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10/10

クソニートと呼ばれた俺は、最後にひとつだけ選ぶ

※本作はカクヨムにも投稿しています。


 最終話です。

 最後までお付き合いください。

 あの後のことは、正直どうでもよかった。


 父と母は、この街からいなくなったらしい。


 借金を抱えて、夜逃げ。


 誰にも何も言わずに。


 唯一を置いて。


 最後まで、自分たちのことしか考えていなかった。


 ……クズだな。


 そう思った。


 もう、それだけだった。


 そして、夕暮れの公園。


 目の前には、唯一がいる。


「……ごめんなさい」


 小さな声だった。


「今まで……本当に、ごめんなさい」


 顔を上げない。


 涙が、床に落ちる。


「私……とんでもないこと……」


 言葉が続かない。


 震えている。


 声も、体も。


 全部。


 それを見て。


 少しだけ、考える。


 そして。


「……行くところ、あるのか」


 短く聞いた。


 唯一が、ゆっくり首を振る。


「あるわけ、ないじゃん……」


 泣きながら。


 それでも、どこか笑っている。


「……因果応報って、こういうことなんだね」


 ぐちゃぐちゃの顔で。


 それでも、無理やり笑う。


 その姿を見て。


 胸の奥が、少しだけ痛んだ。


「……」


 沈黙。


 少しだけ、息を吐く。


「……俺も」


 言葉を選ぶ。


「引きこもってたのは事実だし」


「……嫌な思い、させたと思う」


 それは、言い訳じゃない。


 ただの事実だ。


「……でも」


 一拍置く。


「だからって、あれはないだろ」


 はっきりと言う。


 唯一の肩が、びくっと震える。


「……っ、ごめん……」


 もう一度、涙が溢れる。


 今度は、さっきよりも強く。


 止まらない。


「……最低だよ、私……」


「分かってるならいい」


 短く言う。


 それ以上は、責めない。


 責めても、意味がない。


 もう、終わったことだから。


「……」


 しばらく、何も言わなかった。


 ただ。


 泣き声だけが、そこにあった。


 そして。


「……学費くらいは出す」


 ぽつりと、言う。


「え……?」


 唯一が顔を上げる。


「……高校、続けたいんだろ」


「……なんで」


 理解できない、という顔だった。


「なんで……そんなこと……」


 声が震える。


「私、あんなに……」


「関係ない」


 言葉を遮る。


「それとこれとは別だ」


 それだけ言って。


 視線を逸らす。


 少しだけ、照れくさい。


 すると。


「……お兄ちゃん……」


 小さく、呼ばれた。


 その一言で。


 時間が止まる。


「……」


 ゆっくりと、そっちを見る。


「……初めてだな」


 ぽつりと、言う。


「ちゃんと呼ばれたの」


 唯一が、泣きながら笑う。


「……うん……」


 そして。


 堪えきれずに、飛びついてきた。


「うわあああああん……!」


 泣き声が、響く。


「……」


 少しだけ、戸惑う。


 でも。


 振り払うことはしなかった。


 ゆっくりと。


 その背中に、手を回す。


 ぎこちなく。


 それでも、確かに。


 抱き返した。


 全部が、許されたわけじゃない。


 全部が、元に戻ったわけでもない。


 それでも。


 ひとつだけ、確かなことがある。


 ――これからは、少しだけ違う。


 俺は、ひとり出版社へ戻るため歩いていた。


 その少し先で。


 誰かが、こっちを見ていた。


 長い黒髪。


 落ち着いた雰囲気。


 そして――


「……年上の女は、嫌い?」


 上目遣いで、こちらを見る。


「……っ!?」


 思考が止まる。


 顔が、一気に熱くなる。


 距離が近い。


 近すぎる。


「……だ、大丈夫か!?」


 後ろから、編集長の声。


 気づけば、ふらついていた。


「……すみません……」


 かろうじて答える。


 周囲がざわつく。


 その中で。


「……ふふ」


 桃花だけが、小さく笑っていた。


---


 どうやら。


 俺の平穏は、まだ先らしい。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。


 ここまでお付き合いいただけたこと、とても嬉しく思います。


 少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。


 面白いと思っていただけたら、ブックマークや評価をしていただけると励みになります。


 また別の作品でもお会いできたら嬉しいです

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