第八部 第五章
「それで、ですな……」
いきなり背後からイーグルベアのチョロ熊さんの部下から話しかけられた。
「何だ、いきなり」
「いえ、続報です。多分、彼女の独断だと思われるのですが、現場のイーグルベアの配下の諜報役のヨルスズメからの連絡です」
「え? ヨルスズメっているんですか? 」
いきなり智子が興味津々である。
「ヨルスズメ? 」
「四国の地方での呼び名です。まあ妖怪ですね。奈良や和歌山にも似たような伝承があるんですが、夜に雀の泣き声がしてつきまとわれた後に、オオカミや山犬に襲われると言う伝承があって、不吉だし恐れられてるとか。まあ、古い話ですが、祖母が四国の出身で曾祖母が良く言っていたとかで……」
「なるほど、こちらの世界と向こうの世界と実は関連があるのかもって話の事か」
智子の話に健が相槌を打つ。
召喚されただけでなく、元の世界の迷い人がいるのなら、ひょっとして向こうの世界とこちらの世界に接点があるのではと智子がこないだ皆に自分の予想を話していたのだ。
陸もその話には興味があったが、まさかここで出て来るとは。
「元の世界でモンスターとか呼ばれてたものとよく似たものがいるから、有り得るわね」
そう天音も頷いた。
「いや、それよりも、まずは報告の方が先では? 」
陸がさらに脱線しそうになった話を元に戻した。
「ああ、ごめんなさい」
智子が少し顔を赤くして頭を下げた。
「いやいや、少しくらい良いじゃないの? 」
「いや、わざわざ、チョロ熊さんに報告に来たのに緊急の案件で無いはずが無いじゃん」
「そういう所が余裕がないと言われるのよ」
「そんな事言うの、お前だけだけど」
「そう? 言わないだけでしょ」
天音がそう口を尖らせた。
「まあまあ、で、報告は? 」
「いえ、お話しておられた魔法使いですが、こちらに向かっているようです」
「は? 」
「やっと、こちらの連絡に気が付いてくれたんですね? 」
陸の動揺とは別に智子は良い方にとったようだ。
「いや、チョロ熊さんの話だと、そんな奴じゃないって話じゃ無かった? 勢いで動いて失敗するタイプで……」
「ヨルスズメからの報告だと、危険分子の抹殺とか騒いで出発したようで……」
「ええ? 」
「危険分子って? 」
「何かそんな問題があるの? 」
即座に理解して顔を歪ませた陸に対して、天音達はぽかんとした顔をしていた。
「いや、俺達の抹殺だろ」
陸が呆れて答えた。
「えええええ? 私達のどこが危険分子? 」
天音がそれで叫んだ。




