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第四部 第七章

『止めろっ! 』


 また、再び陸が叫ぶ。


 その言葉は周りの者にもびくりと影響を与えた。


「き、貴様っ! 何を……」


 ヘンリー騎士団長が動揺した。


 天音をもう一発鉄鎚打ちで殴ろうとしたのは止められてしまった。


 何らかの攻撃を受けてるのか……いや、それとも、この男がそれほどの強さを持っていると言うのかとヘンリー騎士団長が思った。


 武術をしていると一喝で相手を動きにくくさせたりする凄腕がいる。


 古い忍者漫画には良く出ていたが細川家に仕えていた二階堂平法を創始した松山主水。


 『心の一方』と言われ相手にかけると相手が動けなくなる技を使う。


 実際に江戸城に登るときに行列を邪魔するものは片っ端からかけられて動けなくなったとか。


 ちなみに全伝は受けれなかったものの高弟に村上吉之丞と言うものがいて細川家に仕官を求めて来た宮本武蔵に挑んだところ武蔵が恐れて逃げたという逸話がある。


 それと同じ事をしているのかと思ったのだった。


『その子猫を下に置けっ! 』


 陸が叫ぶ。


 ヘンリー騎士団長はぶるぶると震えながらそれに抗っていた。


 エイブラムはそれを唖然として見ていた。


「何だ、これはっ! 」


 ヘンリー騎士団長が叫ぶ。


 自分の意志と違い子猫をその場に降ろそうとしていたからだ。


『子猫を降ろせっ! 』


 陸が再度怒鳴る。


「コ、コミニュケーションスキルで相手をコントロールしてるって事ですか? 」


 健が唖然として呟いた。


「くそっ! くそっ! 」


 子猫を降ろしながら激しくヘンリー騎士団長が舌打ちした。


 親分達もそれを唖然として見ていた。


 そして、降ろした瞬間に天音が子猫を両手で抱き上げて逃げた。


「あっ! くそっ! 」


 身体のコントロールが効かないらしくてヘンリー騎士団長の舌打ちだけが辺りに響く。


「大丈夫ですか? 」


 智子がすぐに天音の所に近寄った。


「首の骨は折れてないようだけど。 息が……」


 天音が泣きそうに呟いた。


 子猫は喉を苦しそうにしていた。


「くそっ! 悪魔めっ! やはり悪魔では無いかっ! 」


 ヘンリー騎士団長がそう地団駄を踏んだ。


 暴れてと言うよりは身体の自由が効かないようで、身体を動かくしたくてその場で地面を叩くように踏むことで身体のコントロールを戻そうとしているようだ。


 だが、陸はじっとヘンリー騎士団長とエイブラムを見ていた。


 そのせいでヘンリー騎士団長は動けないようだ。


「面白い力を使うな」


 ヘンリー騎士団長とエイブラムの背後に巨大な真っ黒いものが立った。


 背中に異様に巨大な巨大な羽根を持った熊のような魔獣だ。


 それがヘンリー騎士団長とエイブラムの背後に立ったのだ。


 ヘンリー騎士団長とエイブラムが全身を震わせた。


 全長ニ十メートル近い巨大な羽根を除いても身体は全長四メートルを超える巨体の熊の姿の魔獣は凄まじい迫力で吠えた。


「な、何で……」


 ヘンリー騎士団長とエイブラムが呻いた。


 それは八大魔獣とは別格とされている、魔獣の神の眷属とされるイーグルベアと呼ばれる魔獣だったからだ。



 ちなみに『心の一方』とは当時に本人に話を聞いた人の記録が残っていて、密教の呪術とかでは無く、心のかけあいにより、身体にすくみをとらせて動けなくする心理学的な喝に近い技だそうです。(密教の呪術にも不動金縛りがある。これは完全な呪術)

 かからなかった人はおらず、一人だけある細川家の侍が『心の一方』をかけたのに1歩身体を前に動かして、それに感嘆した松山主水が弟子にしたとあります。

 これは村上吉之丞でない別の高弟にあたります。(名前を忘れてしまいましたが……)

 細川家の殿様がその侍を褒めちぎったそうで、どれだけそれが難しかったかが分かります。

 んで、残念ながら二階堂平法自体の奥伝を全部継いだものはおらず、『心の一方』は失伝しました。

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