プロローグ 第四章
三坂学園高校の三回の二学年のAクラスと番外組の教室の前の陸と大悟達の足元に巨大な魔法陣が現れる。
それは巨大な光の輪を拡げて幾重にも重なっていく。
「何だ、これ? 」
陸は動揺もせずに面白がっていた。
それに対して大悟は動揺してまわりを見回して居た。
「ちょっと、逃げた方が良くない? 」
天音が叫んだ。
異様な出来事は間違いなく自分達を中心に起こっていたからだ。
その瞬間、中心に女神のような金色に輝く絹のような服を着た女性が現れた。
それは威厳を持ち美しい容姿をしていた。
「おお、そこに居たか。勇者よ」
そう、その女神は微笑んだ。
その相手は大悟であった。
動揺していた大悟は固まった。
「勇者? 」
「勇者ですと? 」
そう度の強い眼鏡をつけていた健と智子が訝し気に女神を見た。
「お前を迎える為に私はここに来たのだ。勇者の器よ」
そう女神は両手を拡げた。
それは間違えなく大悟にだった。
「異世界転生か。凄いじゃ無いか。いってらっしゃい」
そう陸が微笑んだ。
陸は大悟とあれほど揉めたが、自分の意見は通すときは通すし屁理屈もこねるが別に大悟に対して全く思う所は無かった。
どちらかと言うと大悟の気持ちを尊重して、嫌いならしょうがないよねと距離を置いたりしていた。
それは天音にも分かった。
基本、陸にとったら、自分の考えと自分の行く道は言ったけど、別に君の事は嫌いじゃないしってのがいつものパターンであった。
だから、葛西教頭にしても陸は嫌ってはいなかった。
あの人の考えだとそうだよねってのが陸の言葉だったから。
「いや、行かせても良いの? 」
「それは彼が決めることだから」
そう陸は天音に微笑んだ。
それで大悟が意地になったのか、それともそんな勇者とか馬鹿な話に付き合えるかと思ったのか知らないが、女神を無視して逃げようとした。
それがいけなかった。
女神の側も勇者の器である大悟を異世界転移する為に、相当な事をしていたのだろう。
女神は強引にそこに居た全員と共に異世界転移を行った。
大悟を逃がさない為に魔法陣と光の輪の転移の範囲を拡げたのだ。
それによって、大悟だけでなく、陸や天音や健や智子や慎也や茜も強引に異世界に転移させられた。
葛西教頭が上の階の異常を感じて階段を駆け上がってくるまでの間にそれは終わった。
葛西教頭はその場で誰もいなくなった廊下を見て、呆気に取られていた。
階下の踊り場から彼らの姿と光の動きと妙な騒ぎをそれとなく見ていたのだ。
それが葛西教頭が慌てて駆け上がった途端に消えたのだ。
葛西教頭が唖然として立ち尽くす。
その周りにはもう誰もいなかった。