第七部 第九章
「ふふふふ、そう言う事なら、我々が大陸ドラゴンが飛んでいる場所へ道案内しましょう」
そう凜と英明の背後から声がかかった。
皆が振り返ると、少し痩せてはいたが、カルナード騎士団のヘンリー騎士団長がいた。
「お前は筋肉団子」
「もう帰ってきたのか」
クレバリー公爵とエゼルレッド王が驚いていた。
「いやいや、筋肉団子は無いでしょう。もう帰ってきたのかって失礼な」
そうヘンリー騎士団長がいきり立つ。
「いやいや、大陸ドラゴンから跳ね飛ばされて下に落ちたのを確認したが、元気そうだな……」
「女神エルティーナ様までちょっと酷くないですか? 」
女神エルティーナの言葉を聞いてヘンリー騎士団長がさらに不満げに怒る。
「普通は死ぬんだがな」
「いやいや、甥のエイブラムは筋肉の鍛え方が足りなかったのか、足がボキボキに折れて今治していますがね。鍛錬に鍛錬を重ねた身体です。あの程度の事などたいしたことでは無いです」
「ううむ。普通は余裕で死ぬ高さ何だがな」
「それは根性が足りないからです」
「腹が壊れて下痢してのたうち回ってた割には強気よね」
「なぜ、それを……」
凜の一言でヘンリー騎士団長が目をむ剥いた。
「私だって、遠くの偵察をする能力あるし」
「なら、なんで助けてくれなかったんだ」
「死なないと思ったから」
「大丈夫だと思ったから」
凜と女神エルティーナの回答が無茶苦茶酷かった。
「失敬な。私だって人間なんだ」
「300メートルくらいの上空から落ちて生きてるのって凄いと思うよ。人間の範疇じゃないし」
「300メートルも上空から落ちたの? 」
凜の突っ込みで英明が驚く。
「ふふふふ、これがマッスルの力ですよ」
ヘンリー騎士団長が笑った。
皆はそれを呆れて見ていた。
「だから、私も大陸ドラゴンがどこにいるか分かるから、案内は良いわ」
「なんですってぇぇぇ! 」
「だって、足手まといじゃない」
「いやいや、私は最強と言われたカルナード騎士団の騎士団長なんですよ」
「自称じゃない」
「仲間は皆入院してるしな」
凜だけでなくクレバリー公爵まで突っ込んだ。
「いやいや、あの交渉でとか寝言を言ってる連中を始末するんでしょ。手伝わせてくださいよ。確かに彼らの危険性は分かります」
「いや、お腹を治してもらったんじゃないの? 」
「それはありますが、彼らのは危険思想過ぎます。魔獣と人族を同格に見ているのですぞ」
そうヘンリー騎士団長が断言した。
英明がちょっと納得しないのか首を傾げていた。




