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第31話 炭作り

こちらはカクヨムに掲載された修正版です。

原文ともによろしくおねがいします(*^^*)

 北の樹海で食材採集を始めてから、一ヶ月ほどが過ぎた。

 季節は秋が終わり、冬に入ろうとしていた。


「あ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~やっぱり寒い日は温泉にかぎるわぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~……」


 ゔぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~い。


 おじさん丸出しの唸り声を上げながら湯けむりに包まれている絶世の美女、弥生。

 落ち葉と一緒に日本酒をぷかぷか浮かべ、ひさびさのゆったり時間にご満悦。


 ここしばらくは冬支度でまぁまぁ忙しかった。

 二日に一度は樹海に行き、野菜を探し、魔物を狩っていた。


 行かない日は彭侯ほうこうと一緒に保存食を作っていた(ほぼ見てただけ)

 おかげで冬を越せるほどの食材は確保できたと言えるだろう。

 魔物は冬でも活動している種が多いらしく、無理にいま狩らなくても良かったのだが、行くたびに襲いかかってくるものだから仕方がない。


 保存しきれないものはみんな亜人の村へまんべんなく投下した。

 これで彼らもきっと冬を越せるだろう。

 いまだ話したことも見たこともない亜人だが、人の血が流れているのなら見捨ててはおけない。弥生もここ一万年くらいは人間たちに良くしてもらっていたから。


 湯につかる弥生の目の前では彭侯が大きなかまで火を焚いていた。

 木炭を作りたいというので炭窯スミガマを作ってあげたのだ。

 のっぺりと背の低い土窯が二つ。

 よくわからないが、一つは黒炭こくたん。もう一つは白炭はくたん用だという。


「炭にも色々種類がありまして。炭化させる温度によって黒と白に分かれるのですよ」

「そもそも炭ってなんなんだっけ? いや、何となくはわかるんだけど……」


『簡単よ、簡単に言ってよ光線』を発しながら質問する弥生。

 バーベキューとか焼き鳥屋とかでよく見るし、それで焼いた肉は美味いというのは知っているが炭そのものの正体はいまいち謎。

 どうやって作るのかもよく知らない。


「……炭は簡単に言うと、木材から炭素以外を抜き出した物のことです」

「炭素?」

「はい。木材に熱を加え、酸素を極限までしぼります。そうすることにより木材はメラメラ燃え上がることなくジワジワと『不完全燃焼』していきます。その中で炭素以外の木の成分は煙となって分離し、残るのが炭素の塊、つまり『すみ』です。炭は煙を出さず静かに長時間燃えてくれるので、直火に比べて食材を焦がさず、匂いも付けずに調理することができます。遠赤外線効果など――ああ……え~~と、まぁこんなことろです、はい」


 調子に乗りそうになる自分の頬をツネって苦笑いする彭侯。


「ほほぉ~~~~……で、黒と白の違いは?」

「黒炭は低温で仕込まれた炭です。火付きが良く、火力も強く、安価で扱いやすいのが特徴です。野外料理や七輪での焼き魚では大体これを使っています」


 ぐ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~……。


「あかん……聞いてるだけで腹が減ってくる……じゅるり」

「白炭は高温で仕込まれた炭です。黒炭よりも火持ちがよく長時間燃焼してくれます。さらに団扇うちわなどでパタパタと扇ぐことにより温度調整も自在で、低温から高温までさまざまな火加減が可能です。焼き鳥屋やうなぎ屋など、こだわりの店ではよく使われております。備長炭なども白炭ですね」


「へぇ~~~~じゃ白炭の方がいいんだ?」


「いえいえそうとも限りません。そもそも黒炭は酸性で白炭はアルカリ性なので。例えば脱臭目的で炭を使う場合、匂いの対象によって使い分けが必要になるのです」

「あ、そっか。炭って火をつけるだけじゃないもんね」

「はい。水の浄化、土壌の改良、通電線代わりにも使えます。ご飯も美味しく炊けますよ?」

「お、お、お、お!? じ、じゃあどんどんつくろう、どんどん!!」


 土壌の改良や通電線などどうでもいい。

 メシを美味くしてくれるなら作れるだけ作ってもらいたい!!


「炭焼き料理……。焼肉、焼き鳥、焼き魚……ああ~~~~たまらん!! 今夜はそれでお願いします。もう我慢できません!!」


 だらだらだらだら――――……。

 滝のように流れ出るよだれで湯のかさを増やしてしまう、はしたない弥生。

 彭侯は申し訳無さそうに頭を掻く。


「いえ……あの、それが……今日火入れしたところなので……完成まであと一週間ほどかかります」

「が~~~~~~~~~~~~~~~ん……そ、そんな……ご無体な……」


 話を聞きながら、昔通っていた炉端焼き屋を思い出していた弥生。

 口の中がすっかり炭火味になって、がぜん食う気になっていたのがとんだ肩透かし。


 ぶくぶくぶくぶく……しくしくしく…………。


 止まらない涎に、悔し涙を混ぜつつ湯船に沈んでいくのであった。

お読み頂きありがとう御座いました。(*^^*)

連載状況の方はツイッターでもお知らせしておりますので、そちらも合わせてお願い申し上げます。

https://twitter.com/t8XlRA1fFbmAm86


                                         盛り塩


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