第三部 第十章
巨大な昔の大陸ドラゴンのような魔獣のドラコンの骨を宮にしたような巨大な構造物がある。
それは人族と魔獣とが住む世界とは別の異界にあった。
そこに、女性の亜人のようなものが謁見の間の様になった一段高い場所の王座のような場所に座っていた。
猫の耳を持ち、全身は人間と猫の交わったような姿をしている。
肉体自体は豊満な20歳前後の姿をしていて、亜人なのに美しい容姿をしていた。
そして、その前には知性の高そうな魔獣達がひれ伏していた。
「やはり、異界から勇者を呼んだか。真似の好きな奴じゃな。女神エルティーナは……」
そうその亜人の女性はクスクスと笑った。
魔獣の一体が何か魔獣の言葉で話しかけた。
恐れ多い神に仕える様な仕草であった。
「よいよい、しばらくは様子を見よう。こちらは戦うために異界から呼んだのではないのにのぉ」
そうその魔獣の神の様に扱われている女性の亜人はそうくすくすと笑って影にいる男に告げた。
その男は魔獣達から石版を受け取った。
それを受け取ると召喚されたものの映像がパネルのような画像が次々と空間に出て、大悟を始め陸達の召喚されたばかりの姿が浮かび上がる。
「おや? これは知っててやったのかな? 」
その男は影に隠れたまま姿は見えないが、どうやら亜人ではなく人間のようだ。
「……誰か知っているものがいるのか? 」
そう魔獣の神の様に扱われている女性の亜人が興味深そうに聞いた。
「ああ、知っている……」
そうその男が呟いた。
「……どうする? 何なら助けるが……」
「いや、それには及ばない。あいつならこの状況でも生き抜くだろう。それよりも、これは面白くなってきた。あれはあれでトリックスターというか信じられない事をする時があるから。現状が大きく変わるかもしれない」
「ほう、それほどの者か……」
その男は影の中でちょっと楽しそうに笑った。
「大きな流れが変わるかもしれない……」
男は笑いながら呟いた。
「ふむ。では、護衛をつけよう。我らの中で優秀な奴を……」
「まあ、別に友達もいるし、何とかすると思うけどね」
「良い良い。お主とも不思議な縁だった。ならば、お主がそういうのだ。これも大きな縁であろう」
そう魔獣の神の様に扱われている女性の亜人はいたずらっぽく笑った。
そうして、その男は画面の中の陸をじっと見ていた。




