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第42話 新しい村

こちらはカクヨムに掲載された修正版です。

原文ともによろしくおねがいします(*^^*)

「……さ、鯖寿司……美味しかった…………」

「有難うございます。では本日のご報告にまいります」


「あの臭味がいいのよねぇ……。ギリギリっていうか……これ以上強かったら美味しくなくなるってラインのスレスレ。青魚全部に言えるんだけど、そこんところが一番美味しいのよ~~~~」

「亜人たちの人口ですが、猫人60名 犬人40名 カワウソ人30名となっておりました。そのうち女性の割合が7割――――」


「酢飯も美味しかったわぁ~~~~。……赤米だったけど、ちょうどいいお酢加減で、甘くて、口の中でホロホロほどけるの」

「子供が1割と少ないのが問題ですが。食事情の改善でこれも上がってくるでしょう。次は生活環境についてですが――――」


「脂も最高に乗っててさぁ。舌の上でトロけるのよ。ああ~~これこれって、昔食べた鯖の味だって。そういえばさあ、魚ってあんまり変わってないよね。どうして?」

「冬に向けて、暖のとれる共同暖炉の設置と薬草の確保を急がせました」


「……ねぇ聞いてる?」「聞いておられますか、弥生様?」


 食卓を挟んで言葉がかち合ってしまう二人。

 弥生はちょっとむくれて、彭侯ほうこうは報告書を裏返した。


「……失礼しました。そうですね、崩壊後の突然変異は陸上生物に多く見られますね。海の生き物は一部をのぞいてそれまでの種とあまり変わっておりません」

「だよね。鯖もこのあいだの鰯もそのまんまだったもん」

「そのかわり淡水魚はわりと変化していますね」

「まぁそれも美味しいからいいんだけどさ。で、なんだっけ? 生活環境?」


 今日の夕餉ゆうげは像豚の味噌汁とごはん、大根の浅漬。

 シンプルな豚汁定食だがこれがむしろたまらない。


 豚汁、ごはん、豚汁、ごはん、豚汁、ごはん、漬物、豚汁、ごはん。

 のリズムで無限に食べられる。

 鯖寿司も美味かったが、こちらももちろん美味しい。

 汁物だけで米をグイグイ流し込む快感を存分に楽しんでいる。


「はい。彼らは魔獣対策として穴を掘りその中で生活しておりますが、半分は人であるため、やはり地上に出て太陽を浴びなければよろしくありません。それできちんとした家を作らせようと思っておりますが、そのための木材を採取したいのです」

「へ~~~~……採ればいいじゃないモグモグずずず~~~~……」


「許可していただけますか?」

「ん、許可? 私が? なんで??」


「この世界の全ては弥生様のものですから。下々の者がそれを求めるのならば当然許しが必要になりますので」

「……わたしゃ魔王かなんかか!?? べつに何でも勝手に使えばいいわよ。そこはあんたの裁量で決めていいから」


 木を一本切るだけでいちいち許可を求められたらかなわない。

 いずれ書類にハンコを押すだけで一日が終わってしまう。そんな灰色管理職に成り下がってしまいそうで思わずゾッとしてしまった。


「令和時代みたいに山削りまくって太陽光パネル並べまくって緑がなくなったからって税金取るようなワケワカランことしない限り、何したっていいから(# ゜Д゜)」

「わかりました。私もそこまで馬鹿ではありませんのでご安心を」





 そんなこんなで一週間ほど。

 今日の弥生はお弁当を持って密かに出かけていた。


 彭侯にも内緒でやってきたのは、家からずっと西の名もなき小さな山の上。

 その一番大きな杉の木の先端。

 そこで人型に羽根を生やした弥生は、まるで天狗のように立っていた。


 覗き込むのは手作りの望遠鏡。

 鉄筒とガラスを合わせて作った簡単な物だが充分使える。

 どこを見ているのか?

 もちろん亜人たちの村である。


 神様扱いされるのを嫌ってなるべく接触を避けていたが、それはそれとして様子は気になる。(ていうか一人で退屈)

 なので見つからないように遠くから観察して楽しもうという魂胆である(陰キャ)


「ほうほう……まだ10日ほどしか経ってないのに、けっこうサマになってるじゃないん?」


 猫人の村と犬人の村の中間地点。

 ちょうど五湖の真ん中辺りに小さな木造建築の集合体が見えた。

 それを中心に開墾が進められ、すでに小さな集落ひとつぶんくらいの面積が耕されているみたいだ。


「……さすが亜人。ほんとに体力あるのね」


 建物は建築物といっても雑な物で、三角に組んだ木枠に草をかぶせただけのもの。

 作りの大雑把さから見て、あれは彭侯が作ったものではなく。亜人たちに作らせたものだろう。


「……彭侯は? ――――……ん~~~~……ああ、いたいた」


 猫や犬たちが共同で畑仕事をしている中、フワフワと飛び回る緑の光。

 精霊体に戻った彭侯である。

 弥生から離れてしまっているので人型が保てず、ツタを操るなどの便利能力も使えない状態。

 なので彼ができるのは、言葉で指示を出すだけ。

 すべての労働は亜人たちにやらせているみたいである。


 木の柵に木のくわ

 建物も釘を使わず組み合わせ式。

 魔獣撃退用に一部の亜人たちは兵士として訓練しているようだったが、その武器防具もすべて木製であった。


「木の鎧に木の盾。棍棒に竹槍……。それはアレじゃない? 牙とか爪で良さそうじゃない??」


 首を傾げつつも、徐々に変化していく箱庭にしばらく興味を奪われている弥生であった。


お読み頂きありがとう御座いました。(*^^*)

連載状況の方はツイッターでもお知らせしておりますので、そちらも合わせてお願い申し上げます。

https://twitter.com/t8XlRA1fFbmAm86


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