から話し合いを始めているんだ。話が見えない部分もあるかとは思うが、とりあえず一緒に聞いていてくれ」

 早見坂も私に声をかける。残る桐生は、といえば……

(なに? あのなんともいえない優しげな表情は!?)

 自分が桐生のフィアンセ(表面上だけ)である事を思い出し、気持ちが一気に滅入る。鋭いはずの桐生が、なぜに私の気持ちを察する事ができないのかが、大いに疑問の残るところだ。

「わかりました」

 私は早見坂に返事をする。どんな大事な話し合いをしているのだろう。早見坂が話し合いの続きに戻る。

「そういうわけで、100周年創立記念前夜祭に向けての実行委員会もすでに発足し、動き始めている」

(同時に、龍底出現対策委員会も発足させるというわけね)

「おおまかなプログラム内容も既に検討されているが、私がみるところ、今ひとつメインイベントの盛り上がりに欠けるように思われる。そこで、諸君にメインイベントについての案をここで出して貰いたい」

「メイン……イベント?」

 続いて、桐生の発言。

「確かになぁ。11月の体育大会は学園側主催で盛り上がるわけだから、生徒会主催の創立記念前夜祭は、その上をいく必要があるだろうしな」

「その上をいく必要がある、とかって……」

 しかも藍原さんまでもが。

「そうよね。学園祭に続く大きな行事ですもの、私もがんばらなくっちゃね」

(今日って、そういう話し合いなんですか???)

 私のこの気合いの入り具合は、どこにやったらいいのでしょうか?

(この大事な時期に、そんな話で盛り上がっている場合?)

 とは言え、龍底やらクローン人間やらなんて話は、一般の学園生にとってはあずかり知らぬ事、創立記念前夜祭を盛り上げようと考えている生徒の方が一般的なのだろう。なんたって、創立記念前夜祭は、恋人たちが盛り上がるクリスマスイブだし。

(そう言うことなら、波原小春も一肌脱がさせて頂きます!)


 話し合いの場は、なかなかいい案も浮かばないまま時間だけが過ぎていく。

 なぜ、早見坂は私に意見を求めてくれないのか。

「あのぅ」

 思い切って自分から発言する。

「あぁ、小春くん。まだ話の見えない部分があるかな」

「はいっ?」


(いったい私の事、どんだけ理解力が低いと思ってるんですか!?)


「あの、そうじゃなくって、メインイベントに関して、ちょっと考えがあるんですが」

「そうか、それは失礼した。小春くん、続けてくれ」

「はい、では」

 その場で思いついた事ではあったが、3人に自分の案を披露する。自分の発想の豊かさを自分で褒めたいぐらいだ。そしてそんな私の提案を、真っ先に褒めて、押してくれたのは、珍しい事に桐生だった。

「うん、確かにそれは斬新なアイディアだ。なかなかに面白い。学園の生徒たちも大いに喜ぶことだろう。小春にしては上出来だ」

 そう言った桐生は、大いに乗る気を見せているが、逆に残る二人の表情は硬い。特に藍原さんなんて泣きそうな表情にも見える。

(やっぱり藍原さんには酷だったかも)

 そんな2人を横目に、桐生は嬉々として話を進めていく。

「いや、ここは小春の案で進めるべきだろう。いいじゃないか、『ダイフクロース』!」

 私の案は、大福をかたどった着ぐるみの『ダイフクロース』を制作し、大きなプレゼント袋を背負ったサンタクロースならぬダイフクロースが、学園生にプレゼントを渡すというものだった。

 ダイフクロースのプレゼント袋の中身は、もちろん和菓子の大福餅で、その着ぐるみを被って大福を生徒たちに配るという大役を果たすのは、学園中探しても早見坂と藍原さんをおいて他にはいないだろう。

 いや、別に桐生と私でも構わないんだけど、ここから先を考えると、それではあまり意味がなさそうだ。

「そして、生徒たちに配る大福餅の中には、当たりの大福を二つ入れておきます。それで、当たり大福を貰った生徒は、早見坂と藍原さんが着たダイフクロースの着ぐるみを、景品として貰えるというオマケをつけるんです」

 私は、そう説明した。

 もうオマケというよりは、メインになるかもしれない勢いではあるだろう。学園で大人気キャラの大福の着ぐるみと、学園の人気者二人が着た着ぐるみ。

 これで盛り上がらなかったらウソというものだ。

 

