プロローグ 第五章
「すまないが、我々も勇者の召喚に相当な力を入れているのだ」
そう女神が最初に大悟だけでなく異世界に転移させた皆に話す。
場所はすでに王宮のような謁見の間に移っていた。
光の輪と魔法陣に囲まれて気が付いたら、ここに皆がいたのだ。
王は謁見の間からこちらをじっと見ていた。
そして陸と大悟達の周りには近衛の兵と群臣達が玉座の一段低くなった場所に控えていた。
女神は巨大な姿で王の背後の上空に姿を見せており、王は玉座から立ち上がった。
彼こそジェイド王国のエゼルレッド王であり、その威厳は凄まじかった。
だが、エゼルレッド王は高齢で、それを右側で20歳の美しい姫が支えた。
その美しい姫はキャサリン・フォー・ハノーファーでジェイド王国のエゼルレッド王一粒種の娘であった。
金髪碧眼の流れる様な髪を持ち、父に似て威厳のある姫でエゼルレッド王の次の女王となる予定の姫でもある。
「おおお、女神エルティーナ様。感謝いたします。貴方のおかげで魔獣たちの大進軍を食い止める勇者が現れた」
そうエゼルレッド王は背後の女神に跪いて祈った。
大悟は教育パパに育てられた至極まっとうな考えをしていたので、この状況に混乱していた。
「すまないが、大悟。君は我が選んだ勇者だ。汝に勇者のスキルを渡す。これでこの世界を助けてほしい。助けてくれれば御礼もするし元の世界に帰そう」
そう女神エルティーナが頼んだ。
「突然の異世界で混乱しておられるかもしれないが、我がジェイド王国は貴方の助けを必要としているのだ。助けていただけないだろうか。貴方達は全てが終ったら祖国に帰すことは、このエゼルレッド・フォー・ハノーファーが国王の名ににかけて約束しよう」
そう国王であるエゼルレッド国王が皆の前で宣誓のように話す。
「え? 私達は? 」
天音が慌てて呟いた。
「うむ。勇者が役目を終えたら同じように帰してあげよう。それは我からも約束する」
そう女神エルティーナも同じように宣言した。
「その……勇者のスキルは我々はもらえないのですか? 」
そう慎也が聞いた。
「うむ。後は私の巫女たる神官と賢者が特別なスキルとしてある。それが必要なのなら渡そう」
そう女神エルティーナが慎也と茜を見て微笑んだ。
それと同時に慎也と茜が輝いた。
それと同時に勇者のスキルも大悟に渡されたようで光っていた。
大悟は無理矢理に渡された役目に少しムッとしていた。
「他に勇者のスキルは無いのですか? 」
沼口智子が女神エルティーナに聞いた。
「残念ながら……」
女神エルティーナが冷たい塩対応をした。
どう見ても、分厚い眼鏡をした沼口智子と坂下健には女神エルティーナの目が冷たかった。
「それはおかしいのでは? 」
健が突っ込んだ。
「いやいや、ちゃんと戦って勝てそうな者しか特別なスキルは与えれないのだよ。資格を受けるための素養がいるのだ」
そう女神エルティーナが再度冷やかに見た。
「ちょ! それは失礼ではありませんか? 巻き込まれたんですよ! 私達! 」
勝気の天音が叫ぶ。
「まあまあ、俺達は城で待ってたらいいんだから」
そう陸が爽やかに天音を制して笑った。
「この非常時にお前達は何もしないと? 」
女神エルティーナが冷やかに陸を見た。
「いや、巻き込んだって言ってますよね! 」
そう天音が叫ぶ。
「だからと言って、何もしないで待つと言うのはおかしく無いか? 」
女神エルティーナが再度厳しく吐き捨てた。
それと同時に国王も頷いたし、近衛の騎士や他のものも頷いている。
思いっきり謁見の間の雰囲気が悪くなった。