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第三部 第四章

 呻きもしなかった方が小さな小さな呻き声をあげた。


 手作りイオン水をほんの少しずつ、口に注いだのが良かったのかも。


「助かるかも」


 天音が呟いた。


 そうして、少しずつであるが、二人は息が整いだした。


 いや、あれで効くのかよと陸は思ったが、口には出さなかった。


 多分、それだけの人族の猛者だったのか、もしくは身体が陸達の元の世界と違い頑強なのかもしれなかった。


 逆に、親分はそれで衝撃を受けていた。


 病気は静かに潜んで傷口は舐めることで、自らの治癒能力にかけて対応するしかない。


 それは動物たちと同じで、猫の寄生魔獣も同じだったのだが、今、天音はそれを別の方法で治しているようだ。


 それも、スキルでも魔法でも無くだ。


 人間なら医者だしと思う所だが、自らの肉体のみで生きている寄生魔獣にしたら、それは驚きの連続だったようだ。


 人族を治している事はいささか気にしていたが……。


「大丈夫なのか? 」


「いや、対症療法としたらこれしかないし。医者になりたいけど、医者の勉強はまだして無いから」


 陸の言葉に天音が苦笑した。


 それでも、生命力か、それは分からないが、間違いなく二人の騎士はギリギリ命はとりとめそうだ。


 それで、その騎士達にとっても天音がまるで天使のように感じたらしい。


 天音の言う事には凄く良く従っている。


「ミャウミャウ」


「ええ」


 親分が大丈夫そうなのかと聞いて来た。


 それで陸が答えた。


 そして、二人の騎士が動けない間にしれっと親分は鞘に入った剣をそれぞれ内緒で引きずると隠していた。


 これが長い実戦で培った親分の知恵なのだろうか。


 ちょっとやり方がせこいが、騎士達にもしもの時に抵抗はされなくて済むので、やりたいようにさせていた。


 それ以外にも嗅ぎ分ける力を使って、いろいろと持ち物を調べていた。


 そして、彼らが盗んだ干し肉を革のバックから引っ張り出すと、それを背後から護衛できていた猫の寄生魔獣の仲間にちゃっかり回収させていた。


 陸はそれもまた、しっかりしているなと感心して見ていた。


 親分の行動を見ていた天音が小さなため息をついたので、近づいて囁くように聞いた。


「どうなんだ? 二人は? 」

 

「手作りイオン水は昔、脱水症状になった部員がいて作ったことあったのよ。だから、大体の塩分とか甘さは分かったわ。ただ、ゲンノショウコの量に関しては勘ね」


「……勘なのか? 」


「私、ここぞって時には勘で行くのよ。外れたことは無いわ」


 そう天音が胸を張った。


 陸はそんな事言っても試験で寝て番外組に来たじゃんと思ったが、言葉には出さなかった。


 勿論、病院に行かせずに自分で部員に手作りイオン水を作って飲ませた話もドン引きしていた。


 せめて経口補水液とかイオン飲料を買って飲ませるものだろうにとも思った。


 そして、天音が将来に医者になっても絶対にかかりに行かないぞと強く強く思った。

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