第三部 第五章
陸が辺りを見回した。
陸は女神エルティーナの眷属とかがいるのを警戒していた。
ここで、人族のジェイド王国の騎士達を見捨てれば、守護神である女神エルティーナは陸達を敵と見るだろう。
それゆえに助けざるを得ない。
元々、女神エルティーナの様子を見て将来的に自分達を始末するかもしれない方向を感じて、それから距離をとるために、和平を魔獣達に交渉してみると言う事を申し出て、ここに来た。
良く様子も分かっていないのに、ここで騎士達を切り捨てるわけにはいかない。
ただ、ここだけの話かもしれないが、親分にしてもあまり人族に敵対と言うよりは迷惑な奴等と言うスタンスだったので少し困惑していた。
ただ、猫の寄生魔獣は大陸ドラゴンの背中に寄生しているので、あまり魔獣の世界に関して関与していない可能性はあるが……。
「これで、後は本人達の体力次第だよね」
そう天音が話す。
正直、最初から結構、無茶振りな治し方だったので、最初から騎士達の体力勝負でしか無かったのでは無いかと思われたが。
ただ、騎士達も死んだようになっていたのが少しずつであるが、雰囲気が変わってきていたので、その辺りは良い方に向かっているのが分かった。
「ああ……」
「何、きょろきょろしてんの? 」
「見ている可能性があるから……」
「? 」
「敵に回るかどうかを監視しているかもしれないと話しただろう」
「ああ、女神……」
慌てて、陸が天音の口を止めた。
名前とかはまんま親分にも伝わるかもしれないからだ。
「駄目だろっ! 」
驚いた顔をした天音が流石に頭の回転は早くて、理解してくれたのはありがたかった。
「特に気配は感じないけども」
「いや、見ていると思う。多分……。俺は貰ったスキルがあるから、なんとなく感じ取れる」
その女神エルティーナの気配を陸は感じた。
コミニュケーションを取るスキルと言うものは、相手のちょっとした気持ちを察する事も大切な事だ。
だからこそ、様子を見ている感じは続いていた。
「厄介だな……」
陸が呻く。
全然前知識も何も無いから、どの程度こちらに介入できるのかも分からなかったし、邪魔者扱いしているのは分かったが、勇者の大悟に対する俺達が人質と言う指摘は実は間違っていないのではないかと陸は思っていた。
恐らく、わざわざ、ここに転生転移させたのも、こちらの本音を探るためで間違いないと見ていた。
陸がため息をついた。
魔獣と人族のどちらも敵に回すと生きていける状態では無いからだ。




