第八部 第六章
「だ、誰も止めて無いんですか? 」
陸が唸るように聞いた。
「勝手に騎士鳥で向かって来てます。単独でしょうね。どうやら、いつもの如く思い込みで突撃してきているのではと……この間にここに居た騎士団長もほぼ同時に騎士鳥に乗って向かって来てますから、目標はこちらなのは間違いないかと」
「え? ここの大陸ドラゴンからチョロ熊さんに弾き飛ばされたおじさんはまだ生きてるの? 」
そっちじゃ無いだろうと言う事に天音が衝撃を受けている。
「ヘンリー騎士団長と言う名前らしいですが、不死と呼ばれてるくらい、どんなに酷い目にあっても生きている男ですから」
「ええええ? 助けなきゃ良かったな」
天音がそんな航海をしているが、陸的には魔獣族の最強クラスのイーグルベアに不死と認識されている時点でどんな人族なんだよって思いが強い。
「びっくりするほど馬鹿ですがね。なんか知らんけど頑丈なんですよ。馬鹿ほど頑丈と言うか……」
イーグルベアの言葉でヘンリー騎士団長と同じ人族として陸達の顔が少し赤面する。
「それを言ったら、あの魔法使いも糞馬鹿だからな。どちらも勢いだけだ」
さらにチョロ熊さんからのダメ押しである。
無意識に皆で頭を下げてしまう。
同じ人族としてすいませんと。
「いつもの重騎士も追っかけてますが、あの男は理知的でも重いですからね。重装備してますし」
「それで止めれなかったのか。女神エルティーナは止めなかったのか? 」
「止めようかとした動きは見せたのですが、一瞬逡巡してしまって、その瞬間に飛び出してきたって感じです」
「そうか。交渉するって言う話は伝わって無いのか? 」
「その様です」
「ああ、あの馬鹿どものおかげで獣魔神ライ様の配慮も台無しか……」
「ええ? 何とかならないんですか? 」
「そうですよ。せっかく話し合いで終わるかもしれないのに」
「難しいだろうな。びっくりするほど馬鹿だから」
チョロ熊さんの言葉で、さらに陸達が真っ赤になって顔を伏せた。
何という現実。
苦労して交渉までこぎつけたのに、全部終ってしまうような流れに変わってしまう。
「どうするか? 」
チョロ熊さんも困惑していた。
「話し合いをすると書いた、この布を持って行って見せては? 」
「そうだ。その通りですよ。チョロ熊さんがこちらの大物なのは知られているわけですから、布を持って見せれば交渉が決まったという事で納得するのでは? 」
智子と健がそうパアッと明るくなった顔で話す。
「いや、問答無用で攻撃してくると思いますよ」
「だから、馬鹿だと言っている」
報告しているイーグルベアさんもチョロ熊さんも同意見だった。
「どんだけぇぇぇぇ」
陸達の顔が歪んだ。




