第五部 第八章
「まさか、そんなものを持って来ていたとは……」
陸に天音が聞いた。
陸は揉み手の親分達に頼んで、しっかりした木の枝の大きなものを持って来て貰って、十徳ナイフで削っていた。
「いや、いつも十徳ナイフは持ってたろ」
「それ、銃刀法違反に引っかかるんじゃないの? 」
「ギリギリ5.5センチだから。6センチ超えたらヤバいけどね」
陸が苦笑した。
「小さなナイフで大変ね」
「仕方ないさ」
横で健も同じ十徳ナイフて同じように枝を削っていた。
陸に影響を受けただけあって、同じもの持ってんだなと天音が苦笑した。
「で、何を作っている訳? 」
「いや、常に風が吹いてるから、動力として風車を作ろうと思って……」
「風車? 」
天音が驚いた顔をした。
「ずっと空を飛んでるだけあって風が吹くのだから、最適だろ。それを作ったギアで変換すれば、便利に使える」
「そういや、幼馴染の時に貴方の叔父さんもそういうの好きだったもんね」
「ああ」
そう陸が尊敬する叔父を思い出したのか、嬉しそうに笑った。
「ほら」
突然、何の気配もなく、あのイーグルベアが陸達の目の前に立っていた。
両手に大量の何かを持っていた。
「「「ひっ! 」」」
全員がビビる。
悪魔の使いとか言っていたが、全く気配を感じさせなかった事に陸が凄く驚いていた。
何しろ、クマの部分だけで、全長4メートルを超えてホッキョクグマよりでかいのだ。
それが無音で立っているとか恐ろしい限りだ。
そして、それ以上に衝撃を受けたのが両手に大量に持っていたのがダイナモとLEDライトとコードなどであった。
「こ、これは? 」
「彼らがいるだろうと、我らが獣魔神ライ様の知恵袋の御方が持って行って欲しいとおっしゃられたのだ」
「えええっ? 」
陸達の衝撃が凄かった。
「武器は駄目という制約はあるものの異界からいろんなものを引き寄せ出来る特殊なスキルをお持ちでな。これを持っていけば分かるとおっしゃられた」
「嘘でしょ? 」
天音も衝撃を受けていた。
それはこの世界を変えかねないチートであった。
「ひょっとして、これが……」
そこまで呟いて、勇者の話をするわけにはいかず陸が口をつぐんだ。
その人物の存在が女神エルティーナが慌てて魔獣と戦おうとした理由と勇者召喚の理由に関係しているのではと思ったのだ。
そして、どうやら、その人物は同じ世界の人間では無いかと思われた。
風力発電を理解しているようだったからだ。
陸達は唖然として固まったままだった。




