第11話「春風の余韻」
ゴールデンウィークの連休明け、校舎にはまだ少しだけのんびりした空気が残っていた。
メンバーたちが集まる放課後の音楽室は、グランドピアノの閉じた屋根が静かに光を反射している。
みゃお先輩はピアノのそばで椅子に深く腰掛け、ふわりとした笑みを浮かべていた。
「連休、どうだった?」と柔らかく尋ねる先輩に、照は肩をすくめながら、
「特に遠出はしなかったな。地元から離れてるから、友達もあんまりいないし」と答えた。
「そっか……」みゃお先輩は少し考えるように目を伏せ、
「でも、みんなが集まってると安心するね」と言った。
そのとき、静かに扉が開き、そらが顔をのぞかせた。
制服の袖を軽くまくり、髪を後ろでひとつに結んでいる。おずおずと中に入り、鞄を音を立てないようにそっと置いた。
「ここに来れば、みんながいる気がして……」
みゃお先輩と照は顔を見合わせ、ふっと微笑む。
一方、翠谷雫はじっと窓の外の空を見つめていた。
人と違うことをしている方が楽だと自分に言い聞かせるけれど、時折わずかな孤独が胸を締めつける。
(私って……ほんとうは、どうしたいんだろう)
誰かに理解されたいけど、同時に変わっている自分を守りたい。そんな葛藤が静かに波のように押し寄せる。
「ねえ、曲作り、やってみない?」みゃお先輩の言葉がふと音楽室に響いた。
それは軽やかで、でも確かな決意の一言だった。
雫はその言葉を聞いて、胸の中で何かがふっとほころぶのを感じた。
これから、何かが少しずつ動き出す——そんな予感を帯びていた。




