第四部 第九章
「はははははははははははははははははははははは! 流石、お前が言うだけはある。たいしたものだ」
獣魔神ライが笑う。
豊満な肉体をした美女の猫の耳を持つ魔獣の女神が巨大な石版に羅列された異様な文字から画面が出て、陸達の行動を見ていた。
陸が女神エルティーナのコミニュケーションスキルを拡大解釈して、相手をコントロールする方向で使ったのが面白かったらしい。
それだけやった出来事が意外性があったという事だ。
「いやいや、ちょっと可能性を見せたのは良いけれど、不味いかな? 女神エルティーナのコミニュケーションスキルを取り上げられるかもしれない」
そう横で影の中にいる男が呟いた。
「ほう。一応、神と言うのは契約が大切だから、あの男が約束を破って我らとの交渉をしないとかしない限りは取り上げれないと思うがな」
そう獣魔神ライが興味深そうに話す。
本来は一神教の神も契約の神であり、悪魔も契約を守る。
それは実はどちらも変わらない事だった。
「しかし、万が一、何らかの手を加えられた場合、魔獣の世界だからな。人族と分かれば少々厄介だと思う」
「そうか……。まあ、人族を食べようと言う奴はおらんがな。良し、それならば私からも祝福をしよう」
「いやいや、そんな事をすれば女神エルティーナにこちらが何かしたかばれてしまうのでは? 」
「だから、こうする」
そう言うと空間に羅列のような文字が並ぶ。
「こ、これは……」
影にいた男が呻いた。
その言葉は『交渉するものとして認める……獣魔神ライ』と記されていた。
画面の中の陸がピカッと光る。
陸の身体のど真ん中に大きく『交渉するものとして認める……獣魔神ライ』と陸達には読めない絵文字羅列が光ったまま並んだ。
「光った」
「陸、光ったよっ! 」
画面の中で健と天音が騒いでる。
「ええええ? 女神エルティーナの契約解除かっ? 」
陸が画面の中で動揺した。
だが、親分達がどよめいた。
「え? 」
陸が親分達の言葉を聞いて驚いた。
まず驚いたのはあの文字を猫の寄生魔獣が読めた事だ。
彼らの話だと、獣魔神ライが陸を交渉するものとして認めたと書かれていたと言うのだ。
「なんてこった。魔獣の女神様に俺が交渉役と認められたらしい」
陸が驚いたように呟いた。
「え? 何で? 交渉なんてしてた? 」
天音が呆れて突っ込んだ。
「洗脳しただけですよね」
智子も冷やかだ。
だが、猫の寄生魔獣が大騒ぎしだした。
猫の寄生魔獣は下っ端の下っ端。
とても、獣魔神ライが相手にするようなものでは無いのに、獣魔神ライが関わってきたのが衝撃だったのだ。
「なるほど、交渉役になってしまえば違約は取れませんね」
影にいる男が苦笑した。
獣魔神ライがそれを見て破顔した。
そして、陸は別の問題に悩まされていた。
「どうしたの? 」
「親分達が交渉って何って? 」
「そこからかよ」
天音が呆れて突っ込んだ。
かくして、陸は正式に魔獣族の交渉相手として認められたのであった。




