最終部 第一章
禍津族の神に凄まじい剣のように伸びた爪から真空切りのような斬撃を飛ばす獣魔神ライ。
女神エルティーナの方は雷撃を迸らせて禍津族の神を攻撃して、まるで獣魔神ライを援護しているように見えた。
あれほど敵対してた二つの種族の神すら四季は操り協力させて自らの敵を倒すのに使えるのだ。
その圧倒的な共有による洗脳の力を見せつけていた。
「まずいな。禍津族の神が押されている」
そう大悟が呟いた。
「それよりも陸が変なんだけど……」
天音が心配そうに陸を見た。
『……騙したんだね……騙したんだね……騙したんだね……騙したんだね……』
壊れたレコードのように陸が呟き続ける。
「まずいですね。何か始まってる……」
「呪を重ねている? 何の呪なんだろう? 」
健と智子が陸をじっと見て呟いた。
『何をした? 』
初めて、震えるような四季の言葉が響く。
明らかに動揺していた。
『私の陸の自殺への呪を解呪していない! 何を今の陸にしたっ! 私はそんなことをしていないっ! 』
四季が叫び続ける。
「ど、どう言う事? 」
「陸の姿が歪んで変わっていっている事か? 」
天音と大悟が呟いた。
陸はライオンの姿から歪んで、元の人間の姿が混じるように歪んで見える。
『ああ、僕も消えていくのか……』
子供の陸が少しずつ消えていくように手の映像のような姿が揺らめいていく。
『何をしたと聞いている! 貴様! それは自分の戻るべき身体ではないのか? 』
四季が絶叫した。
『共有の力で僕が自滅していくようにしてたでしょ。裏切られてショックでそれを陸の精神の内部に共鳴させて殺す。それでそのまま混乱のうちに自殺するだろうと……。でも、それで混乱させないようにして方向性を持たせた。あんたか神をいずれ倒して一線を超えてくるとは思ってた。だから、普通に人間は信じていた人に裏切られてショックを受けた時に同時に騙した相手への憎悪が出るはず。その憎悪が発動した段階で同じように共有で洗脳や呪をかけたものに憎悪が逆流していくようにした。あんたが使った共有の力を使って、この憎悪は伝染していく。つまり、皆があんたに騙されていたというショックとともに凄まじいあんたに対する怨念のような憎悪が爆発するわけだ』
『何を考えているんだ? 貴様っ! 』
『報いが戻るのさ。この仕掛けていた共有の洗脳を使って、そのまま皆があんたへの憎悪を共有する。共有とは良く言ったものだ。人間で一番やばいのは集団心理で攻撃する時だから。皆があんたを共通の敵だと思うわけだ。あんたのその凄まじい洗脳が凄ければ凄いほどだけどね』
子供の陸が苦笑していた。




