第六部 第十二章
「……我を呼んだか? 」
そう厳かに女神エルティーナが現れた。
だが、顔色が良くない。
困惑しているようだ。
最初は今回の件がバレたからか? と思ったが、どうも違う。
どうやら別の事で困惑しているようだ。
「ええ! 貴方は陸君達をまるで罰のように交渉役として、魔獣の中の魔獣の大陸ドラゴンの背中に寄生している猫の寄生魔獣の中に転移させたと言いました。でも、それは本当なのですか? 私達を騙す為に嘘を言っているんでは無いのですか? 」
「おいおい! 」
茜が一線を越えた文句の言い方をするので慎也が慌てた。
「落ち着けって、あいつは大丈夫だから」
大悟がそう止めた。
「いや! 貴方は喧嘩してからずっと仲が悪いのに、なんでそんな事を平気で言うの? 無事だなんて分からないじゃないっ! 」
茜が叫ぶ。
「だって……あいつ……多分、怪物だぞ? 間違いなく。あまり俺があいつを認めてるようには言いたくないがな……」
大悟が困ったように呟いた。
「そ、そうなのか? やはり、そうなのか? 」
その驚いたような声を出したのは茜ではなく、なんと女神エルティーナであった。
「は? 」
「え? 」
「な、何を? 」
大悟と慎也だけでなく、茜まで驚いた顔で見ていた。
「信じられないことばかりするので……我も……流石に困惑していたのだ。いくら何でも……あんな行動は普通はしない……」
女神エルティーナが震えていた。
「ええ? 」
「やっぱりなぁ」
女神エルティーナに対しての茜の驚きを無視して、大悟がため息をついた。
その話を聞いて、困惑したのは大悟達だけでなく、エゼルレッド王達もだ。
「ど、どう言う事なんですか? 」
茜が混乱したまま聞いた。
「見るがいい。そして説明して欲しい。一応、魔獣達の言葉も我が分かるようにしておくから」
そう女神エルティーナが言うと巨大なテレビモニターのような画面が現れる。
その真ん中に猫と人間が混ざった天音が立っていた。
「天音? 」
「猫耳じゃん」
「猫との亜人? 」
茜と大悟と慎也がそれぞれ方向の違う呟きをした。
茜の目の前には大量の野菜が皮つきで大量に並んでいた。
すでに水洗いはしてあるようだ。
「<ミンチ>」
茜がスキルを使った。
それらの野菜は一瞬にして、両手の10センチ以上に伸びた爪によってみじん切りにされていく。
凄まじいスピードでみじん切り野菜がされた。
「え? 何、このスキル……」
「え? 」
慎也と大悟が驚いたように困惑したままの女神エルティーナを見た。
女神エルティーナは本当に動揺しているようだった。




