プロローグ 第八章
「え? 」
天音は転移した先で唖然とした。
手に爪が生えていた。
それは全ての指に生えていて出すと十センチ近くある爪だ。
凄く鋭く相手を斬り裂けそうだし、地面に深く刺せそうだ。
それは相当頑丈に硬く出来ていた。
手にも毛が生えており一見は猫の手のように見えた。
爪はある程度出し入れ出来るようだ。
そして、周囲から風を感じた。
木々もあり地面は土なのに、飛んでいるような風だ。
彼らは何か巨大な巨大なものの上にいた。
やがて気がついたが、空をそれが……大地が飛んでいるのだ。
何かの巨大な巨大なものの背中で自分達は暮らしているようだ。
「いやいや可愛いぞ」
そう陸が天音の容姿を見て笑った。
その陸も耳が生えて猫みたいな生物と混じって……いや、亜人になっていた。
「ちょっとぉぉぉぉぉぉ! あんたも人間じゃ無いんですがぁぁぁ! 」
「こ、これはなんでしょうか? 」
「本当に……」
瓶底メガネをかけたまま猫のような亜人になった健と智子が陸に聞いた。
勿論、服は着たままだ。
「あれじゃないかな? 」
まるで草が生えて、木すら生えて、その中に50センチくらいの猫に似た爪の長い生物が見え隠れしている。
「ああ? 」
「強引に転生させたのか、混ぜたんじゃね? 」
陸が笑った。
「笑いごとじゃねーやー! 」
天音が叫んだ。
その中の一匹の猫のようなものに陸がここはどこなのか聞いた。
「ふむふむ。なるほど」
そう陸が頷く。
「ちょっと! 話せるの? 」
「ああ、約束通り、コミニュケーションスキルをくれたみたいだな。こっちの姿に驚きつつも敵意は感じないし、意志の疎通は出来る」
そう満足そうに陸が笑った。
「何で私達も巻き込んでおいて嬉しそうに笑えるんだっ! 」
天音が絶叫した。
「いや、お前が言うなよ。相手を怒らせ過ぎだ。あのまま、あそこにいたら危なかったと思うからさ。もう、あからさまに最後は敵意があったし」
「それは私も思いますね。完全にいらない扱いでしたから」
陸の言葉に健が同意した。
「いやいや、でも、大悟がいるし」
「仲悪いじゃん。俺達……」
「あぅ……」
天音が絶句した。
「で、ここはどこなのです? 」
智子が聞いた。
「魔獣の中の魔獣の八大魔獣の一つの大陸ドラゴンの背中だって。全長が数キロあるらしい」
陸が笑った。
「何で笑えるのよっ! ご飯はっ! ご飯はどうするの? 」
「そろそろ食事の時間だって」
「は? 」
空を飛んでいるらしい大陸ドラゴンが下降を始めた。
「ほら、この爪はこの時にしがみつくためだって」
そう、背中の土の無い硬い部分まで地面に長い爪を差し込んでまわりの猫達とともにしがみつく。
「何? 何なの? 」
「ほら滑空してる先の大地にいる超大型のゾウに似たような魔獣の群れがいるだろ。あれをこの大陸ドラゴンが飛びながら踊り食いするんだって」
そう陸が言うとビタビタと血と大陸ドラゴンが次々とその巨大なゾウに似たような魔獣を噛みちぎって、その食べた後の血肉の欠片が大陸ドラゴンの背中に振り注いだ。
それを背中にいる猫達が爪を立てて飛んできた血肉を飛びついて必死に食べている。
「はああああ? コバンザメかよっ! 」
「ああ、こうやって生きている寄生魔獣らしい」
「嘘でしょぉぉおおお! 」
天音がそう絶叫した。
こうして、彼らの寄生のスローライフが始まった。