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奪還 その1

「ホラ、起きろ」


軍曹の言葉と、エンジンの音で目を覚ます。

瓦礫と土嚢で築いた防衛線の間から外を見ると、朝日が一気に目に入り、思わず手で防いでしまう。


野ざらしになっている傷だらけのタイマーに目をやると、時刻は六時二分を指していた。

次にエンジンの方向へ顔を向けると、機甲科の部隊の戦車が市街地へ向けて発進しているのが目に入った。

まだ疲労が抜けきっておらず、体中が悲鳴を上げていた。


「ぼーっとしてねえで、コイツを食って準備しろ。◯六三◯から作戦開始だ」


軍曹はそう言って俺にレーションのパックを渡してきた。

それをパイルで撃たれた右腕の義手で受けとり、軍曹に質問を投げかける。


「作戦って、何です?」


「指宿の市街地を取り戻すんだよ。昨日のあれから、駐屯地のドロイドはいなくなった。なぜかは知らんがな。あとは街からヤツらを追い出すだけよ」


「なるほど」


軍曹にそう返事をしてレーションのパックを開ける。

昨日のタナカの死が脳裏に焼き付いていて食欲はとてもと言っていいほどなかったが、流石に昨日から何も口に入れていないため、水で流し込んで吐きそうになりながらも食べた。


レーションのパックを投げ捨てて、バックショット弾と手榴弾を補給し、脱いで壁に置いていたスーツを持ち出す。

防衛陣地の中に置かれた簡易的な充電器から、充電していたバッテリーを取り出してスーツへ差し込む。


着用したスーツは傷だらけで、右腕に至っては装甲を貫通していた。

今すぐ整備兵に見てもらいたいところだが、今は一人でも多くの兵士が必要だ。

それにまだこの状態でも充分に動くことが出来るから、このままでもいいだろう。


「おい、全員集まれ!」


軍曹の怒声が聞こえ、急いで走り出す。

声のところに行くと、そこには外に出した机の上に指宿市の地図を広げている軍曹がいた。

俺が来てすぐに、サバルとオキタも集まってきた。

軍曹が地図の港の部分に指を指す。


「いいか、俺たちの小隊はこの指宿港を確保するんだ。ここもドロイドの手に落ちてて、船はパイルで近づけないときてる。市街地を進んで、海からの支援を受けられるようにするんだ。何か質問は?」


「はい! 軍曹どの」


こんな状況でも調子のいいオキタが手を上げた。


「何だ?」


「他の部隊はどのくらい展開しているのでしょうか?」


「市街地を包囲するように、西部方面隊三個師団と二個旅団、それから戦車大隊も来てる。上もこの街を取り返すのに必死だってことよ。俺たちはこの任務をやり遂げにゃならん。砂むし風呂は全部終わってからだな」


軍曹の眼差しは真剣だった。


「よし、じゃあ行くぞ!」


そう言って軍曹は手をパンパンと叩いた。

俺たちは防衛線から離れ、小隊と合流をした。

太陽は東にあって、燦々と照りつけていたので眠い目を覚ますには十分だった。

そして駐屯地から出る時に、軍曹に小銃と弾倉を投げ渡された。


「これは?」


「ソイツを持っとけよ。ヤツらきっと建物の上から攻撃して来るぞ。ショットガンもいいが、コイツも持っといて損はねえ」


「ありがとうございます」


俺はそう答えた。

駐屯地では砲兵科の兵士たちが、将校の「撃て!」と言う言葉とともに休むこと無く榴弾を街へ向かって撃っていた。


街中は元々観光地だったこともあり、海沿いには背の高いホテルや、いくつかの宿泊施設が目に入った。

それ以外は瓦屋根の住宅が広がっていて、視界は開けていた。

戦争がなければここも人で溢れて活気があったんだろうか。

そんなことをちょっと考えて、軍曹に「集中しろ」と叱られた。


今は俺たちの小隊以外の人影が見えず、ひどく不気味で、兵士たちの不安を煽るには十分だった。

時々吹く涼しい風の音と、遠くで聞こえる乾いた銃声と爆発音、それから俺たちの足音だけが聞こえた。


市街地に入って三十分、いや、三十五分だったかもしれないが、とにかく、その時間は隊列を組んで周囲を警戒しながら安全に進めた。

でもヤツらは簡単には行かせてくれない。

指宿港から1.2キロの地点だったか、海から内陸に流れる川に架かる橋を通過しようとしたところで、ドロイドに襲われた。


ヤツらは橋の下、緑がかった川の中からパイルを撃ってきた。

橋の歩道を歩いていた名前の知らない二等兵が、頭にもろにパイルを食らって、頭から血と何かドロッとしたものを垂れ流しながら倒れた。


小隊長が叫ぶ。


「敵だ! 一人戦死(KIA)! 歩道には近づくな!」


その言葉とともに、小隊長の兵士全員が銃を構え、戦闘態勢に入った。

もちろん俺もだった。

機械化歩兵たちは橋の上に伏せ、川の中に破片手榴弾を投げ込み、水しぶきが上がるのが見えた。


そうしていると、今度は橋の向こう側から、コンクリートの道路が盛り上がり、ドロイドの群れが出てきた。

敵の罠にハマったことを、俺はすぐに察した。


「クソっ!」


俺はそう声に出して、伏せたまま小銃をぶっ放した。

仲間が立ち上がって応戦し始め、俺もそれに続いた。

またなんとか頑張って更新していきたい。

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