第七部 第五章
「あのさぁ。数か月でも、こちらが先輩なんだから、さんくらいはつけなさいよ」
そう、イライラするように御門凛が大悟達に言い切る。
「おいおい……」
横で藤本英明が呆れたように止めた。
「いやまあ、さん付けは構わないが、別に勇者としてリーダーするつもりも無いしな」
そう大悟がきっぱり言い切ったので、今度はエゼルレッド王とクレバリー公爵が凄い顔をしている。
「あらそう。じゃあ、私がリーダーで良いわね」
「いや、別に一緒にやるつもりも無いし。この国の民が攻撃されたらりしたら救ったりとかはするかもしれないけどな」
大悟がリーダーをやりたい御門凛にさらにハッキリと言う。
「あら、あんたのお仲間のせいで大変な事になっていると言うのに、随分と他人事なのね」
「いや、仲間じゃないし」
「幼馴染って聞いたわよ」
「幼馴染が仲が良いってこそ、決めつけだろ」
「同じ所から召喚されてんだから、仲間でしょうがっ! 幼馴染でそれなら充分よ」
「強引だな」
大悟が失笑した。
そうしたら、御門凛がさらにキレる。
「何か、大悟と合わなさそうな感じだな」
「というか、マウント取ってくるのがイラッとするんだけど」
茜がじろりと御門凛を睨んだ。
「頼むからさ。俺まで君のトラブルに巻き込まれる気は無いし。もう少し一歩引いて考えたら? 」
藤本英明が結構辛辣に凛に突っ込んだ。
どうやら、御門凛に引っ張りまわされて辛い思いをしているようだった。
「ま、待ってください。皆さんは仲良くしてくださいよ」
クレバリー公爵が慌てて声を掛けて来た。
「あんたが三体だかのオーガを倒している間に、私は三十体のオーガを焼き払ってきたのよっ! 」
「は? 」
「はい。実はオーガの問題は深刻でジェイド王国のいろんな場所に襲撃を受けているんです。実は今回の件よりも南方の方が深刻で……」
クレバリー公爵がそう説明する。
ちらと大悟が慎也を見た。
「南方の開拓してて、オーガの生息地を侵食したらしいんだ。それで深刻な状態になっている」
「また、そんな話かよ……」
大悟と慎也が囁き合う。
結局、オーガの生息地を強引に奪って行っているのだ。
先住者が良い土地や良い鉱山を住居にしているのは、どこでもありがちの話だ。
逆にそれで双方の被害が大きくなって抜き差しならない状況になるのが実は大問題なのに、凜は敵は敵と思って平気で攻撃できるタイプらしい。




