第七部 第三章
ジェイド王国の謁見の間で、大悟達が跪いていた。
勇者に新たに給与の形で合戦などで与える報奨とは別に大悟は年に金貨100枚、茜と慎也は金貨50枚を渡されることになった。
また貴族としての地位として大悟は子爵格で茜と慎也は男爵格と言うあやふやな地位もだ。
戦時においては騎士団とは別系統の組織ではあるが、現在協議中で最終的には一部の軍隊の指揮権すら与えるという破格の扱いである。
でも、これが単なる懐柔策であると理解しちゃってるので、大悟も慎也も茜もあまり喜んでなかった。
あちこちで、聞き取りしてる慎也は、貴族格扱いの件も内幕を知っていて、最初は貴族にするはずだったのが、貴族達からの反対が凄く、結果として格と言うあやふやな扱いになったそうな。
貴族にしたら女神に召喚されたとはいえ、貴族としての歴代の王家に対する長い忠義とかの歴史を考えれば、ぽっと出の小僧達に自分と同じ貴族にするのはおかしいとブチ切れる者が続出したのだそうな。
また、給与もクレバリー公爵が最初に大きく与えるより、戦功の結果の報奨金で渡した方が良いと言う助言でそうなったとか。
そうまでしてでも、大悟達を味方にしておきたいのだと思われた。
やはり、まさかの陸の行動が衝撃を与えたのだと思う。
陸に引き続いて、人族で召喚した勇者がもしも魔獣側に行ってしまえば、人族側は非常に不利になるという事だ。
そして、女神エルティーナがもし造反を起こしたとして大悟達を処分しようとしたとしても、獣魔神ライが恩恵を与えて防ぐ可能性すら出て来た。
これは、これ以上の造反をさせまいと言う涙ぐましい結果であった。
この上に勇者の造反があれば、人族の危機のみならず、女神エルティーナへの信仰とエゼルレッド王への忠誠心すら揺らいでしまうだろう。
まさに存亡の危機になってしまったのだ。
「勇者として無理矢理に召喚した事をお詫びするとともに、何卒、今後も魔獣と戦って我らを守って欲しい」
エゼルレッド王がそう厳かに少々情けないセリフを吐いた。
実際、見下すような雰囲気は無くなり、必死な状態であった。
大悟達がちらと顔を見合わせてため息をついた。
本来なら大々的に貴族を呼んでする勇者達への謁見なのだが、貴族は来ていなかった。
貴族達と勇者の立場で揉めて、結果的にこんな懇願みたいな謁見なら、貴族をそれに呼べないという事情は分かる。
王の威厳にも関わるからだ。
「なんで、私が男爵格なの? 」
そう謁見の間の扉をバーンと空けて女性が入ってきた。
大悟達と同い年くらいの勝気そうな銀髪の長髪の美少女は、そう叫んで入ってくると大悟達を睨みつけていた。
大悟達が唖然として振り返って、その女性を見ていた。




