最終部 第三章
『き、貴様っ! 』
四季の動揺が凄い。
『自殺してもおかしくないほど憧れて信じている人に騙されたって事より憎悪を徹底的に増加させて逆流させるようにしたんだ。まさか、あんたが普通の人族と獣魔族にも浅いようだけど広く洗脳しているとは思わなかったよ。でも微弱だけど、この憎悪は酷いから十二分に逆流するね。つまり、あんたは味方になるはずのもの全部を敵にするんだ。しかも、あんたの共有のルートで洗脳させているから、憎悪している相手に再度の洗脳のコントロールが効くかね? 騙された悲しみとそれに対する憎悪だ。早く逃げた方がいいと思うよ。貴方が洗脳しきって信頼しているものほどあんたを憎悪して殺しに来る』
『おのれ……』
四季がそう呻く。
そして、陸の本体の方はすでに渦のように歪みだしていた。
その憎悪を全力で逆流させているようだ。
『……ちょっと、やりすぎちゃったかな』
子供の陸が薄れていく中で自分の身体を見て呟いた。
「やり過ぎなんてレベルじゃないじゃん。戻れるのか元の姿に……」
大悟があきれ果てたように突っ込んだ。
「本当だ。あんた、子供の時から無茶苦茶な事をする時があるけど、これはいくら何でも馬鹿だと思うよ。戻る身体が歪んでるじゃん」
天音も凄く呆れたように話す。
『酷いな。言い方が……でも、確かに。身体が残っていれば、共有の憎悪の攻撃で本体の陸の心が消えたとしても、僕が戻れば良いかと思ってたんだけど。やっぱり繋がっているんだね』
「いや、当たり前だろ」
「何で、こんな大事なとこで思いっきり馬鹿な事をするんだよ」
天音と大悟が凄く困った顔で突っ込んだ。
『どうしょうか。信じている人に裏切られて、憎悪するってのはあるんだけど、それを暴走させるようにしたから、流石に影響で自分の肉体の収拾がつかない』
「もう、獣魔神ライも女神エルティーナも行っちゃったよ」
「禍津族の神様も困惑しているけど」
『これはやりすぎだよ』
『でも、想像以上に強かったんです。四季が……呪を解呪しようとしたけど難しかった。だから、憎悪と言う怒りで呪を昇華させるしかなかった。だから、もしもの時は約束通りにお願いいたします』
子供の陸が禍津族の神様に頭を下げて頼んだ。
『私としては、それは最後の手段にしたいんだがな』
禍津族の神様が顔を歪ませた。
「お前、まさか……」
「え? 自分の暴走が止まらなかったら、あの蛇のような刃の槍で殺してもらうつもり? 」
大悟と天音が衝撃を受けた。
「いくら何でも、それは! 」
今まで黙っていた茜が叫んだ。
皆が沈痛な顔をした。