 早見坂も藍原さんも賢い人なので、私の提案がどれほどの効果をもたらすかを、瞬時に理解したようだった。が、さすがに自分が着ぐるみを被るとなると抵抗があるらしい。

 人生の中で、早見坂や藍原さんが着ぐるみを被るなんてことは、もう二度とないんだろうし、一生に一度くらい、着ぐるみを被ったってバチは当たらないんじゃなかろうかと、私は秘かに思う。

 ところが、恨めしそうな目の藍原さんは私に言った。

「波原さん……。着ぐるみを被らされた上にバチまで当てられたら、私、たまらないわ。バチが当たるじゃなくて、幸いが訪れるくらいは言って欲しいんだけど」

(何も言ってないのに……)

 

 桐生の強い押しもあり、私の『ダイフクロース案』は、めでたく採用される運びとなった。

 その後は、浮かない表情の早見坂が、話題を変える。

「それじゃ次は、いよいよ本題だな。まずは誠也の話から聞くことにする」

(今までの話は前座で、いよいよこれからが重要な話し合いってことね)

 私は身を引き締める。少し面白そうにしていた桐生の表情も、ぐっと引き締まった。

(イベントの話だけで終わるはずなかったか)

「ここのところ、学園内を流れる気の具合が歪んでいるように思われる。それがいつ頃からなのかは明確には分からないんだが」

 そういえば、小林も、この学園全体で何かが動き始めているように感じると言っていた。

 桐生が、早見坂の話を継ぐ。

「だが不思議なのは、これから何かが起こる前触れにしては、気の歪みが不安定なんだ。あ、いや。歪みが不安定という表現もおかしいが、普通に考えれば、龍底が出現するその時に向かってどんどん気が増していくもんじゃないかと思うんだが、今のところはそういうわけでもない」

(歪みが、不安定……?) 

「今までと同じように気が流れていると感じる日もあれば、ひどく淀んでいると感じる日もある。気持ちの悪い感覚がぬぐえずに、龍底はよくない力じゃないかと感じてしまうこともある」

 桐生の言葉を聞いても、あまりピンとこない自分が情けなかった。

「小春、おまえも何かを感じてはいないか?」

「えっと……あの、私は言われるまではそれほど……でも、いつぐらいから変な感じに?」

 そんな私の問いかけに答えたのは、早見坂だった。

「多分あの時からだろう……な」

 残念ながら私にはピンと来ない。

「あの時?」

「そうだ。小春くんは、私が前期期末テストで首位から陥落したのは覚えているだろうか?」

「えっ、あ、はい」

「前回いきなり首位をとった陣聡介という生徒の素性を調べてみたんだが、どうもよくわからない」

 藍原さんも。

「それにね、その生徒が発布した星型に歩こうっていうのも、私、どうにも胸騒ぎがしてしょうがなかったのよね。だってここの土地って、龍脈や龍穴などと関係の深い場所でもあるわけでしょう? それを考えると、星型って五芒星を連想させるじゃないの」

 五芒星というものが何なのか良く分らない私に対して、藍原さんの言葉を聞いた桐生は明らかに動揺を示しているようだった。

「……五芒星! まさか……そうだったのか」

 桐生が何を思ったのかは、残念ながらその時の私には想像もつかなかった。


 私は、自分の記憶の中から、陣に関する事を引っ張り出す。

「そういえば、私のクラスメイトの麻莉子が、陣っていう生徒は、どこにでもいるような雰囲気で、ぱっとしない感じだって言ってた事がありました」

 突然、普段冷静沈着な桐生が大声をあげる。

「なんだって!? 久遠は、陣を探っているのか!?」

 驚いて桐生の顔を凝視ししてしまった。

「えっ? いや、探ってるっていうか……その、麻莉子は情報通の部分があるから、学園で始めての出来事なんで興味を持ったんだと思う。でも、そういえばスクープの匂いがするとかなんとかって言ってた、カンが囁いてるとかって」

 そんな私の返事を聞いていた桐生の様子がおかしいと思ったのは、間違いだろうか?

 早見坂が言う。

「とにかく陣聡介は不審人物だと思わざるを得ない。こらから学園内に起こる事件に、何らかの関わりを持つ人間のような気がする。あるいは、キーパーソン……なのかもしれないな」

 でも、そう聞いた時点で、私の中ではある思いが湧いてきていた。


(もしかすると、陣聡介はクローン人間なのかも……)


 クローン人間が動き始めているという不安が、現実の事としてドッと私の身に押し寄せてくる。早見坂や藍原さんは、クローン人間の生成実験が成功している事を知らないのだ。沈黙を守る桐生が不気味に思えた。


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