最終部 第六章
『君のその自己犠牲に近い戦いは呆れるが敬意を示そう。だが、あの獣魔神ライと女神エルティーナの包囲網をくぐって、その四季と言う青年がここまで来れるとは思えないのだがね』
禍津族の神様がそう子供の陸に話す。
すでに子供の陸の左右の手首から上は消えている。
御鏡の防御陣で少し消えるのが遅れているようだ。
「いや、禍津族の神様に言うのはなんだけど、四季は暗殺部出身だ。御門とは別系統の神代が持ってる暗殺専門の連中のトップにいたはず」
「え? そうなんですか? 」
月兎の話に岩魚が驚いた。
「岩魚さんが驚いてますけど……」
天音が突っ込んだ。
「分家の御門家に対抗するために、神代が隠して育成している暗殺部がある。宗主が変わるたびに二名とか三名だけ選ばれる。たまたま私は知っちゃったが、それは本当の話だ。奴はその力が認められて、獣魔族の迷い人と言う形で送り込まれた。噂しか知らんけど、私みたいな戦闘部とは似た系統の戦い方を学ぶが、それ以外に隠形とか相手に察せないように動くやり方を徹底的に学ぶ。来る気なら来ると思う」
そう月兎がばらして持っていた、自分の拳銃を組み立て始めた。
武器は持ち込めないので、ばらして違う形で持ちこんでいたのだ。
「え? やるんですか? 」
「多分、勝てるかどうかはわからんが、皆の弾除けくらいにはなると思う」
「そもそも、大陸ドラゴンで空を飛んでるんですけど……」
『それでも来ると思う……』
月兎と岩魚に突っ込んだ天音にそう子供の陸が答えた。
「いや、それを俺達にやらすつもり? 」
大悟が動揺して答えた。
『戦えるのが……』
「いやいや、ふさげんなよ! 」
「本当に四季さんと変わんないよっ! 」
言葉に詰まる子供の陸を大悟と天音が突っ込んだ。
その瞬間、消音サイレンサーで抑えられた叩くような発射音がする。
それで禍津族の神様が背中に銃弾を受けて倒れた。
この世界でサブマシンガンは未知の攻撃だった為に対応が遅れたようだ。
この世界には向こうの武器は持ち込めないのだが、陸が言っていたように四季は自らの共有の洗脳を使って、自分の武器だけは持ち込んでいたようだ。
「嘘でしょ! 空を飛んでいる大陸ドラゴンなんだけど! 」
天音が叫ぶ。
そして、胴の長い騎士鳥に乗っている筋肉質な男と四季がいた。
「あああああああ! 筋肉ダルマっ! 」
「失敬なっ! 助けて貰った経緯はあるけれど、そんな事を言われる筋合いは無い! 」
四季とともに変な騎士鳥に乗っていたのはヘンリー騎士団長であった。
「何で、その男と? 」
「ふははは、彼は人族の為に獣魔族のスパイをしていた勇気ある男なのです。彼を助ける為に実は参上してたのですよ」
そうヘンリー騎士団長が胸を張った。
『嘘だろ? 洗脳されていない』
子供の陸が絶句した。
「馬鹿だと洗脳がいらんという事か? 」
天音の突っ込みに深く頷く大悟達であった。
「馬鹿じゃないからっ! 」
ヘンリー騎士団長が絶叫した。




