第八部 第七章
「何だか、またしても騒がしいな」
そう大悟が呟く。
あの謁見の間での魔法使いの凜と重騎士の英明との面会を経て、あれから大悟達は新しく与えられた王城の部屋でくつろいでいた。
「また、何かやったのかな……」
茜が窓辺で呟いた。
「……いや、自分の与えられた部屋に行けよ」
「だって物騒なんだもの」
そう茜が口を尖らせた。
塔の方は真ん中に居間と客間がついて、皆の部屋もあった。
こちらは王城の部屋の為に、それぞれの部屋を与えられたままで、話す場所も無いので大悟の部屋に慎也も茜も入り浸っていた。
「ヤバいかな……」
「どうした? 」
大悟が慎也に聞いた。
「いや、それがさっき騎士鳥だっけ? それに誰か二人が騒ぎの中で飛び出して行ってったんだよ」
騎士鳥とはやや不格好で首が長い鳥である。
コウノトリとかに少し似ていた。
その首に馬のように轡と手綱をつけて飛ぶのだ。
慎也が聞いたことによると、鷹のような鳥もいるらしいが、それは伝令用の高速鳥で、比較的飛び方が安定しているのと鳥の背中での戦いやすさから、そのコウノトリのような騎士鳥がメインで使われているとか言う話だった。
「あの魔法使いか」
苦々しい顔で大悟が呟く。
あの後、別れ際にお前の仲間が! と騒ぎまくり、凄かったせいで皆がうんざりしていた。
「で、その後で遅れて騎士鳥に乗った重装備の騎士が叫びながら追っかけて向かっていたからさ」
「じゃあ、何だ? 何かやらかしそうって事か? 」
「普通に考えたら、そうなる」
慎也の顔も苦々しい。
「ちょっと、まさか、あちらの陸君とかを襲撃するとか言うんじゃないでしょうね」
茜の顔が殺気立つ。
その時、ドアがノックされた。
訝し気に大悟と慎也と茜が顔を見合わせた。
「入ってよろしいでしょうか。緊急事態なので……」
老齢な武人の声をする。
何度か皆が話したことがあったので、ハロルド騎士団長だとすぐ分かった。
「どうぞ」
大悟がそう丁寧に話した。
「申し訳ない。こんな事になるなんて」
ハロルド騎士団長が即座に入ってくると深く頭を下げて悲痛な言葉を述べた。
「何があったんです」
「あれから、魔法使い殿とうちのこないだ帰ってきたヘンリー騎士団長が参加して、さらに大陸ドラゴンの背中にいる勇者殿のお仲間を排除すべしと騒ぎだして……」
「ああ、でしょうね」
「そんな感じの性格に見えました。主戦論のヘンリー騎士団長は戻ってらっしゃったんですか。大陸ドラゴンの背中から落とされたとか噂は聞いてましたが」
そう大悟と慎也が冷静に答えた。
「ええ、じゃあ陸君は? 」
茜だけがパニックっていた。
その温度差にハロルド騎士団長が少し困惑していた。




