最終部 第八章
「いや、その時代の38口径は今の9ミリパラベラム弾の5割から7割程度の威力なんだがな」
前方のヘンリー騎士団長にオートマチックの拳銃を撃ちながら月兎が苦笑した。
「はははは! こんな豆粒など根性があれば防げるわぁぁぁ! 」
ヘンリー騎士団長が血まみれになりながら叫ぶ。
どう見てもやせ我慢でハッタリだったが。
その瞬間に月兎の背後で次々と爆発が起こる。
「やっぱりな! あのアホはおとりだと思ったんだ! 」
月兎はそう叫んで、読んでいたかのように爆発したあたりに拳銃の弾倉を交換して乱射した。
「なるほど、随分とピアノ線を使って古臭い罠だと思ったら、センサー式も混ぜていたとはな」
そう四季が背後の爆発を避けて、月兎のいるあたりにサブマシンガンを乱射した。
「ひぇぇぇ」
「危ない危ない」
慎也と大悟が慌てて、さらに深く伏せる。
「当たり前だ。御門の暗部に一応、この手のやり方を用心に習っといて良かったよ」
「ほう、御門の方の暗部はこんな無茶苦茶な罠を張るのか? 近づいただけで爆発するようになっているが? 」
「どうせ、四季ならセンサーでも避けるだろう。ならば近づいたって分かるだけでもいい」
「なるほど、日葵よりもセオリーを重視していない大雑把な分、日葵より厄介だな」
四季が苦笑した。
『どうでもいいけど、渦になっている陸に当てるなよ! 』
子供の陸が騒ぐ。
「やっぱりか。陸もか。お前も何も考えないで本体を自爆させたな? コントロール出来てないんだろ。何でこの大事な時に大雑把なのばかりがっ! 」
四季が凄い顔で舌打ちした。
『まあ、勢いでやるしかなかったし』
子供の陸が悪びれず答える。
「最悪、陸がこのままだと、この世界が全部滅ぶぞっ! 俺の張った洗脳の流れを手繰って全ての集合無意識の根本に近づきつつある。こんな化け物になった怪物が根本に居座ってみろ! 全てがおかしくなる! 全ての生きとし生きるものの心を破壊する爆弾になってもおかしくない! 」
『え? 』
子供の陸が驚く。
「おーい、考えずにやったのか? 」
大悟が失笑を通り越して絶望的な顔になった。
「いや! そもそも、陸は四季さんを尊敬していたのに! それを裏切るなんて! 一番大好きな人に騙されてた気持ちって分かる? 私だって憧れていたのにっ! 」
天音が珍しくキレた。
「そうか? 私は悪いが陸が嫌いだったね。いや羨ましすぎたよ。実際、神とやらも覚醒させるために子供の頃の陸に触って後悔していたようだし」
そう四季が本音をさらけ出すように答えた。




