第8話「私のにゃんこちゃん」
放課後、吹奏楽部の手伝いを終えた未碧は、自分の部屋に戻り、制服のまま電子ピアノの前に座った。
何気なく開いたSNSのおすすめ欄に、茜色の屋上で踊る二人の動画が現れる。
画面には「この空、すごく好き」というコメントがついていて、未碧は静かにスマホを握りしめた。
「私も仲間に入りたいな」
指先が画面を滑り、コメントを送る。
飼い猫の「にゃんこちゃん」が、そっと前足を伸ばして未碧の手に触れた。
未碧は思わず笑みをこぼし、「にゃんこちゃん」の顔を見てささやく。
「……言っちゃったね、私」
一方、屋上ではそらと雫、そして照がスマホの画面を覗き込んでいた。
「『私も仲間に入りたいな』って……誰だろう?」
そらが呟くと、雫がコメント主のアカウント「MIAO」を開く。
猫のアイコンがかわいらしい。
固定投稿のピアノ弾き語り動画が目に入る。
流れる澄んだ歌声とピアノの旋律に、照が笑いながら
「猫が好きって気持ちだけで一曲……やばいな」
と言う。
そらも頷きながら、
「でも、すごく……伝わってくるね」
と呟いた。
そのとき、雫の視線は動画に映り込んだ後ろ姿に釘付けになる。
小柄な肩幅に、揺れるツインテール。
どこかで見た気がして、心がざわつく。
「歌うだけじゃなくて、感情表現や空気の作り方まで……なんか、舞台慣れしてるみたい」
そらが驚いて
「え、そうなの?」
と訊くが、雫は目を離さずに黙っていた。
もしかすると……
夕焼けに染まる屋上の空が、静かに三人を照らしていた。
※YouTubeチャンネル「@AozoraDrop」で劇中歌を公開していますので是非お聴き下さい♪
【劇中歌プレイリスト】
https://youtube.com/playlist?list=PLXQVDdlnX86cDoXjk4TfuBJ8d58lJ8Baj
「ツインテールと猫の日 / Miao Asahi」
朝の日差し 窓から差し込んで
まだ眠たげな私 キミを見つめて
髪をゆるく下ろしたままで
キミと一緒にベッドの上で
そろそろ動き出す準備
髪をまとめて ツインテールにするの
お気に入りの髪飾りをつけて
今日も一緒に過ごそうね
ツインテール揺れてキミと笑う
私のにゃんこちゃん
ちょっと気まぐれな私だけど
猫みたいに自由に生きてる
おうちの中は 私たちの世界
窓辺でのんびり ひなたぼっこ
おやつの時間 まだかなって思う
キミと一緒に過ごすひととき
心が弾む幸せの瞬間
ソファの上で遊んでると
ふたりの時間が流れてく
キミのぬくもりに包まれて
気持ちまであったかい
ツインテール揺れてキミと笑う
私のにゃんこちゃん
ちょっと気まぐれな私だけど
猫みたいに自由に生きてる
おうちの中は 私たちの世界
夕暮れ映る窓の向こう
今日も一緒に過ごしてた
毎日キミがそばにいて
それだけで幸せ
ツインテール揺れてキミと笑う
私のにゃんこちゃん
ちょっと気まぐれな私だけど
猫みたいに自由に生きてる
明日もまた一緒にいようね
二人だけの世界