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第76話 生クリームとバター

こちらはカクヨムに掲載された修正版です。

原文ともによろしくおねがいします(*^^*)

「「「ぜえぜえ、はぁはぁ、ひぃひぃ……」」」


 さんざん牛ヤギの乳を振らされまくったルルたち(と弥生)。

 全員息を切らし、汗だくになってひっくり返ってしまっている。


「お疲れ様でした。これだけあれば一先ひとまず大丈夫でしょう」


 出来た生クリームをホクホク顔で集めている彭侯ほうこう

 傍らでは野菜が鍋の中でクツクツと茹でられていた。


「……それ、なに作ってんの?」

「これですか? スープですよ。 せっかくですから生クリームを使った基本的な料理を召し上がっていただこうと思いまして」

「え~~~~……生クリームって言うから……私てっきりケーキが食べられると思ってたのに……」

「アレには小麦粉と砂糖とバニラエッセンスが足りません。いずれ手に入れることもできるでしょうから、それまでお待ち下さい」

「うううぅ…………コンビニが……コンビニが恋すぃい~~……っ」


 欲しい時に欲しい物が欲しいだけ手に入った夢のような時代。

 そんな桃源郷を経験してしまった弥生はすっかり我慢弱くなってしまっている。


「まあ、これも丹精込めて作らせていただきますから……」


 そうこうしているうちに茹で上がった野菜たち。

 水1リットルに薄切りにされた玉ねぎ一個分、乱切りにんじん二本分。


「ここへ5ミリ程度に切ったベーコン200グラムと、しめじ二株ぶんをほぐして投入します。さらに別鍋で小松菜(1束)も軽く茹でておきます」


 ヘロヘロ、ヨロヨロになりながらも必死にレシピをメモするルルたち。

 覗いてみた弥生だが、字より絵のほうが多くてぐちゃぐちゃしていた。


「火が通ったら、塩を大さじ1。そして生クリームを200cc入れます」

「「おおぉ~~~~~~~~~~っ!!」」「にゃん」


 生クリームを入れた途端、一気に汁が白くなり、まろやかな香りが部屋に立ちこめた。


「器によそって、最後に小松菜をのせたら――はい『ベーコンとキノコのクリームスープ』完成です」


 木の器で湯気を上げるそれはまさしく冬の洋食。

 素朴な、だけどもちょっぴり贅沢な、おうちご飯の香りがした。






「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 さっそくスープを一口飲んでみた弥生。

 大きなため息と同時にちっちゃな『ぁ』が止まらなくなってしまった。


「大丈夫ですか弥生様、壊れましたか?」

「あう、壊れた」


 若干のヨダレをたらしつつ、否定しない弥生。


 なんだろうこの安心あんしん感。

 なんだろうこの安堵あんど感。

 なんだろうこの安静あんせい感。


 語らずともスープが『おかえり』と言ってくれているよう。

 全身の力か抜け、緊張などしていなかったつもりだが、緊張が抜けていく。

 喉を通りつつ『もう何もしなくていいのよ~~』と、疲れまでも癒やしてくれるようだ。


「あふあふあふあふにゃぁ~~~~~~~~……ん」


 それはルルたちも同じようで、弥生と一緒に半ヨダレ状態でアホになっている。


「にゃにゃにゃ……にゃんにゃのですきゃ? このスープは!? こんな美味しいものウチ食べたことにゃいですにゃぁっ!??」


 目を真っ黒に、ごろごろごろごろ喉を鳴らして感動するルル。

 そりゃ猫だもの。ミルク料理は大好物に違いない。


「料理は手間ひまをかければかけるほど美味しくなります。クリーム作りは大変ですが、このようなスープを作れると思えば苦にならないでしょう?」

「もちろんにゃ、ウチもっともっと頑張って生クリーム作りまくるにゃあっ!!」

「あ、でしたらこちらをお願いします」


 もう一度、瓶を振ろうとしているルルに乳とはちがう瓶を渡す彭侯。

 それは出来たばかりの生クリームを詰め直した瓶だった。


「え? これはもう出来上がったものですにゃ?? 彭侯先生もアホになってしまったのかにゃ?」

「誰がアホですか。これはバターを作ってもらおうと思って渡したのです」

「バター、にゃ?」


 そういえば最初にそんなものも作ると言っていた。

 しかしバターとはなんだろう?

 首を傾げていると、


「バターとはアレよ、パンとかに塗って食べるやつよ。油の塊みたいな」


 またしても雑な解説をする弥生。

 胡散臭い目で彭侯を見上げるとやっぱり微妙に困った顔をしていた。


「まぁ……説明するより実際に作ってもらいましょう。ルルさん、この瓶を先程と同じく振り続けてみてください」

「こうにゃ?」


 ルルは生クリーム作りと全く同じように振り、踊り続けた。


 ――――そして5分後。


「ぜぃぜぃ……にゃあ……ありゃ!? にゃんかクリームの中から変な塊が出てきたにゃ?? ……もしかしてこれって??」

「はい、もういいですよ。 その通り、それが生クリームの脂肪分をさらに凝縮して出来た塊、すなわち『バター』です」


 さらっと解説してくれる彭侯。

 弥生は目を点にして、


「脂肪分をさらに凝縮してって……。え? もしかして生クリームとバターってそれだけの違いしかないの??」

「はい。乳脂肪分量、実はそれだけの違いしかありません」

「し…………知らなかった…………」


 意外な事実。

 ルルのジト目を浴びながら、あんぐりと口を開ける弥生であった。

お読み頂きありがとう御座いました。(*^^*)

連載状況の方はツイッターでもお知らせしておりますので、そちらも合わせてお願い申し上げます。

https://twitter.com/t8XlRA1fFbmAm86


                                         盛り塩

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