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第八部 第一章

「ねぇ、チョロ熊さん。前から気になっていたんだけど、これだけ俺達に良くしてくれる迷い人ってどんな人なんです? 」


 そう陸が今夜の仕込みをしながら聞いた。


 晩飯の為のタレを単に元の世界の焼き肉のたれを使うだけでなく、こちらの果汁を使ってリフレッシュな甘みを加えて、それを甕につけて作っていた。


「ああ、それ気になる」


 スープを作りながら天音も聞いた。


「いや、見た目は普通の人物だが、凄くいろいろな役に立つ提案をしてくれる御仁でな。実際、我々用の鎧とかを向こうの世界から転移させたものを加工して作る工房を作ったり、お主らがやっている畜養か。動物の家畜化と言うらしいが、それもここと同じように進めている。草も牧草のように斬り集めて、塔のような建物に集めて準備したりしてくれて、今後環境の悪化で食べるものが無くなっても大丈夫なようにしてくれている」


「塔? 」


「サイロか。発酵させて栄養価を上げているんだ。という事は乳酸菌とかこちらにも存在するんだな」


 陸が感心して頷いた。


「ああ、こちらで魔獣達に飲ませている我らの酒も改良してくれてな。おかげで旨い酒が飲めるようになったのもある」


「へえぇぇぇぇ」


 陸が感心した。


「それで我々に目をかけてくださるという事は、同じ世界からの転移者として好意を持っているという事ですか? 」


 子猫をあやしながら、智子が聞いた。


「いや、話しぶりを聞くに、陸とか言う……お前だっけ? 知ってるみたいだぞ? 」


「はあ? 」


「ええ? 」


 陸達が凄い顔をした。


「誰? 」


「知らん。名前は名乗らないで手伝ってくれたからな」


「心当たりある? 」


「いや、いろんなとこに顔を出しているから、いろいろと知り合いが多くて。会ってみないと分からないな。誰だろう……。俺の事を名前で知ってるんですよね」


「ああ」


「誰ですか? 」


「いや、いろんなところに俺は本当に顔出してるから、分かんない。街を歩いてて向こうは覚えてて声かけて来てってのも良くあるからなぁ」


「いや、覚えとけよ」


「叔父から教わった顔を売るって奴? 何かあったら積極的に顔を出すから、ちょっと多すぎるんだよね。会った事がある人が。顔は大体覚えてるから、声を掛けられたら思い出すんだけど、名前の方がなぁ」


「いや、ちゃんと名前とか聞いとけよ」


「年齢的に仕事で顔出しやってるわけでも無いから、名刺交換とかしないしな。話してて大事だなって思った人にはちゃんと自己紹介して名前を聞くけど……」


 そう天音に突っ込まれて陸が途方に暮れていた。

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