第六部 第七章
「<バフアップ(能力向上)>! <スラッシュ(斬撃)>! 」
大悟が言いながら、滑り込むように剣を再度<マジックシールド(魔法盾防御)>に叩きつけてギリギリと押すオーガの背後に回り込むとジャンプして斬りこんだ。
<バフアップ(能力向上)>は戦闘に使用する素早さなど全てが向上する、そして、<スラッシュ(斬撃)>は一撃で致命傷を与えれるような攻撃と聞いていた。
それは大悟が盾でカバーできない場所へと移動してからだ。
その一撃で信じがたい事にオーガは斜めにずるりと両断されて死んだ。
<バフアップ(能力向上)>と<ブレス(祝福)>を受けていたのもあるが間違いない。
勇者の力が異常なのだ。
恐らく、賢者も神官も同じだろう。
魔獣に押された状況をひっくり返す為に召喚されて勇者になったのだ。
やはり、その力自体がチートだったのだ。
訓練の時に身体は軽く感じたが、<スラッシュ(斬撃)>も的にやるだけで当然人間には使わせてもらえなかった。
的がぼろかったので単純にそれで簡単に斬れたと思っていたが違ったようだ。
想像以上の攻撃力だ。
これなら使える。
幸い攻め込んで来たオーガの数は思っていた以上に少なく、今のところ、クラスペディア騎士団のハロルド騎士団長の指揮と統率のおかげで、目の前には数匹のオーガしかいない。
「良し、これなら戦える! 」
そう大悟が叫んだ。
「いや、君はそうでも、俺達は戦闘職じゃないし」
そう慎也がぼやいた。
「大丈夫だ! <マジックシールド(魔法盾防御)>は想像以上に強力だ! ほら次のオーガの斬撃を受けてくれっ! 」
大悟が叫ぶ。
向こうから別のオーガが剣を振りかぶって大悟達に斬りつけて来るが、<マジックシールド(魔法盾防御)>で慎也が防いだ。
そして、その横を凄いスピードで身体能力が上がっている大悟が動くと滑り込むようにオーガの死角に回った。
「<スラッシュ(斬撃)>! 」
そのスキルであっさりと、そのオーガも両断された。
「よし! よし! 次は<スラッシュ(斬撃)>無しでやってみよう! 再度、 <マジックシールド(魔法盾防御)>で敵の攻撃を受けてくれ、俺が回り込むから! 」
大悟が叫ぶ。
「待って待って! これだと俺がやってる事はタンクじゃない? 賢者なんだけどぉぉぉ! 」
慎也がそう叫ぶ。
「だって、それが一番効率的だし……」
「いや、役割がおかしいよっ! 」
慎也の困惑した叫び声の中で、大悟は今度は回り込んでオーガを<スラッシュ(斬撃)>無しで斬った。
両断はしなかったものの、相手に対しては致命傷を与えれた。
ただ、しばらくはそのオーガは動いていたが。
そして、そのオーガは憎しみを込めた目で、自分を殺した大悟でなく城の大悟達が出て来た塔の方へ身体を引きずって這っていく。
それを見て、大悟も慎也も引っかかる事があってじっと見ていた。
番外編の全部社会はもう少し遅れます。




