第八部 第二章
「それでな。獣魔神ライ様より、お前に伝言があるのだが……」
チョロ熊さんがそう困惑したようにタレを甕で作っている陸に話す。
「伝言ですか? 」
陸が少し驚いたように聞いた。
それで、天音や健や智子も顔を見合わせた。
「なんでしょう? 」
「キングオーガと抜き差しならぬ関係にジェイド王国がなりつつある。現状キングオーガが本気を出してきて、全軍の終結を開始している。流れによったらジェイド王国が滅びるかもしれないとの事だ」
「ああ、そんな感じですね」
「分かるわ。あの騎士団のおっさんも戦う事に固執してたし」
陸と天音の言葉に健と智子も同意した。
「そもそも、我らとしたらこちら側に侵入しているものを撃退してるだけだしな。我らとしても当然の権利と思っている。だがな、迷い人との関係もあるし、お前達も我らに色々としてくれている。それゆえ、今回に限ってはジェイド王国の対応によってはこちらも条件を出すが停戦をしても良いとの獣魔神ライ様の特別な配慮だ。双方の戦争に介入してくださるようだ」
「おおおっ、つ、つまり、こちらの交渉に乗ってくれるという事ですか」
「ああ、そうなるな。交渉だのはイマイチ人族の文化らしくて良く分からぬが、そうおっしゃっておられる」
「やりましたね」
「苦労したおかげで交渉成立じゃないですか」
「いや、料理しかして無いよね。実際問題として……」
健と智子は手放しで喜んだが、天音は呆れたように突っ込んで来た。
「だが、これで戦争を止めれるなら有難いのだが、どうやってジェイド王国に知らせたらいいんだろう」
「何だ。連絡方法も無いのか? 」
「女神エルティーナが見てるんじゃないかと思うんだけど、気が付くかな? 」
「というか、あのおじさんもそうだけど、魔獣に対する敵意が強すぎない? 」
「そうなんだよな。でも、今は静観しているキングオークも動く可能性があるんでしょ。そうなるとキングオーガだけで壊滅されそうなのに、勝負にならなくなるんじゃないかと思うんだけど……」
「そう考えると、圧倒的に負けに近い形での平和交渉になりますよね」
「プライド高そうだったしなぁ」
「いや、それに関しては獣魔神ライ様も配慮してくださって対等の形で和平交渉をしても良いとまでおっしゃってくれている」
「そ、それは有難い」
陸がチョロ熊さんの言葉に喜んだ。
凄い譲歩と言えるからだ。
何しろ、理不尽な攻撃を始めたのは人族側だし……。




