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第六部 第十一章

「いやいや、この度は我々の手違いで申し訳なかった」


 そうクレバリー公爵がそう必死に詫びる。

 

 とはいえ、最高位の貴族なので、深々と頭を下げるわけでは無い。


 勇者ゆえに仕方ないから詫びる姿勢を見せると言う感じであった。


「手違いですか……」


 大悟が少し嫌味っぽく囁く。


「我々はオーガの襲撃などで国土を荒らされて、国民も殺され、それゆえにそれらの悲劇に近しい平民出身の騎士がまさかあのような残虐な事をするとは思いませんでした」


 そうキャサリン姫がポロポロと涙を流す。

 

 最初からのやらせだという確信めいたものが無ければ、ころっと騙されそうな演技だ。


 本気で申し訳ないと泣いていた。


 それを自然とエゼルレッド王が庇う。


 本当にその姿は完璧に近いものだった。

 

 全てが非常に自然な流れで行われた。


 だから、余計に大悟と慎也がぞっとした。


 そして、茜もそれでパニックの度を増した。


 茜が惨劇と確信めいた大悟達の話を聞いていて、会ったばかりの異界の人間の言葉を信じるはずもなかった。


「あのっ! 女神エルティーナ様は? 」


 茜がさらに叫んだ。


 エゼルレッド王とクレバリー公爵が顔を見合わせた。


「これはお詫びと言っては些少ですが……」


 そして、金貨が入った革袋をクレバリー公爵が大悟に手渡す。


「お詫びですか? 」


 大悟が皮肉っぽく聞いた。


「いえ、我らの平民の騎士の監督不行き届きの詫びです」


 そうキャサリン姫が答えた。


 大悟と慎也がため息をついた。


「金貨百枚入っておりますぞ」


 そうクレバリー公爵が胸を張る。


 金貨一枚が二十万くらいの価値なのでニ千万と言う所である。


 裕福と言っても平民出身の領地の無い騎士の年給が二十枚から三十枚前後なので、詫びにしては大したものなのかもしれないが……。


「こんなお金なんかどうでも良いんです! 大陸ドラゴンの上にいる同級生はっ! 陸君達がどうなっているのか知りたいんですっ! 」


 茜の暴走が止まらない。


 流石に大悟と慎也が止めに入るが、それを無視してエゼルレッド王達に茜が詰め寄った。


 この貴族社会だと斬られてもおかしくないような話だ。


 本来なら詫びも謁見の間で行われるはずが、茜がパニックになって騒いだので、急遽やってきたらしい。


「マジなんだな」


 慎也が少し驚いていた。


 陸にそこまで惚れていたとは……。


 大悟は馬鹿だなぁと顔に描かれたままの表情だった。


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