初恋の人と結婚2
私の初恋は14歳のとき、
ー夏休みだったので、いつも通り領民と畑仕事をしていた。
隣の領地ではなかなか作物が育たないということで、『調査させてください』と言われ、
隣の領地の貴族が旅行もかねて来たらしい。
そこで、私の婚約者でもあり、
初恋の人である、桜庭恭平様と出会った。
恭平様は、私と同い年でまだ子供なのに、
ご両親と一緒に畑の調査をしに来た。
私はそのときも着飾ってなく、
髪もショートカットでボーイッシュだったので、
同じ貴族なのに恥ずかしくなってしまい、
領民のフリをして対応した。
私の住んでいる領地には、
あまり子供がいないので、私に話しかけやすかったようで、作物のことを色々聞かれて話した。
周りの大人たちは優しかったが、
歳が近い貴族の子供たちとは話が合わず、
領地になかなか歳が近い子供がいなかった私にとっては、すごく楽しい時間だった。
趣味である料理の話をしたときも、
今まで他の貴族からは『使用人がすることをしているの?』という反応しかされなかった。
しかし恭平様は、
「君は料理もできるのか、すごいな。
君と結婚できる人が羨ましいよ」なんて微笑みながら言ってくれた。
おそらく彼にとっても楽しかった…はず。
本音かわからないけど、
「君と話していると、すぐ時間が過ぎてしまうよ」と何度も言ってくれた。
ただ、数週間が過ぎ、
恭平様は帰ることになった。
「今更だけど、君の名前を聞かせて」
そう聞かれた私は今更貴族だと答えられず、
「優美です。」
と自分の名前を逆にして答えた。
「そうか。優美、また来年会おう」
そう言って恭平様と別れた。
ーただ翌年恭平様は来なかった。