最終部 第十六部
天音が大陸ドラゴンの背中に戻ると同時に大陸ドラゴンの羽根の部分が開いていく。
そして、包まれた羽根の中で防御壁として変わっていた寄生獣の猫達も元の姿に戻っていった。
その羽根が開いた時に天音を見て、大悟が飛び出してくるのと、健と智子が御鏡の防御陣を解くのが同時だった。
健と智子は力を使い切って、その場にへたり込んだ。
「大丈夫か? 」
「うん。四季さんはやっぱり自爆したの? 」
あたりに飛び散った血を見て、天音が大悟に聞いた。
「ああ……」
「あっちで会ったわ」
「はああ? 」
「何か死んで分かったらしいけど、神にコンプレックスを操作されてたみたい。神はコンプレックスとかをばねにして覚醒したんだって、それで自分の依りましとして覚醒させるときはその人をコンプレックスの塊になるように操作するんだって……。だから最後はつきものが落ちたみたいに昔の四季さんみたいな感じだったよ」
「そうか……。そういや、昔はあんなに陰湿じゃ無かったもんな」
大悟が呟いた。
「となると、凜さんもその可能性が高いですね」
「確かに、ちょっと異常でしたから……」
健と智子がそう呟く。
『私の子供が迷惑をかけた……。私も悪かったのだ……』
そう身体を引きずりながら、禍津族の神がそうテレパシーで話す。
その顔には後悔があふれていた。
そして、急激に禍津族の神の傷は治っていく。
『ふふふふふふ、私のような老体を治さなくとも良いのに……あの一瞬で治癒を操作していくとは……』
禍津族の神が苦笑した。
子供の陸が天音を改造した時の力を使って、禍津族の神様が治るようにして集合無意識の宇宙に行ったのだった。
「ところで、陸君は? 」
茜が心配そうに聞いた。
「元の身体が朽ちてしまったから再構築してから戻るって……」
「もはや、人間の会話じゃないよね」
「それでね。四季さんが陸のコンプレックスが足りなくて、他人のネガティブとか陸に大量に集まるように呪をかけていたみたい。問題はその呪が陸のポジティブ成分を集めて別の場所に分離しておいたらしくて、それでそれがこの世界の人族の無意識集合体の核と同じくらいの塊になっちゃっててね。それで陸を戻すので、陸に集まっていた闇のようなネガティブの塊とこのポジティブの塊を拡散させないといけないとか言っていて……」
『待ってほしい。それを全部解放したのか? 』
「うん。皆、ポジティブになるのは良いかなって思って……あれ? 急に不安になってきた。私ってこんなにポジティブだっけ? 子供の陸が私の中にいたから自分のポジティブが私に影響を与えてたかもって……」
『ひょっとしたら、ポジティブの塊に陸君の心も混ざってるかもしれないぞ……』
困惑した天音に禍津族の神がさらに困惑した顔で突っ込んだ……。
「ええ? 」
天音が驚いてドン引きしていた。




