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【短編小説】燃やせ!!

掲載日:2025/12/22

 缶ビールがぬるくなり、ピザが乾いてきたら飲み会もそろそろ終わりだ。

 暖房の風がうっとうしい。

 おれは食べ残したピザの耳をもてあそびながら、リュータに反論した。

「でもさ、いくらAVが繰り返し見られるからってさ、それは結局、他人のセックスを見てる訳じゃん」

 この耳は何味のピザについていたっけ?

 なんでもいいか。


「風俗なんてさ、疑似恋愛って意味では二次元と変わらないだろ。おまけに時間制限があるぜ。だったらビデオ一択だろ」

 空気清浄器があくびをして会話を終わらせる。どうだっていい、セックスなんて興味ないって顔をした男たちは半目で次の話題を探す。

 リョーマがスマホをいじり、リュータローがちんぽをいじる。


 おれたちは繁殖をしていない反社会的生物なのだから、少しくらい夢を見ても良いのだろうけれど、中年の見る甘い夢なんてのは犬も食わない。

 終わりつつあるおれたちが見てゆるされるのは、同じようにどうやって甘く終わるかと言う夢だけだ。

 それくらいなら、なんとか食ってもらえる。


 途切れた会話を繋げるべく、おれは仕方なしにオタクに優しいギャルを呼び出した。

 呼び出したと言っても実在はしない。

 そもそも存在とはなにかって話になると疲れるのでやめよう。

 とにかく、オタクに優しいギャル女子高生曰く、紐パン恢々ズレても見えずだそうだ。

 何のことだ?俺にはワカらん。

 日サロで飴色に焼いた肌と少し痛んだ金髪。タレ目気味なメイク。

 おれたちに優しいギャルは制服の中で変態していく。


 タルパですら変態するのに、おれたちと来たらあいかわらずだ。

 かつて少女だった存在は親に買ってもらったプリンセス衣装のなかで変態を繰り返してギャル女子高生に進化した。

 ギャル女子高生は制服を着た存在であり、外型が重要なのであって中身がどうかと言うのは問われない。

 だからおれは、オタクに優しいことにした。そんなの、今どきはインターネットでも絶滅危惧種だ。


 

「女子高生は建築物に似ている」

 おれがそう言ったところでギャル女子高生は引いたりしない。それどころか話を合わせてくる。

「建築物が問われるのは箱の外側とかのデザイン性であってさぁ、中身の機能性じゃないってことっしょ?」

「その通りだ。

 建築物がル・コルビジュエ風だろうとライド・ライト風だろうとセイイチ・シライ風だろうと、アルミサッシを使っている時点でどうしようも無く不出来なんだよ」

 会話が弾む。

 当たり前だが、これはおれのギャル女子高生だ。つまりおれ自身に他ならない。


「暑くなってきたね」

 おれに優しいギャル女子高生は首のリボンを残したままブラウスを脱いだ。

 おれは酔いのせいで曖昧な怒張を自覚しながら続ける。

「我々は自然光と共に熱を遮るべく、上等な遮光遮熱カーテンを窓に下げる。

 労働が持つ最初の意味とは来るべく夏に備えてそれを買う事にある」

「じゃあ窓なんてなけりゃよくね?」

「それもそうだ」

 



 おれたちは飲み会を抜け出してラブホテルに向かう。

 お城のような建築はだれがやったのか?

 窓のないラブホテル!

 出来る限りの光と熱を排除したい、と言うのが生活者の願いは叶えられた!

「したらここに住めば良くね」

 ギャル女子高生はリボンとスカートを残してまだ女子高生であった。


 女子高生を女子高生たらしめるのは何か?

 リボン、ブラウス、スカート、ソックス、ローファー。

 そこからブラウスが取り除かれてもまだ女子高生は女子高生だ。

 ラブホテルから窓が無くなっても、それはまだ部屋であるように。

 女子高生がおれに訊く。

「女から穴が無くなっても女?」

 おれは女子高生に答える。

「そこまでは考えてなかったな」

 女子高生は気の利かない答えに笑って消えた。


 窓のない部屋でおれはAVを観る。

 ヘルスが届けられるまでの間を埋める。

 窓のない部屋で想像力を失ったおれが現実的な肉体として勃起する。

 その熱はラブホテルの各部屋から飛び出し、ラブホテルを埋め尽くすとやがて街から広がり世界を埋め尽くす。

 つまり我々に出来ることは東京ドームサイズの除湿剤を置いたり、樹脂サッシを法律で義務化したりする事だ。


「または厭な教師だとか同僚の家にベンタブラックで装飾を施してやる程度だね」

 デリバリーされたヘルスウーマンが言う。

 それは現実か?

 胡蝶の夢か?

 おれの環世界に存在するとして、外からみたら実在しないのでは?


 前置きが長くなったが、つまりおれはとっくに狂っていると言う話をしたいのだ。

 おれは狂い水なのだ。

 どこまでも狂った水だ。

 もし自分がまともな水だと思っているのなら、自分の中を流れる音を聞いてみて欲しい。



 ほら、狂っているだろう?


 助けてくれ、と言う射精の音がして夢は終わった。

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