第六部 第十四章
鍋で肉を焼いている陸が焼き肉のたれをかけた。
凄まじい香ばしい煙が立ったらしく。
向こうの世界の魔獣達が嬉しそうな顔をしている。
「あれは、俺達の世界の焼き肉のたれ? 」
「え? 何で? 」
「賢者になった慎也には話したが、お前達の世界の物を取り寄せれるスキルを持つ者が、お前達の世界から来てから状況が変わったのだ。恐らくはその男があの男に調味料を渡したのだろう」
女神エルティーナがそう呻いた。
「向こうの世界から物を持ち込めるの? 」
「それは物凄いチートだ。勝てる訳が無い」
大悟がはっきりと本音を話したので、女神エルティーナだけでなくエゼルレッド王がびくりとした。
「いや、制約はあって武器は持ち込めないのだ」
「でも、多分、武器じゃない形で持ち込んでいるんだよね」
慎也が日本もどこぞの国で民生品の形で武器を渡して軍用に現場で転用させているものがある。
それと同じ事をしていると言いたいのだ。
「……可能性はある」
女神エルティーナが困ったような顔でいたが、やがて苦々しく認めた。
「こちらにはそういうのは無いんですか? 」
「お前達を召喚しただけだ」
「いやいや、何で、そんな凄いチートが」
「相手の方は<迷い人>なのだ。まれにそう言うと異様な力を持つものが異界から現れる。だから、仕方ない。あちらの世界から来るものは本当に不思議な力を持つものが多い。まさか、その<迷い人>が魔獣側に行くとは……」
やっと本音のように女神エルティーナが答えた。
「これでは話にならないような気がしますが……」
大悟がきつい一言を言った。
「いやいや、貴方方にも特別な力があるのは皆さんは承知のはず。ですから、彼らに引け目を感じることは無いのですぞ。そもそも、貴方は勇者として選ばれて、その能力を身に宿しているのです。十二分に戦えるはず」
クレバリー公爵が横から口を出してきた。
それで、大悟達が白けた顔をした。
「いやいや、本当の事ですよ。貴方達は特別な方なのですから」
キャサリン姫が横からさらに口を出した。
「そうだとしても、向こうは文明の進んだ世界からいくらでも文明の利器を引っ張れるんですよ」
茜が、藤棚についているレッド電球の明かりを指差して皆に話す。
「あれは別に戦闘に関係無いだろうに」
エゼルレッド王が少しムッとしたように話した。
自分達のジェイド王国は人族で屈指の裕福さと文化を持っていると遠回りに自慢していたので、そのプライドを傷つけられたようだ。
慎也がやり過ぎっだて感じで肘で茜をつついた。
でも、すでに雰囲気は悪くなってしまっていた。




