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第70話 こら、いつのまに!?

こちらはカクヨムに掲載された修正版です。

原文ともによろしくおねがいします(*^^*)

「弥生様。ぶりと言えば?」

「そりゃ照り焼きでおじゃろう?」


 神社の境内で、巫女役の亜人たちとベーゴマに興じていた弥生。

 突然やってきた彭侯ほうこうにそう質問されてそう返した。

 後ろには見事な鰤を抱えたロロが鼻息を荒くして立っている。


「それ捕ってくれたの? すごいじゃない。 なかなか上物よそれ!?」

「はい。それで是非とも弥生様にと」


 税率は決めたものの、それ以外での貢物みつぎものは後を絶たない。

 みんな特に出来の良い野菜や、太った獲物は年貢とは別に持ってくるのだ。

 それらはそれぞれの気持ちとしてありがたく受け取っているが、それで依怙贔屓えこひいきすることは絶対しないし、競争にならないようにも注意している。


「今朝の網に引っかかっておりみゃした。鰤は縁起物と聞き、ならば是非弥生様にとカワウソ漁業組合全員の気持ちでございみゃす」


 ……いつのまにそんな組合を作ったのだろう?

 なんて疑問は置いといて、贈り物には素直に感謝する。


「ありがとうね。でもこれだけ大きかったら私一人じゃ食べ切れないし、宿舎の子供たちにもおすそ分けしていいかなぁ?」

「もちろんでございみゃすっ!! 未来ある子供たちに出世魚を振る舞ってくださる。弥生様は本当にお優しい主でございみゃす」

「もちろんロロも、あんたたちも一緒にね」


 そう言って、すっかり遊び相手になった巫女三姉妹(猫、犬、カワウソ)にも声をかけてあげた。





「ではさっそく『みりん』作りから始めて行こうと思います」

「そっからかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーいっ!!!!」


 がらがらがっしゃんっ!!!!

 まさかの調味料からの作成に、弥生は給食室の椅子から転げ落ちた。


「はい。せっかくですから、いつもの代用みりん(日本酒、水飴 3:1)ではなくちゃんとした本みりんを使っていきたいと思いまして。準備はいいですか?」

「「「にゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」」」


 彭侯の宣言に、俄然やる気のルルたち給食係。

 元気いっぱい両手を振り上げる。


「いや、にゃあじゃなくて……私、すぐ食べられると思ってお腹空かせてきたんだけど……?」

「ご安心を、下ごしらえはおおむね済んでおります。あとは私の能力で早送りすればすぐに出来ますよ」

「ほんとにぃ~~~~?」


 むかしむかし平成も終わりの頃。

 なんだかしらないけども急に自転車がブームになって、当時の女友達にサイクリングに行こうと誘われたことがある。


『ほんのちょっと走るだけだから、軽いポタリングだから!! んね?』


 そんな笑顔にほだされて、アホズラ下げてついていったのが運のつき。

 ゲロ吐きそうなほどキツイ斜面の山を延々と登らされ、そのとき嫌になるほど聞かされたのが『もうちょっとだから、すぐそこ、すぐだから!!』と謎の嘘八百。

 それ以来、人の言う『すぐ』とか『ちょっと』とかは信用しないようにしている。


「……私は信用してください」


 そんな記憶で軽い人間不信に落ちそうになっている弥生。

 痛々しい主人をこれ以上傷つけないように彭侯たちは調理を急ぐことにした。





「ではみなさん。先日教えた米麹こめこうじは出来上がっていますか?」

「はい、こちらにありますにゃあっ!!」


 給食室の一角に作られた麹室。

 そこから出来たてほわほわ米麹を竹ザル一杯に持ってくるルルの部下たち。


「仕込んで今日でちょうど三日目、頃合いかと思いますにゃあ!!」

「はい、いいでしょう。ではこれに水と蒸した赤米を入れてください」

「はいにゃ!! どぼどぼどぼどぼ~~~~~~~~っ!!」


 大きな木桶に材料を放り込む。

 ルルたちも仕事に慣れてきたらしく、動きが機敏になってきている。


「はい。これらが合わさると――――どうなるんでしたか?」


 急に先生口調になって質問してくる彭侯。

 目線上ルルの後ろにいた弥生も思わずドキッとして考えてしまう。


「え? え? え?? え~~~~っと……その、なんだかんだで発酵(?)して味噌? 醤油?? 違う違う、え~~~~っとあの……どろどろした感じの……」

「はいっ!! 麹菌が酵母と酵素を生み出して澱粉の糖化と糖のアルコール化を同時にやってくれますにゃあ!!!!」

「はい、正解です。つまりお酒になってくれるわけですね? 弥生様、何かおっしゃっておられましたか?」

「はぁ? うぅ~~~~んべつにぃ~~~~~??」


 ふーすか~~ふーすか~~。

 鳴らない口笛を吹かしてすっとぼける弥生。


 そうだったそうだった。日本酒造りのアレだった。

 飲むのはいいケド、作るのには興味ないから忘れていた……というかこれからも覚えられそうにない。


「ですが彭侯先生、作るのは『みりん』のはずにゃあ。このままでは『日本酒』になっちゃうにょでは??」

「はい。ですので今回はこの中へさらに『焼酎』を加えていきます」

「焼酎にゃあ??」


 そういえば先日、焼酎があればみりんを作れるとか言っていた気がする……。

 しかしなにがどういう理屈で焼酎が必要なのか、さっぱりわからない。


「ていうか、米焼酎できてるじゃん!? なんで言ってくれないのよ、ちょっと飲ましなさいよっ!!!!」


 密かに製造していた米焼酎。

 しれっと材料に使おうとしている彭侯から奪い取る。


「ああ、米が残り少ないので少ししか作れていないのです!! 全部は飲まないでくださいねっ!!!!」

「わかってる、わかってるって、ひゃっほーーーーーーいっ!!!!」


 窓から下がっている氷柱つららを折って、ロックを作り始める弥生。

 仕方がないので軽いおつまみを準備する彭侯だった。

お読み頂きありがとう御座いました。(*^^*)

連載状況の方はツイッターでもお知らせしておりますので、そちらも合わせてお願い申し上げます。

https://twitter.com/t8XlRA1fFbmAm86


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