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1話 天界にて

初投稿作品です。

私の考える物語で皆さんに楽しい時間を過ごしていただけるよう、頑張って面白くしていきたいと思います。

今は趣味として書いているだけなので、更新は不定期となりますが応援していただけると嬉しいです。

ここは人間の住む世界とは異なる世界。

この世界には女神とその遣いである天使達の暮らす天界と、その下には魔族の王である魔王が魔族と魔物を支配する魔界と呼ばれる世界が存在する。


魔王は支配領域を拡大するべく、天界へと徐々に侵略を進めていた。

天界の王女である女神ローズマリーはこれに対抗しようと、男の天使達を集め聖騎士団(ホーリーナイツ)を結成した。


しかし天界はある問題に悩まされていた。

魔族は攻撃的な魔法を得意とする種族であることに対し、天使は守護魔法を得意とする種族だ。

攻撃魔法を扱える天使は数える程しかおらず、圧倒的に不利な立場を強いられている。


ローズマリーはこの状況を打開しようと、新たな戦力として若い男の天使を謁見の場へ呼び出した。

噂によれば魔力量が他の者より秀でており、守護魔法はもちろん、高精度の攻撃魔法を扱えるらしい。


白く清らかな神殿の奥の玉座に腰を掛け、彼女は男の来訪を待っていた。

それから程なくして神殿の分厚い扉を叩く音がした。


ローズマリーが返事をして神殿内に入るよう促す。

扉が開かれ、そこから現れたのは彼女が呼び出した噂の天使、レミリオ・ノワールだった。




レミリオが扉を開けた瞬間、目の前の玉座に座っている女性…否、女性と認識するにはあまりに幼い容姿だ。

彼は初めて見る女神の姿に困惑した。

女神とは大人の女性の姿を想像していたからだ。


しかし玉座に座っているのは明らかに幼女で、自分を呼び出した相手かどうかという判断ができない。

この玉座を利用するのは女神様以外はいないはずなのだが。

自分の勘を信じて歩みを進め、彼女の前に片膝を地につけて頭を下げた。


すると頭上から幼女のものであろう声が降ってくる。

(おもて)を上げよ。」


幼い容姿でありながら神殿内に響く凛とした声は、レミリオに確かな上に立つ者としての気品を感じさせた。

彼女の声に従い、顔を上げる。

雪の様に真っ白な髪を腰まで伸ばし、左目は黒、右目には女神の証とされる黄金に輝く瞳。

間違いない、彼女が自分を呼び出した女神様なのだとレミリオは確信した。


ローズマリーもまた、この男が自分の呼び出した天使であると確信していた。

黄金の瞳に映し出された彼の魔力量は、普通の天使の持つ魔力よりも大きく上回っていたからだ。

自身の言葉に従って顔を上げる際に金色の髪が揺れ、此方を見上げる深い青色の瞳と視線が重なる。


「我は最古の女神、ローズマリー・フォルネウスである。そなたは若くして魔法の才に恵まれ、守護魔法と攻撃魔法のどちらも扱えると聞く。それが本当であるならば、どうかこの天界の為に力を貸してほしい。」


レミリオは彼女の言葉を聞いて驚いた。

もし彼女が本当に最古の女神であるならば、容姿と年齢が相応ではなかったからだ。


それによって少し反応が遅れながらも、彼女の言葉に応えようと口を開いた。

「ええ、この身に宿る魔法の才を活かし、天界の危機を乗り越える為に尽力したいと考えております。」


ローズマリーは彼の反応を見て愉快そうに目を細め、返ってきた言葉に満足気に頷いた。


「良い返事だ。天界では善性の者に力を与え、悪性を持つ者を弱体化させる。しかし魔族の侵攻は天界に踏み入っても尚、食い止めることはできなんだ。我は違和感を感じておる。」


天界では常に悪性の者を大幅に弱体化させ、善性の者に女神の加護として守護魔法の威力を強める退魔結界を張っているはずなのだ。

それが容易く破られてしまうということは、結界を破壊するほどの力を手に入れたか、或いは魔族の中に善性の者が存在するかのどちらかだとローズマリーは考える。


前者であれば我々に打つ手は無くなってしまう。

そして後者は天界の唯一の対抗手段を無効にしてしまう非常に厄介なものだ。


どちらにしても早い段階でそのカラクリを知らなければ、天の花園はあっという間に魔王の手に堕ちるだろう。

幸い魔族達は天使がわざわざ魔界に降りてくることはないと油断しているはずだ。


レミリオは彼女の言葉の意味を瞬時に理解し、それと同時に迷う様に瞳が揺らいだ。

彼女は自分に調査を依頼しているのだ。


「優秀なる魔法の使い手よ、そなたの才を見込んで命ず。魔界にて彼らの懐に潜り、結界を破る不埒な(やから)について調べよ。そして魔族への対抗手段を練るに値する情報を入手し、生きて此処(ここ)に戻るのだ。」


ローズマリーの口調は天界の王女としての威厳を放っていたが、言葉には彼女なりの激励も添えていた。


しかしレミリオは応えることを躊躇った。

自身の魔法があれば基本はどんなトラブルも対処できると自負しているし、天界を守る為なら泥にも飛び込む覚悟があると思っていた。

魔族に対して尋常でない嫌悪感を抱く自分には、この任務は苦痛過ぎる。


幼い頃に魔族の侵攻を受け、自分を庇った姉を目の前で無惨にも殺された。

その嫌悪感と姉の仇を取りたいという思いから、これまで聖騎士団として武功を挙げてきた。

仲間に支えられたからこそ、自分は堕天使にならず生きている。


今回の任務は一人で行わねばならない。

自分以外は魔族しかいない世界で、果たして正気のままで任務を遂行できるだろうか。

不安になったレミリオは目を伏せた。


ローズマリーはレミリオの様子を見て事情があるのだろうと察し、応えを急かすことはしなかった。

彼の出身が何処(どこ)かを知っていたからだ。

そしてそんな彼にこの命令を下すことに少なからず罪悪感を抱いた。


そして暫くの(のち)に、レミリオは視線をローズマリーへと戻した。

彼は意を決したらしく、瞳に力強さを宿していた。


「…やります。この世界を救う道筋を、必ずや作り上げてみせます。」


過去を理由に逃げたとして、今の自分はそれでいいかもしれない。

だが自分以上にこの任務の適任者はいない。

ここで逃げてはきっと後悔するだろう。


ならば彼女の期待に応えよう。

この戦争に勝てば、亡き姉もきっと報われるはずだ。


要件が済んだレミリオは神殿を退出し、気を引き締める様に一歩を踏み出した。

この問題の解決は一刻を争うため、早々に身支度を整えなければならない。


レミリオは自室に戻るとまず白い羽を隠した。

本来の彼の役職を示す騎士の鎧を外すと、旅人を装った質素な服装を身に纏う。

そして姉の形見である指輪を右手の人差し指に嵌めた。


部屋の窓際に飾った最後の家族写真に歩み寄り、それをそっと手に取った。

「姉さん、俺は必ずこの世界を平和にしてみせるよ。」

そう優しい声色で呟く彼は、悲しげに表情を歪ませながらも微笑みを浮かべていた。

次回、レミリオが魔界でとある人物に出会います。

お楽しみに!

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