第二部 第六章
「まさかと思うけど、女神エルティーナはこれを助けろと言うんだろうか」
陸が悩んだ顔になった。
「それは、確かに可能性がありますね」
健が頷いた。
「そうなら、無茶苦茶な話だな。こんなとこで人族の味方だって思われたら終わりじゃん。そもそも、飛んでいる巨大な大陸ドラゴンの背中の上だし。まして、彼らと親分たちに内緒で話し合いにいけるかね? 」
陸がそう悩んだ。
「意外と気配察するの凄いですよね。猫さん」
智子が痛い所をついて来た。
「やはり、危険だけど、親分に話してから行った方が良いのかね? 」
「せっかくの友好関係が壊れるのも怖いでいすよね。確かに」
健もこれまた痛い事を言ってきた。
どちらにしろ、結構、危険な事をする事になる。
しかも、騎士達がこの亜人の姿を見て斬りつけて来る可能性も高い。
「何にもしない方がいいんじゃないの? 」
珍しく、天音が事なかれ主義の言葉を口に出した。
珍しいなと陸が思ったが、子猫がちょろちょろと寄ってきてナデナデしている天音を見て単に猫さんと揉めたくないだけだと分かってため息をついた。
そうして、陸は考え込んだが、そんなに悩むことは無かった。
次の事件が起きたからだ。
親分に寄生魔獣の猫が来て騒いでいる。
親分の顔がみるみる殺気立った。
「シャーッ! 」
そう親分が叫んだ。
寄生魔獣の猫達が一斉に退避に動く。
どうやら、いくつか寄生魔獣の猫には寝る場所と言うか巣があるらしくて、そちらに撤退するそうだ。
「どうしたの? どうしたの? 」
天音が心配そうな顔で真っ青になった。
戦争になるのかと思ったのだ。
それで陸が親分に詳しく聞きに行った。
魔獣を友好的にするだけでなく冷静にさせる力もこのコミニュケーションスキルにはあるようで、この騒動の最中に陸は詳しく話を聞いて来た。
陸は肩を落としていた。
「どうだったの? 」
「どうしたんですか? 」
「魔獣の知識は侮れないなぁ」
そう陸が呟いた。
「何なのよっ! 」
早く話せと催促するように天音が叫んだ。
「あの人族達が酷い下痢でのたうち回ってるらしい。それで、疫病では無いかと皆が警戒している」
「疫病? 」
「そういう知識があるんですね」
智子と健が驚いた。
「結構、外から来た鳥とか入ってくるものもあって熱病とかが入ってくることもあるんだそうな。それで、今回の人族ののたうち回り方が凄いので、ヤバいって事らしい」
「え? でも、外から来る疫病と考えたら、私達が怪しいのでは? 」
「でも、下痢してないし。普通だし。それに原因が何か分かってるし……」
呆れた顔で陸がため息をついた。
「え? 何? 」
さっき散々話したのに天音は気が付かなかった。
陸がそれを見て苦笑した。




