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放課後スカイステージ ~伝説は、この屋上から生まれた~  作者: 右上梓
第二章 やり残した宿題より、大切なもの。
37/53

第6話「最初の喝采とキツネ様降臨」

※YouTubeチャンネル「@AozoraDrop」で劇中歌を公開していますので是非お聴き下さい♪

【劇中歌プレイリスト】

https://youtube.com/playlist?list=PLXQVDdlnX86cDoXjk4TfuBJ8d58lJ8Baj

ステージの上。

3人の視線がふと重なり、呼吸がひとつに溶け合った瞬間——


静かに転調し、その音は未来を示すように一段上の光を帯びる。


雫が一歩、前へ。

そらと月音もそれに続き、立ち位置をわずかに変えて肩を並べた。


Aozora Drop to the endless sky!


その言葉とともに、澄んだ高音が空間を満たす。

今までの軌跡をすべて抱きしめ、なおその先へ手を伸ばそうとするかのような、切なくも力強い声。


照明が静かに広がり、ステージ全体を柔らかな光で包み込む。


――未来へと


その一節だけを残して、曲は音を止めた。


ジャジャン、と短く響いた終わりの音は、まるで話の句読点のように控えめだったが、その直後、静寂が生まれる。


一瞬の間。

そのあまりの透明さに、観客の誰もが息を呑んだ。


そして——


「うおおおおおっ……!」


会場を包むような拍手と歓声が、ステージに押し寄せた。

最初の頃の冷めた空気が、信じられないほど熱を帯びていた。


彼女たちの歌は、間違いなく“届いた”のだ。


(……伝わってる。きっと、少しずつだけど)


雫がそう思った瞬間、ふと客席の最前列に目が留まった。


さっきまで一歩引いたように見ていた女の子が、スマホをそっとしまい、まっすぐこちらを見ていた。


その表情には、最初に見せていた戸惑いはなく、むしろ――少しだけ、憧れのような光が宿っていた。


「ありがとうございまし……た!」


そらが震える声でそう言うと、3人は頭を下げて、ステージをあとにする。


袖に戻ったその瞬間、月音がそっと一歩を踏み出した。


「……じゃあ、いってくる」


「あまつぶ、ね」


「うん」


未碧がそっと背中を押し、照が小さく頷いた。


ステージに、再びピンスポットが落ちる。


月音のソロ、『あまつぶの小径』。


照明が変わり、音楽室で聴いた優しいピアノのイントロとは似ても似つかぬ、重厚なバンドサウンドが会場を揺らし始めた。ドラムの力強いビートとベースの重低音が床を震わせ、歪んだギターが空気を切り裂く。


その上に、シンセサイザーの高速シーケンスフレーズが鋭く響き渡り、耳をつんざくようなエネルギーを放っている。


部員(仮)たちは思わず顔を見合わせ、唖然とした表情を隠せなかった。


袖で見守る黒瀬照の視線は、客席後方で腕を組み、ニヤリと笑う東雲先生に釘付けだった。


その不敵な笑みを見て、内心で思わず突っ込む。


「……やりやがったな、先生……」


不敬だとわかりつつも、どうしてもそう思わずにいられなかった。


客席もざわめいている。予想外のサウンドに戸惑う空気があったが、そのざわめきはすぐに興奮へと変わっていった。


だが、ステージの中央で歌う伏見月音の目は、誰よりも真っ直ぐに前を見据えていた。

肌を刺すスポットライトの熱さが、彼女の内側に眠っていた“魂”をたたき起こす。

……それはずっと心の奥に仕舞い込んでいた、もう一人の自分。

“静けさ”の裏にひそんでいた“叫び”――それが、いま目を覚ました。


ブリッジミュートを効かせて刻む歪んだギターのリフに乗せ、彼女の歌声が会場を支配する。


歌うというより、叫ぶようだった。

紡がれる言葉は、詩ではなく刃。

痛みを知る者だけが持つ、誰かの心を救うための武器。

その声に、誰もが息を呑んだ。


まるで何かに憑かれたかのような圧倒的な存在感。声は切れ味鋭く、強烈なビートを纏いながらも、時に優しく、聴く者の魂を揺さぶる。


驚きに見開かれた瞳。

思わず息を飲む音。

誰かが拳を突き上げた。

それが引き金となり、客席は一つの塊のようにうねり始める。


照はステージ袖からそれを見て、心の中で静かに感嘆した。


「控えめに言って、最高じゃん……」


かつて、ひとりきりで言葉を紡いでいた少女が、今は多くの視線を一身に受けて――


不器用で、まだ未完成かもしれない彼女たちの“今”が、この瞬間、確かに「届いた」——そんな確信が、照の胸に強く刻まれた。

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