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第三部 第六章

「まさか、魔獣に助けられてしまうとは……」


 そう先ほどエイブラムともう一人の方に声をかけていた騎士が呻くように呟いて涙を流していた。


「どうしたの? 苦しいんですか? 」


 そう、天音が聞いた。


「え? 似たような喋り方だと思っていたのだが人語が喋れるのか? 」


 その騎士が驚いて叫ぶ。


 天音と二人で凄く慌てた。


 まあ、親分が剣やヤバそうなのを隠したのと、干し肉を回収したので、俺達は大丈夫と思ったらしくて姿が消えていたので、それで聞かれずに済んだが。


 天音がどうしょうって顔で陸を見た。


「あの。実は魔獣の姿をしておりますが、実は女神エルティーナの密命を受けているのです」


 そう、陸が囁くように呟く。


 寄生魔獣の猫の声帯をとおしているせいか微妙に発音が違うように聞こえていたのか、もしくはその発言自体に驚いたのか、一瞬、その騎士は固まっていた。


 それで、陸の横で天音は天音で凄い顔をしていた。


 いつの間にか女神エルティーナの密命になっていたからだろう。


 でも、陸にしたら、親分の雰囲気からこちらから交渉を申し出るという事自体、この世界の者が考える事ではないと理解してしまったし、ゴタゴタ説明するより、ひそひそで話せるならこちらの方が良いと思った。


 問題は猫の耳は人間の八倍なので、寄生魔獣の猫達に聞かれるのがヤバかったので不安だったが。


「み、密命? 」


 その騎士が動揺したように喋る。


 それを慌てて、静かにって感じで動作で見せた。


「……道理で……人語の訛ったようなのを使うし、そもそも亜人など我々は人族のいる範囲で見た事が無かったから…」


 などと騎士がそう呟いた。


 亜人が人族の世界にはいないのかよって陸と天音が顔を驚いて見合わせていた。


 これは陸にとっても計算外で……。


 ぶっちゃけ、陸達は人族のいる世界には行きようが無い姿という事だ。


「何より、我ら人族を魔獣が助けるはずがありませんからな」


 そう騎士は囁いた。


 それは天音を少し暗くした。


 天音にとって寄生魔獣の猫達は親しみのある悪いものでなく、人族と別に仲良くできるのではと思っていたのだろう。


 親分の態度があれで、騎士の考えがそうなら、それはかなり難しい事を言っていたという事に他ならない。


「私はカルナード騎士団の団長のヘンリーと申します」


 そう彼は俺達に自分の名前を説明した。


 後で、カルナード騎士団とはジェイド王国の三大騎士団の一つで、特殊部隊の様に敵と相対する特別な騎士団だと陸達は知った。


 それ以上にこのボロボロのおっさんがまさかの騎士団長と言うお偉いさんとは思わなかったので陸と天音は衝撃を受けていた。


 

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