第六部 第一章
陸達は貰ったダイナモを使って風力発電の風車を作り始めた。
イーグルベアさんはそれをじっと観察していた。
どうやら、獣魔神ライは陸達を監視しろと言っているのだろうか?
非常に空気が重かったが、イーグルベアの殺気は微塵も感じなかった。
健も智子も緊張していた。
「で、貴方は私達の監視ですか? 」
それなのにド直球に天音がイーグルベアに聞いた。
親分をはじめ、猫の寄生魔獣は必死に転がって腹を見せて降参のポーズを続けている重苦しい展開なのにだ。
陸も空気はある程度読めるから、必死に風車を作って誤魔化していたにも関わらずに天音の一言で焦りまくっていた。
「いやいや、獣魔神ライ様よりお前達の護衛と何かあれば手伝ってこいと言われている」
イーグルベアさんはその恐ろしい姿と違い、なんと気さくな感じであった。
その言葉で健や智子はそれでかと理解したが、それは人語で話してたので猫の寄生魔獣達には伝わらないので、今度は魔獣の言葉で猫の寄生魔獣達にも説明してくれた。
気遣いも出来る悪魔の使者ってどうなんだと思いながら陸はそれをちらちら見ていた。
そうしたら、その言葉を聞いた途端、転がって腹を出したままの親分と寄生魔獣の猫達が一斉に陸達を見て左右の前足の肉球をすりすりと激しくすり合わせ始めた。
陸達が獣魔神ライ様の特別な御方と正式に分かったので、一斉にゴマスリを始めたのであった。
その揉み手のスピードは凄かった。
陸達はそれでドン引きしていた。
「貴方の名前は? 」
天音が聞いた。
「スタガルド・クレイルライド・ベヘモス」
そうイーグルベアが名乗る。
後でわかるのだが、スタガルドと言うのは魔獣族のトップランクが持つ爵位のようなもので、日本の爵位に当てはめると、恐ろしい事に伯爵に当たる御方であった。
本当にこれは後で分かって、実は物凄い偉いさんだったと言うので酷く恐縮する事になる。
何しろ、騎士団のようなイーグルベアの近衛の軍団も率いる御方であった。
物凄く魔獣族での大物だったのだ。
だが、それはまだ知らなかった。
それゆえに天音がにっこり笑ってこう言った。
「長い名前ですね。じゃあ、愛称でチョロ熊さんという事で……」
「はあああ! 」
「ええええ! 」
陸と健と智子まで絶叫した。
天音の性格はすぐ分かるので、恐らく、この恐ろしい悪魔の使者と呼ばれるイーグルベアがちょろかったのでチョロ熊さんと名付けたのが分かったからだ。
「ほう、チョロ熊か」
そうイーグルベアさんが笑ったので、呼び名を変えれなくなった。
それは本当に後で後悔する出来事になったのであった。
どこぞでやった展開をまたやってしまいました。トホホ。




